給与計算代行の料金体系と費用相場。3つのケース別の料金シミュレーション付き

給与計算を外部の専門会社に委託する企業は年々増えていますが、導入前に最も気になるのが「費用はどのくらいかかるのか」という点ではないでしょうか。実際には、給与計算代行の料金は一律ではなく、「基本料金+従業員数×単価」という形で、企業の規模や依頼内容によって大きく異なります。たとえば、「給与計算のみ」を依頼する場合、従業員50名規模で月額40,000~60,000円程度が一般的な相場となります。

しかし、代行会社に任せられる業務は多岐にわたるため、勤怠データの集計や年末調整、給与明細の発行などを追加すれば、そのぶん費用は上乗せされます。こうした構造を正しく理解せずに「安さ」や「知名度」だけで選んでしまうと、結果的に割高になったり、自社フローと合わず手間が増えたりすることもあります。

そこで本記事では、給与計算代行サービスの費用構造や従業員数ごとの相場感、業務範囲別の料金目安をわかりやすく解説します。さらに、代表的な委託パターンの料金シミュレーションも交えて、「自社にとって適正な費用」の判断基準が明確になるようにまとめたので参考にしてみてください。

給与計算代行の料金構造

給与計算を外部に委託する際、まず気になるのが「どのくらいの費用がかかるのか」という点だと思いますが、実際には「一律でいくら」という単純なものではありません。代行会社の多くが、基本料金に加えて従業員数や業務範囲に応じた変動料金を組み合わせるという料金体系を採用しています。

つまり、費用は“会社の規模”と“どこまで業務を任せるか”によって大きく変わるのです。たとえば、給与計算だけをお願いする場合と、勤怠集計や年末調整まで一括で頼む場合では、当然コストも違ってきます。

以下は、一般的な代行サービスで採用されている料金構造について整理した表になります。

費用の種類内容課金形態
基本料金契約維持やツール利用などの固定費月額固定
変動料金従業員ごとの給与計算処理1名あたり単価 × 人数
オプション料金勤怠集計・年末調整など追加業務分業務ごとに設定
初期設定費用初回導入時の設定や情報登録契約時1回限り

多くの企業では「月額基本料金+人数に応じた従量課金」がベースになっていて、さらにどこまで業務を任せるかによってオプションが追加されていきます。

たとえば、次のような業務を依頼すると、料金が加算加算される場合があります。

  • 勤怠データの確認や集計
  • 残業・休日出勤の集計
  • 各種手当や控除の反映
  • 給与明細の作成と配布
  • 年末調整、法定調書の作成
  • 社会保険・住民税の届出対応

また、サービス開始時には、企業独自の給与体系や締め支払いサイクルをシステムに設定する必要があるため、初期費用が発生することもあります。

料金が変動する主な要因

給与計算代行サービスの費用は、業務範囲や従業員数によって一律に決まるものではなく、企業ごとの事情に応じて柔軟に設定されます。特に以下の4つの要素が、料金に大きく影響する代表的な要因です。

従業員数人数が増えるごとに従量課金が加算される
業務範囲の広さ勤怠集計・年末調整・住民税更新などを追加するごとに費用が増加する
雇用形態の多様さ正社員・パート・アルバイトが混在することで計算や処理が複雑化し、工数増加に伴い費用も増加する
拠点・制度の複雑性拠点ごとに締日が異なる場合や、フレックス制導入などがあるとカスタマイズ対応が必要となり、費用も増加する

これらはどれも、「処理工数の増減」や「対応の複雑性」につながるため、代行会社が想定する標準業務を超えるほど料金が上がる仕組みになっています。

たとえば、同じ30名規模の企業であっても「全員が正社員で一拠点勤務」のケースと、「正社員・アルバイト混在、複数拠点、勤怠システム導入あり」のケースでは、料金に1.5〜2倍以上の差が出ることもあります。

見積もりを依頼する際は、人数だけでなく業務の具体的な設計や特殊条件をきちんと共有することが、予想外の費用増加を防ぐポイントです。

給与計算ツール(自社運用)と給与計算代行(外部委託)の違い

給与業務を効率化したい場合、「給与計算ツール」を導入する方法と、「外部の専門会社に委託する」方法の2つがあり、それぞれに向いているケースや特徴は大きく異なります。

給与計算ツールは「社内に知識と人手があり、自社でコントロールしたい」企業に向いており、 代行サービスは「担当者が足りない」「人的ミスを減らしたい」「制度対応まで任せたい」企業に適しています。

たとえば、社員数が増えたり制度が複雑になってきた企業では、「ツール導入 → 代行へ切り替え」という流れで業務をスムーズに移行するケースも多く見られます。

給与計算代行の費用相場(従業員規模・業務範囲別)

給与計算代行の費用は、主に「従業員規模」と「委託する業務内容」の2つで決まることが一般的と先述しました。

ここでは、実際に従業員数ごとにおおよその費用相場を見ていき、その後で代行会社に依頼する業務範囲別の費用の違いについて解説します。

注意点 実際の料金は代行会社や業務範囲によって異なるため、必ず見積もりを取りましょう。ここからの情報はあくまで目安として参考にしてください。

従業員数ごとの費用相場

給与計算代行の料金体系は「基本料金+従業員一人あたりの単価(月額)」で設定されることが多いです。人数が増えるほど総額は増えますが、規模が大きくなると単価が割安になる傾向もあります。

以下の表は従業員規模別の月額費用相場の目安です。

従業員数月額費用相場
10人以下5,000~20,000円
11~30人20,000~35,000円
31~50人35,000~60,000円
51人〜要見積もり

人数が増えると料金も上がるのは当然ですが、30名を超えるあたりから、勤怠管理や社会保険手続き、年末調整などの追加業務を委託する企業が増えます。これにより料金の幅が広がることも理解しておきましょう。

業務内容別の費用相場

給与計算代行の費用は、委託する業務範囲によっても大きく変わります。単に「給与計算のみ」を依頼するケースから、「勤怠集計・社会保険手続き・年末調整まで一括代行」するケースまでさまざまです。

以下は、代表的な業務ごとの月額費用相場の一例です。

業務内容相場(従業員50名の場合)備考
給与計算のみ月額40,000~60,000円基本料金+従業員1人あたり800~1,200円程度
勤怠データ集計月額5,000~20,000円勤怠管理システム連携や手入力によって変動
賞与計算1回あたり10,000~30,000円年2回実施が一般的、従業員数で変動
給与明細発行1人あたり月額100~300円紙明細・Web明細で費用が異なる
給与振込データ作成1回あたり5,000~20,000円銀行連携や振込件数で変動
社会保険手続き1件あたり3,000~10,000円入退社・扶養変更などスポット料金
年末調整1人あたり2,000~3,000円50名で10万円前後が目安
住民税更新1人あたり500~1,000円50名で2.5~5万円程度

給与計算代行の費用は「給与計算のみ」なら月額4~6万円(50名規模)となっており、オプション業務を追加するごとに費用が加算されるのが一般的です。

年末調整や住民税更新、賞与計算などのスポット業務も利用状況に応じて加算されるため、業務内容ごとに見積もりを取得することが重要です。

ケース別の料金シミュレーション

給与計算代行の料金は、従業員数や委託範囲によって大きく異なるということが理解できたでしょうか。

ここでは、実際のイメージを掴んでもらうために、代表的な3つのケースを例に、それぞれの料金イメージを詳しく解説します。

ケース費用相場
1. 社員10名規模で給与計算のみを依頼する場合月額5,000円~20,000円程度
2. 社員30名に加えてアルバイト20名、勤怠集計も委託する場合月額100,000円〜150,000円程度
3. 社員50名で複数拠点あり、年末調整まで一括依頼する場合月額200,000円〜350,000円程度

ケース1:社員10名規模で給与計算のみを依頼する場合

このケースは、社員数が少なく給与計算のみを代行に任せる小規模企業を想定しています。この場合の料金相場は月額5,000円~20,000円程度で、従業員数が少ない分コストを抑えられることができます。

社内で勤怠管理を行い、代行会社には以下の業務を依頼することができます。

  • 月次の給与計算
  • 給与明細の作成・配布
  • 法定調書の作成

明細の発行方法が紙かWebかで追加料金が発生する場合もありますが、全体として手頃な費用で利用することができます。

ケース2:社員30名に加えてアルバイト20名、勤怠集計も委託する場合

このケースは従業員数50名(内アルバイト20名)で勤怠の集計も任せるため、ケース1より料金は上がります。しかし、勤怠管理がしっかりできていると給与計算のミスが減り、管理側の負担も軽くなるので、代行に頼むメリットは大きいと言えます。

依頼できる業務には以下のようなものがあります。

  • 勤怠データの集計とチェック(システム連携や手作業での入力含む)
  • 月次給与の計算
  • 給与明細の作成と配布
  • アルバイトの勤怠管理もカバー

これらの業務をまとめて依頼すると、だいたい月に100,000円〜150,000円程度が相場となります。

ケース3:社員50名で複数拠点あり、年末調整まで一括依頼する場合

最後に、社員が50名で複数拠点を持ち、さらに年末調整までまとめてお願いするケースです。この場合は業務が多岐にわたるため、料金も高くなります。

具体的には、

  • 各拠点ごとの勤怠や締め日管理
  • 勤怠データの集計と給与計算
  • 賞与の計算(年に2回程度)
  • 年末調整の書類作成
  • 社会保険や雇用保険の各種手続き
  • 給与振込データの作成

といった幅広い業務を依頼できます。こうした充実した代行サービスを利用すると、月額で200,000円〜350,000円程度が相場となります。

代行会社への依頼で失敗しないための比較ポイント

給与計算代行を依頼する際は、「安さ」や「知名度」だけで選ぶと、あとから「こんなはずじゃなかった…」と後悔することも。特に実務での使い勝手や、自社の運用体制との相性は、事前にしっかり見極めることが重要となります。

ここでは、依頼する前に確認すべき比較ポイントを4つご紹介します。

  1. Web対応の申請手続きが可能か
  2. 業務フローの改善提案があるか
  3. セキュリティ体制は整っているか
  4. 自社の業務フローに柔軟に対応できるか

1. Web対応の申請手続きが可能か

「申請のやりとりに毎回紙やExcelを使っていて大変…」という悩みは多くの人事担当が抱えていると思います。最近では、各種手続きやデータのやり取りをWebで完結できる代行会社も増えいるため、こうした会社を選ぶことで業務効率を格段に上げることができます。

特にチェックすべきポイントは以下になります。

  • 従業員が直接Web上で情報を入力・申請できる仕組みがあるか
  • 入力情報を代行会社がそのまま給与データに反映してくれるか
  • 過去データや履歴がWeb上で確認・管理できるか

また、Web対応できる代行会社であれば過去データや履歴も参照することができる点も嬉しいポイントです。使い勝手の良さや情報の一元管理のしやすさは、日々の業務に大きく影響するため、必ず確認しましょう。

2. 業務フローの改善提案があるか

単に「給与計算を代わりにやってくれる」だけでなく、業務全体をよりスムーズにするための改善提案をしてくれる代行会社もあるため、自社の作業負担を軽善することができます。

改善提案まで行なってほしいと考えてる企業は、以下の支援をしてくれる代行会社を選ぶようにしましょう。

  • 現状の給与関連業務を棚卸し・可視化してくれる
  • 効率的な業務フローの再設計をサポートしてくれる
  • 勤怠・人事労務システムの導入や切り替えを一緒に進めてくれる

現場に寄り添いながら運用定着までフォローしてくれる会社なら、長期的な業務改善にも繋げることができるでしょう。

3. セキュリティ体制が整っているか

給与情報は個人の機密情報そのもの。だからこそ、セキュリティ体制が甘い会社に業務を任せてしまうと、大きなリスクにつながりかねません。代行会社の信頼性を測る上で、セキュリティへの取り組みは必ず確認しておきましょう。

特に確認すべきポイントは以下になります。

  • プライバシーマークやISO27001(ISMS)などの認証を取得しているか
  • お客様情報へのアクセス制限やログ管理の仕組みがあるか
  • 定期的な社内監査やセキュリティ教育を行っているか

「安さ」だけをアピールしている会社が必ずしもセキュリティが甘いという訳ではありませんが、安さの裏付けを必ず確認し、信頼性の高い会社に依頼しましょう。

4. 自社の業務フローに柔軟に対応できるか

企業によって給与計算のやり方や、手続きの流れはさまざまです。そのため、自社特有のフローに対応できるかどうかは、非常に大きなポイント。融通がきかない代行会社だと、かえって手間が増えてしまうこともあります。

そのような事態にならないためにも、以下の点を事前に確認しておきましょう。

  • 自社独自の申請フォーマットやツールに対応してくれるか
  • 固定ではなく、運用に合わせた柔軟な手順設計ができるか
  • 情報の提出方法(PDF、Excel、システム連携など)を選べるか

こちら側が代行会社に合わせて業務を変えるのではなく、自社のやり方に寄り添ってくれるパートナーを選ぶことが重要です。

給与計算代行サービスへの依頼を検討している方は、「給与計算代行サービス22選比較。規模別の料金表とおすすめ導入時期まで」の記事にて詳しく解説しています。

まとめ

給与計算代行は「給与計算のみを依頼する場合」と「オプションも追加する場合」とでは、かかる費用に大きく差が出ます。自社がアウトソーシングしたい業務を明確にしたうえで、各サービスの費用を比較する必要があります。

本記事でご紹介した費用相場・比較ポイントを参考にして、自社にとって費用対効果の高い給与計算代行を選びましょう。

b-pos編集部