コールセンターの立ち上げの手順|4つのプロセスの各ポイントを徹底解説!
「問い合わせの対応が追いつかないから、コールセンターを立ち上げたい」
「コールセンターはどうやって立ち上げればいいかわからない」
といった悩みは、経営者やカスタマーサポートの担当の方に起きがちです。
コールセンターを立ち上げることで「顧客満足度の向上」につながります。そのためには、自社の課題をしっかりと整理して、正しいプロセスで立ち上げを行うことが大切です。
そこで本記事では「コールセンターの立ち上げを行うプロセス」を具体例を用いてわかりやすく解説します。
コールセンターを早急に準備する必要がある場合は、外注するという手段もあります。コールセンターを外注したい場合は、以下の記事を確認してください。
そもそもコールセンターとはなにか
コールセンターとは、電話を用いて顧客対応を行う窓口のことです。
日本コールセンター協会(CCAJ)では、コールセンターの定義を「顧客や消費者のインバウンドやアウトバウンドの電話応対を行う拠点・窓口のこと」としています。
しかし、近年コールセンターの役割は多様化しています。電話対応のみならずFAXやハガキ、メールやホームページからの連絡の受け答えにも対応することから「コンタクトセンター」と呼ばれることもあります。
さらには「テレマーケティング」と呼ばれる、営業活動を兼ねたコール活動も、コールセンター業務の一環です。
参考:一般社団法人日本コールセンター協会「コールセンター/テレマーケティング用語集」
コールセンターの種類とその役割
コールセンターには「インバウンド型」と「アウトバウンド型」の2種類あります。
インバウンド | アウトバウンド | |
---|---|---|
特徴 | 顧客からの問い合わせやクレーム対応、 注文受付などの「受信」業務 | 企業側から顧客にアプローチする 「発信」業務 |
役割 | ・問い合わせ / クレーム対応 ・注文受付 ・商品やサービスの説明 | ・営業電話 ・アポイントメントの取得 ・商品・サービスの案内 ・アンケート調査 |
解決できる課題 | ・顧客からの問い合わせが多く対応が追いつかない ・注文受付の対応が追いつかない | ・新規顧客獲得を強化したい ・営業効率を向上させたい ・アポイントメントの取得や商品案内を強化したい ・アンケート調査や市場調査を効率的に実施したい |
それぞれ詳しく説明します。
インバウンド型
インバウンド型のコールセンターは、顧客からの問い合わせに対応する「受信」業務を行います。具体的には「問い合わせ」「クレーム対応」「注文受付」「商品やサービスの操作方法の説明」といった業務内容です。
インバウンド型のコールセンターを立ち上げることで以下のような課題を解決することができます。
- 顧客からの問い合わせが多く対応が追いつかない
- 注文受付の対応が追いつかない
アウトバウンド型
一方アウトバウンド型のコールセンターは、企業側から顧客にアプローチする「発信」業務を行います。具体的には「営業電話」「アポイントメントの取得」「商品・サービスの案内」「アンケート調査」といった業務内容です。
アウトバウンド型のコールセンターを立ち上げることで以下のような課題を解決することができます。
- 新規顧客獲得を強化したい
- 営業効率を向上させたい
- アポイントメントの取得や商品案内を強化したい
- アンケート調査や市場調査を効率的に実施したい
コールセンターの立ち上げ手順
コールセンターの立ち上げは、4つの手順で行います。今回は、インバウンドを例として挙げますが、基本的にアウトバンドの立ち上げも同様の手順となります。
- コールセンターを立ち上げる目的・目標の明確化
- 業務プロセス・運用体制の構築
- システムやマニュアル・人員の整備
- 運用開始
それぞれ詳しく説明します。
1. 前提
コールセンターを立ち上げる際は、最初に次の2点を明確にしましょう。
- 目的・目標の明確化
- 必要体制の明確化
1-1. 目的・目標の明確化
目的と目標を明確にする際には、課題を整理してから行うことが重要です。
例えば、ECサイトや一般商材販売業者は以下のように整理します。
課題や目標は、数値で可視化することが重要です。コールセンターを立ち上げるゴールを正確に決めるためにも、定量的に設定しましょう。
1-2. 必要体制の明確化
次に、目的と目標を踏まえて現状の課題と解決するために必要な体制を明確にしていきましょう。
必要体制を明確にするため必要なステップは以下です。
- 現状の整理を行う
- 1日あたりの必要人数を算出する
- 必要体制(理想)を明確にする
まずは、現状整理を行います。現状整理では、1日の受電件数と平均対応時間・現場の対応人数を以下のような表にまとめましょう。
受電件数 | 400件/日 |
平均対応時間 | 10分 |
対応人数 | ・専業:8名 ・兼業:2名(1週間のうち3割は別業務を行っている) |
次に、上記を参考に1日あたりに必要な対応人数を算出します。
受電件数 | 400件/日 |
平均対応時間 | 10分/件 |
対応人数 | ・専業:6名 ・兼業:2名(1週間のうち3割は別業務を行っている) |
1人あたりの 最大受電可能件数 | 32件/日 →計算式:7時間 ÷ 15分(合間を5分と想定)= 28件 |
1人あたりの受電可能件数が明確になったら、最後に必要体制を整理します。今後のスケールに対応するためにツールの導入も記載しておくようにしましょう。
1日あたりの必要人数 | 14人(専業のみの場合) →計算式:400件 ÷ 28件 = 14.3人 |
ツールの導入 | 対応を効率化させるツールを導入する |
2. 構築
目的や目標・必要体制を明確にした後は、運用に必要な以下の3つの構築を進めていきましょう。
- 業務プロセスの構築
- 運用体制の構築
- 採用・教育体制の構築
それぞれ詳しく説明します。
2-1. 業務プロセスの構築
業務プロセス構築では、「オペレーターの1日の業務リスト」と「定例報告の方法・頻度」を整理していきます。
まずは、オペレーターの1日の業務リストを作成します。具体的には以下のような項目が挙げられます。
- 受電対応
- メール対応
- 対応内容の記載(社内システム等)
- ホームページの問い合わせ対応
- FAQリストの追加と精査
- 対応マニュアルの更新
- 週次報告
業務リストを作成後、定例報告の方法と頻度を明文化していきます。
定例報告は、コールセンターの目的や目標に対してどのように進捗しているかを確認する重要な役割を担います。
役職に応じてエクセルなどのフォーマットを作成して、以下のように報告をもらうようにしましょう。
【メンバーからスーパーバイザー(SV)への報告(更新頻度:毎日)】
【スーパーバイザーからマネージャーへの報告(更新頻度:週次)】
2-2. 運用体制の構築
業務プロセスの構築後、運用体制の構築を行います。運用体制の構築のゴールは、担当の割り振りと各担当の役割を明文化することです。人数によって異なりますが例としては以下のような体制が挙げられます。
役職 | 担当 | 役割 |
---|---|---|
マネージャー | Aさん | コールセンター全体の目標管理 |
スーパーバイザー(SV) | Bさん | 現場の管理(オペレーターの教育・マニュアル作成など) |
オペレーター | Cさん Dさん Eさん | 受電への対応 |
上記のように担当や役割を整理して行きながら不足しているところのみ、採用を進めていきましょう。
2-3. 採用・教育体制の構築
業務プロセスの構築後、採用・教育体制の構築を行います。採用・教育体制の構築のゴールは、採用と教育それぞれのプロセスと各担当の役割を明文化することです。
まずは、採用プロセスの構築です。採用は以下のようなプロセスと役割で行うのがおすすめです。
書類選考や面接といった一般的な採用プロセスに追加して、ロールプレイングを実施しましょう。ロールプレイングは、現場で働くことを想定した採用評価ができるため非常に効果的です。
次に、教育体制の構築です。教育は以下のような体制と役割で行うのがおすすめです。
方法 | 頻度 | 役割 |
---|---|---|
コーチング | 2ヶ月に1回程度 | オペレーターの「課題」を「ともに考え」、 どう解決するかを考える時間 |
カウンセリング | 2ヶ月に1回程度 +随時 | オペレーターの「悩み」を「聞き」、 どうすればその悩みが解決するかを助言・提案する時間 |
フィードバック | 1~3ヶ月に1回程度 | 以下の内容に対して客観的な事実を伝え、 評価する時間 ・勤怠:出勤率、遅刻早退回数 ・成果:ミス件数 ・生産性:通話時間、保留時間、作業時間 |
3. 整備
最後に運用を開始するために必要な以下の3つの整備を進めていきましょう。
- 必要システムの整備
- 運用マニュアルの整備
- 必要人員の採用
それぞれ詳しく説明します。
3-1. 必要システムの整備
コールセンターを運営する場合には、電話回線やネットワークだけではなく様々なシステムが必要です。コールセンター運営に必要なシステムとして以下が挙げられます。
システム | 内容 |
---|---|
電話の設置 | 電話回線やヘッドセットをオペレーターの人数分用意する |
通話録音のためのツール | 通話録音できるツールを導入し、各電話への設定を行う |
アナウンスシステム | 電話の振り分けや営業時間外の応答のために 必要なアナウンスシステムを導入し、各電話への設定を行う |
ネットワーク設計の実施 | セキュリティポリシーを満たしたネットワーク設計を実施する |
CTIツール | コールセンターやコンタクトセンター内での通話を コンピューターと連携できるCTIツールを導入する |
CRMツール | 顧客情報や応対履歴などをデータとして蓄積できるCRMツールを導入する |
運用マニュアルを作成するためにも必要なシステムはどのシステムを利用するかまで決めておくことが大切です。
3-2. 運用マニュアルの整備
導入するシステムが明確になったことで、運用マニュアルの作成が可能となります。コールセンターの運用の際に必要なマニュアルは以下が挙げられます。
マニュアル名 | 内容 | 使用者 |
---|---|---|
オペレーター対応マニュアル | 対応時のルールなどを記載 | オペレーター |
トークスクリプト | 各質問と回答例を記載 | オペレーター |
日時報告マニュアル | 日時での業務をSVに報告する際のルールなどを記載 | オペレーター |
PC操作マニュアル | 使用するPCの操作方法を記載 | オペレーター |
システム操作マニュアル | 使用するシステムの操作方法を記載 | オペレーター |
人材育成マニュアル | オペレーター採用後の育成プロセスや担当を記載 | SV |
品質管理マニュアル | オペレーターの対応に関する品質管理の方法を記載 | SV |
問い合わせ内容管理マニュアル | 問い合わせ内容をマネージャーに報告する流れを記載 | SV |
評価マニュアル | オペレーターの評価方法や評価項目を記載 | SV |
週次報告マニュアル | マネージャーへの週次報告内容や方法を記載 | SV |
コールセンターを立ち上げて顧客満足度の向上などにつなげるには、電話対応マニュアルが非常に重要です。電話対応マニュアルについては、以下の記事でも詳しく解説していますので、参考にしてください。
3-3. 必要人員の採用
運用開始前に最後の準備として必要人員の採用を行います。社内リソースが足りない場合は、採用媒体を活用して必要な人員を採用しましょう。
採用の際の面接やロールプレイングでは、以下の項目をチェックします。
知識/経験 | ・コールセンター業務経験はあるか ・コールセンターでなくとも接客業務経験はあるか |
スキル | ・PC操作・入力に問題はないか、基本的なことはできるか ・言葉遣いは問題はないか |
姿勢 | ・顧客目線で考えられそう ・ストレス耐性はありそうか |
4. 運用開始
導入システムやマニュアル・人員の整備が完了したら、実際に運用を開始します。SVは、最初に設定した「目的・目標」に対して、どれくらいの進捗なのかを週次で監視・測定してください。
もしそれが達成できていなければ、実績値を確認してマネージャーやSVが連携して改善策を講じていきましょう。
コールセンターの立ち上げにかかる費用
コールセンターの立ち上げる際には、主に以下の3つの費用がかかります。
- 初期費用
- 維持費用
- 人件費・採用費用
各費用の詳細について、解説します。
初期費用
コールセンターの初期費用には、システムの導入や回線の設置費用などが該当します。具体的に初期費用に含まれる項目は以下です。
- システム導入費(CTI・PBX・CRMなど)
- 機材費・通信費(電話子機・通話料)
- インターネットや電話回線の工事費用(設置費用)
コールセンターの初期費用の相場は、小規模なコールセンターで30万円から100万円・大規模なコールセンターで100万円から300万円程度になります。
維持費用
コールセンターの維持費用には、システムの維持費やメンテナンス費が該当します。具体的に維持費用に含まれる項目は、以下になります。
- システム利用料
- メンテナンス・保守費
システム利用料は、月額または年額で支払いが発生します。メンテナンスや保守費用は、障害などが発生しなくても必要となる費用です。
上記を含めたコールセンターの維持費用相場は、月に3万円から20万円となっています。
人件費・採用費用
コールセンターを運用する際には、人件費や採用費用が必要になります。人件費や採用費に含まれる項目は以下になります。
- 給与(オペレーター・SV)
- 採用媒体への広告費
コールセンターの運営時に必要な人件費の相場は、以下になります。
役職 | 給与 | 雇用形態 |
---|---|---|
オペレーター | 1,193円/時間 | アルバイト |
SV | 34万円/月 | 正社員 |
マネージャー | 41万円/月 | 正社員 |
また、オペレーターやスタッフを採用する際に発生する採用費として、求人媒体利用料や広告宣伝費などの費用も必要です。
採用媒体費用の相場は月に20万円から40万円となります。
コールセンター立ち上げ時のポイント
コールセンターを立ち上げる際には、以下の3つのポイントが重要になります。
- コストを見ながら規模を考える
- コールセンターシステムを導入する
- 顧客のニーズに合わせたチャネルを用意する
各ポイントについて、詳しく解説します。
コストを見ながら規模を考える
コールセンターを立ち上げる際には、設備や人材にバランスよく投資することが大切です。
バランスよく投資ができなかった場合、以下のような状況に陥り、人件費やシステム費用を無駄にしてしまいます。
- 問い合わせ件数に対してオペレーターが多く、オペレーターが余る
- オペレーターの教育が追いつかず、オペレーターの数は多いが顧客満足度が低い
- オペレーターのリテラシーが低く、システムが使われない
上記のような無駄なコストが発生しないために、現状の問い合わせ件数や平均対応時間をしっかりと定量的に明確にした上で、教育体制やマニュアルが整備された状態で運用を開始するようにしましょう。
コールセンターシステムを導入する
比較的規模の大きなコールセンターを構築したい場合には、業務効率化を目的にコールセンターシステムを導入する必要があります。コールセンターシステムの種類と機能は以下です。
PBX (電話交換機) | 会社宛の電話を集約し、内線等に振り分ける装置 |
ACD (着信呼自動分配装置) | 顧客からの電話を内容に応じて自動で適切なオペレーターへ振り分ける装置 |
CTI | 電話やFAXとコンピューターを連携させるシステム |
CTS | CTIで連携された電話番号などの情報をもとに 顧客情報を表示させるシステム |
CRM | 顧客情報の管理・共有や問い合わせ件数などの集計を行うシステム |
通話録音システム | 通話内容をクラウドやサーバー上に自動で録音するシステム |
IVR (音声自動応答システム) | 顧客からの電話に問い合わせ内容に応じて 番号のプッシュの指示などを行う自動応答システム |
単純に顧客とのやりとりを効率よく行えるだけでなく、CMSのように顧客管理や目標管理などのツールとして利用できるものも含まれます。コールセンターシステムについては、以下の記事で詳しく説明します。
顧客のニーズに合わせたチャネルを用意する
コールセンターに問い合わせる顧客の年齢などに応じてニーズに合わせたチャネルを用意することが大切です。電話やメールの他に用意すべきチャネルとして以下が挙げられます。
- チャット
- SMS
- メール
- メッセージアプリ
特に、LINEなどのSNSを用意すると、気軽に問い合わせできるようになるため「顧客満足度をあげたい」「商品改善のために顧客の声を集めたい」という際におすすめです。
まとめ
コールセンターを立ち上げる際には、運用を開始する前に目的・目標を整理したうえで体制やシステムなどの整備することが非常に重要です。
また、初期費用やランニングコストもかかるため、どのような規模のコールセンターを構築するかをしっかりと計画する必要があります。
本記事で紹介した手順を参考に、自社にとって最適なコールセンターを構築してください。
本記事で立ち上げが難しいと感じた方は、コールセンターを外注するという手段もあります。コールセンターを外注に興味がある場合は、以下の記事を確認してください。
b-pos編集部
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