給与計算アウトソーシングの費用相場|料金表や費用を抑えるコツも紹介
給与計算業務は、各従業員の手当・残業代・控除額の計算が必要なうえ、給与の振込処理や税金・社会保険料の支払いなどもあるため、経理担当者にとって負担の大きい業務です。給与計算のアウトソーシングを検討しているものの費用相場がわからず、外注をためらっている経営者・経理部門責任者の方も多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、給与計算アウトソーシングの料金体系・費用相場を中心に解説します。費用を抑えるコツも紹介しているため、給与計算業務の外注を検討している方はぜひご覧ください。
目次
給与計算アウトソーシングの料金体系
給与計算アウトソーシングの料金体系は、以下2つのパターンに応じて異なります。
- 給与計算のみの場合
- システム+給与計算の場合
給与計算のみの場合
給与計算業務を代行するサービスの場合、以下の費用がかかるのが一般的です。
- 初期費用
- 基本料金(+従業員1人あたりの料金)
- オプション料金(+従業員1人あたりの料金)
初期費用は、サービス開始時のみ発生します。基本料金・オプション料金は月額でかかり、それぞれ従業員1人あたりの料金が加算されます。
たとえば、基本料金20,000円+従業員1人あたり500円かかる給与計算に加え、オプション料金1,000円+従業員1人あたり400円のサービスに10人分依頼した場合、以下のような計算となります。
- 給与計算:20,000円+5,000円(500円×10人)=25,000円
- オプション:1,000円+4,000円(400×10人)=5,000円
この場合、ひと月あたりにかかる外注費は30,000円です。
それぞれの料金に含まれる業務例は以下のとおりです。
<初期費用>
給与計算システムの初期設定 | 会社固有の給与体系の反映・各種手当や控除の設定など |
社員情報の登録 | 従業員の氏名・住所などの基本情報の登録など |
給与データ登録・移行 | 過去の給与データの登録・移行など |
コンサルティング | 現在の給与計算業務の課題分析・業務フローの改善などのコンサルティング |
<基本料金>
勤怠データの確認 | 給与計算に必要な各従業員の勤怠データの確認 |
給与計算 | 各従業員の基本給・各種手当・残業代・控除額(保険料・税金)などの計算 |
給与計算システムへの入力 | 勤務実績や変更情報などを給与計算システムへ入力 |
給与計算結果の確認 | 給与計算結果データに誤りがないかどうかのチェック |
<オプション>
給与明細発行 | 給与明細の作成・印刷・封入・郵送など |
賞与計算 | 控除額(保険料・税金)の計算を含めた賞与支給額の計算 |
振込手続き | 給与の振込手続きにかかわる業務 例:振込一覧表の作成・振込データの入力・振込実行など |
年末調整 | 年末調整にかかわる業務 例:申告書の配布・回収・チェック、源泉徴収票・支払報告書・法定調書合計表などの作成・提出など |
住民税更新 | 住民税更新にかかわる業務 例:特別徴収額通知書の確認・データ入力・封入・個人配布など |
なお、サービスによってそれぞれの費用範囲内で対応している業務は異なります。なかには、初期費用不要で社員情報や給与データなどの登録に対応しているサービスもあるため、費用内で対応してもらえる範囲を事前に確認しましょう。
システム+給与計算の場合
給与計算業務の代行だけでなく、給与計算システムもあわせて提供しているサービスの場合、料金体系は以下の2パターンあります。
- システム利用料+給与計算1人あたりの料金+オプション料金
- 1ユーザーあたりの月額料金+オプション料金
システム利用料と給与計算1人あたりの料金が分かれているサービスは、給与計算システムの利用料とは別に給与計算業務の代行費用やオプション料金がかかります。
一方、給与計算システム1ユーザーあたりの月額料金のみかかるサービスの場合、この月額料金にシステム利用料+給与計算の費用が含まれているのが特徴です。追加オプションに応じて、費用もかかります。
なお、給与計算システム+給与計算のサービスでは、オプションでシステムの初期設定の代行・運用レクチャーなどを提供しているサービスもあります。
【外注範囲別】給与計算アウトソーシングの料金相場
給与計算アウトソーシングの料金相場を以下の外注範囲別に紹介します。
- 給与計算アウトソーシングのみをアウトソーシングする場合
- オプションも追加する場合
- システム導入+給与計算をアウトソーシングする場合
給与計算のみをアウトソーシングする場合
給与計算のみをアウトソーシングする場合、月額費用の相場は以下のとおりです。
【基本料金】の相場
従業員数 | 費用相場 |
---|---|
10名の場合 | 15,000円程度 / 月 |
50名の場合 | 50,000円程度 / 月 |
100名の場合 | 100,000円程度~ / 月 |
たとえば、従業員数が50名で給与計算のみをアウトソーシングする場合、かかる費用は月50,000程度です。比較的安く抑えられる傾向があります。
オプションも追加する場合
オプションも追加する場合、月額費用の相場は以下のとおりです。
【オプション料金】の相場
業務 | 10名の場合 | 50名の場合 | 100名の場合 |
---|---|---|---|
給与明細発行 | 5,000円 | 25,000円 | 50,000円 |
賞与計算 | 13,000円 | 25,000円 | 40,000円 |
振込手続き | 3,000円 | 15,000円 | 30,000円 |
年末調整 ※単発でかかる費用 | 30,000円 | 150,000円 | 300,000円 |
住民税更新 | 13,000円 | 25,000円 | 40,000円 |
たとえば従業員数50名の企業が、給与計算・給与明細・振込手続き・年末調整までアウトソーシングするとします。
この場合「50,000円+25,000円+15,000円=90,000円 / 月」に加えて、年末調整で「150,000円」がかかります。
このため、年額は「9万円×12ヶ月+15万円=123万円 / 年」といった計算になります。
オプションを追加することでアウトソーシングできる業務は増え、負担が軽減できます。一方、金額にも大きく差が出るため注意が必要です。
システム導入+給与計算をアウトソーシングする場合
給与計算システムの導入+給与計算をアウトソーシングする場合、月額料金の相場は1ユーザーあたり1,500円です。利用ユーザー数ごとの料金相場は以下のとおりです。
【システム導入+給与計算】の相場
ユーザー数 | 費用相場 |
---|---|
50名 | 75,000円 |
100名 | 150,000円 |
150名 | 225,000円 |
なお、最低ユーザー数を設けているサービスもあり、50ユーザーが下限となっている傾向があります。
【企業規模別】給与計算アウトソーシングの料金相場
給与計算アウトソーシングの料金は、依頼する従業員数によっても異なります。企業規模別の料金相場は以下のとおりです。
企業規模 | 料金相場 |
---|---|
100名~300名程度の中小企業 | 15万円~30万円程度 |
500名~1,000名程度の大企業 | 50万円~85万円程度 |
給与計算アウトソーシングの料金は、基本料金と従業員1人あたりの料金で算出されるのが一般的です。しかし、依頼する人数が多い場合、基本料金や1人あたりの料金が割安になるサービスもあります。そのため、大人数を依頼すると外注費全体は増えるものの、1人あたりの単価が下がるケースもあります。
【外注先別】給与計算アウトソーシングの料金相場
給与計算のアウトソーシング先の選択肢は、おもに以下の3つがあります。
- 給与計算代行会社
- 社労士事務所
- 税理士事務所
それぞれの料金相場を解説します。
給与計算代行会社の場合
給与計算代行会社に依頼する場合の費用相場は、以下のとおりです。
従業員数 | 料金相場 |
---|---|
10名 | 150,000円程度 / 月 |
50名 | 50,000円程度 / 月 |
100名 | 100,000円程度 / 月 |
給与計算のみに特化して価格を抑えてサービスを提供している会社もあれば、勤怠管理システムとの連携・特殊な給与計算などはオプションで対応する会社もあります。
100人以上の給与計算にも対応しているケースが多く、社労士事務所・税理士事務所と比べて規模の大きい会社にも対応できる傾向があります。
社労士事務所の場合
社労士事務所に依頼する場合の給与計算の相場は、以下のとおりです。
従業員数 | 料金相場 |
---|---|
~4名 | 20,000円~ / 月 |
5~10名 | 25,000円~ / 月 |
11~20名 | 35,000円~ / 月 |
21~30名 | 45,000円~ / 月 |
31~50人 | 60,000円~ / 月 |
社労士事務所は、社会保険の手続きや労務相談などにも対応できるのが特徴です。ただし、給与計算代行と異なり、数百人を超える給与計算には対応していない傾向があります。
また給与計算の料金は安価でも、給与明細書の作成などにオプション費用がかかる事務所・法人もあるため要確認です。
以下の記事では、社労士に給与計算を依頼するメリットを解説しています。会社の段階別に給与計算のアウトソーシング先の選び方も紹介しているため、ぜひあわせてご覧ください。
税理士事務所の場合
税理士事務所に依頼する場合の給与計算の相場は、以下のとおりです。
従業員数 | 料金相場 |
---|---|
1名 | 1,000円~2,000円程度 / 月 |
5~9名 | 5,000円程度~ / 月 |
10~19名 | 10,000円~30,000円程度 / 月 |
20~29名 | 20,000円~45,000円程度 / 月 |
30~49人 | 40,000円~70,000円程度 / 月 |
50名~ | 50,000円~ / 月 |
税理士事務所には、年末調整で必要になる給与支払報告書・支払総括表などを作成してもらえるため、繁忙期の業務負担も軽減できます。しかし社労士事務所と同様に、数百人を超える給与計算には対応していない傾向があります。
給与計算アウトソーシングの費用を抑える3つのポイント
給与計算アウトソーシングの費用を抑えるポイントは、以下の3つです。
- 外注範囲を最小限に抑えて依頼する
- 自社の規模に合った外注先を選ぶ
- 既存システムに対応できる外注先に依頼する
外注範囲を最小限に抑えて依頼する
給与計算アウトソーシングは給与計算は基本料金で対応しているものの、給与明細の発行・振り込み手続き・賞与の計算などは別途オプション料金がかかるサービスが多いです。そのため、できる限り自社で対応して外注範囲を絞ることで費用を抑えることが可能です。
外注すべき業務を特定する際は、現状のフローや負担になっている業務などを明確にし、給与計算業務の担当者と相談しながら外注範囲を決めましょう。
自社の規模に合った外注先を選ぶ
自社の従業員数に合った給与計算アウトソーシングサービスを選ぶことも大切です。企業規模に適した外注先を選ぶことで、自社にとって必要のないサービスを省いてコストを抑えられます。
たとえば大手企業向けのサービスの場合、給与担当者を介さずに従業員からの問い合わせを受け付けるヘルプデスクを設けているサービスがあります。しかし、中小企業は従業員数が少ないため、問い合せそのものが少なく無駄なコストがかかる可能性が高いでしょう。
なかには、基本的な給与計算業務のみを中小企業向けに安く提供しているサービスもあるため、自社の企業規模に合ったサービスを選び、必要なサービスのみを利用して外注費を抑えましょう。
既存システムに対応できる外注先に依頼する
現在自社が使用している給与計算システムに対応できる外注先を選ぶ方法もあります。既存システムに対応できるサービスを選ぶことで、システムの導入費用だけでなく、新しいシステムへのデータ移行にかかる費用や、従業員のトレーニングにかかる時間・コストも削減できます。
また、給与計算システムの新規導入や乗り換えなどを検討している場合は、アウトソーシング先が提供しているシステムを利用することで、給与計算業務を割安で依頼できるケースもあります。なかには、給与計算システムの提供から給与計算業務代行までを月1,000円で対応しているサービスもあるため、このようなサービスを利用するのも1つの方法です。
給与計算アウトソーシングおすすめ4選
ここからは、おすすめの給与計算アウトソーシング4選と、各サービスの料金表を紹介します。
給与プロ(株式会社 シスプロ)
株式会社シスプロが提供する「給与プロ」は、給与額の算出をはじめとする基本業務だけでなく、給与明細の印刷・封詰め、振込作業、有給実績の集計などもオプションで対応している給与アウトソーシングです。
勤怠システムの導入・給与明細のWeb化などシステム面での業務効率化支援も可能。オプションが豊富なため、必要なサービスのみを選んでアウトソーシングしたい企業におすすめです。
料金表
給与プロのサービス利用時には、初期導入費用・基本料金・従業員1人あたりの月額料金がかかります。それぞれの料金表は以下のとおりです。
<初期導入費用>
サービス名 | 料金 |
---|---|
初期設定費用 | 50,000円~ |
社員情報登録 | 300円 / 人 |
経過月データ登録 (CSV無しの場合) | 200円 / 人・月 |
上記は導入時に必要な費用で、初期設定費用・社員情報登録費用の2点は必ずかかる料金です。
<基本料金・1名あたり月額料金>
人数 | 基本料金 | 1名あたり月額料金 |
---|---|---|
~20名 | 27,000円 | – |
21~40名 | 13,000円 | 600円 |
41~60名 | 13,000円 | 500円 |
61~80名 | 13,000円 | 400円 |
81~100名 | 13,000円 | 380円 |
101名~ | 要相談 | 要相談 |
上記の基本料金には、勤務実績・控除などの必要情報のシステム入力や給与計算結果チェック、同社指定のフォーマットの出力などが含まれています。
たとえば、従業員数80名の企業が給与プロを利用する場合、初月は117,400円~かかりますが、それ以降の月額料金は43,400円程度が目安です。なお、オプション業務には、振込作業、給与明細の印刷・封詰め、有給実績の集計、有給管理台帳の作成などがあります。
RoboRoboペイロール(給与計算+システム)
オープン株式会社が提供する「RoboRoboペイロール」は、1名あたり月額1,000円から給与計算システムと給与計算代行サービスを利用できます。既存の勤怠管理システムとの連携が可能で、アカウント情報の共有により勤怠データを自動取得できます。
社員やアルバイトなど、雇用形態ごとに異なる勤務体系にも柔軟に対応。社会保険労務士が監修と一次チェックを実施するため、労働基準法に則った給与計算だけでなく、法改正に伴う給与計算変更にも随時対応しており安心して利用できます。
料金表
RoboRoboペイロールは、従業員1人あたり月額1,000円で以下のサービス・機能が利用できます。
- 給与計算代行
- 給与計算機能
- 給与明細発行
- 人事情報管理
給与計算では、勤怠情報を共有することでそのデータをもとに給与計算に対応してもらえます。そして、給与計算結果(CSVデータ)あるいは給与明細管理システムに、明細情報を納品。
たとえば、従業員数80名の企業がRoboRoboペイロールを利用する場合、月額費用は80,000円程度が目安です。なお、50名以下で利用する場合は一律50,000円がかかり、年末調整代行はオプションサービスとなっています。
社会保険労務士法人 ふじまき法人(社労士)
社会保険労務士法人 ふじまき法人は、女性社会保険労務士による気軽に相談できる雰囲気と丁寧な対応が特徴の給与計算代行サービスです。勤怠データの提出から給与明細の受け渡しまで2~4営業日で対応し、振込前のデータ作成までを一貫して対応しています。
給与計算代行以外にも、労働・社会保険手続き、就業規則の作成・変更、人事労務コンサルティングまで幅広くサポート。賞与計算・年末調整にも対応可能です。
料金表
社会保険労務士法人ふじまき法人は、以下の料金で給与計算の基本業務に対応しています。
人数 | 報酬額 |
---|---|
5人まで | 27,500円 / 月 |
6人以上 | 27,500円 / 月 +1人増えるごとに1,100円追加 |
上記の基本業務には、データの入力および計算、所得税・社会保険料の計算、給与一覧表・給与明細・給与振込一覧表の出力が含まれています。なお、賞与計算も同額で請け負っており、支給の都度料金が発生します。
たとえば、従業員数80名の企業がふじまき法人に給与計算を依頼する場合、月額料金は110,000円程度が目安です。
なお、以下業務にはオプション料金がかかります。
- タイムカードの集計
- 有給休暇の管理
- 経費などのチェック作業
- 給与支給額のシュミレーション
- 給与改定時・住民税の特別徴収が発生する場合
IKP税理士法人(税理士)
IKP税理士法人は、設立直後の企業から大規模上場企業まで、規模・業種を問わず給与計算代行サービスを提供しています。税理士や公認会計士が関与し、税務リスクと事務効率性を考慮した業務フローを設計。勤怠データの集計から給与明細の発行、封入作業まで一貫したサービスを展開しています。
また、企業のニーズに合わせて最適な会計ソフトや給与計算ソフトを選択・提案し、効率的な給与計算システムを構築します。さまざまなクラウドソフトやコミュニケーションツールに対応しており、企業の変化に応じて柔軟にサービスを提供。一般企業から特殊法人まで、多様な業態の給与計算業務を支援している税理士法人です。
料金表
IKP税理士法人は、以下の料金で給与計算業務に対応しています。
サービス | 料金(消費税別) |
---|---|
給与計算5名まで | 月額10,000円 |
給与計算6名以降 | 1,000円 / 人 |
新規給与計算ソフト登録 | 1,000円 / 人 |
賞与計算 | 支給ごとに800円 / 人 |
オプション業務と料金は以下のとおりです。
サービス | 料金(消費税別) |
---|---|
立替経費の領収書チェック | 500円 / 人 |
有給管理 | 150円 / 人 |
紙のタイムカードからの勤怠集計 | 500円 / 人 |
給与明細の封入作業 | 200円 / 人 |
たとえば、従業員数80名の企業がIKP税理士法人に給与計算・勤怠集計・給与明細の封入作業を依頼する場合、ひと月あたり141,000円程度が目安です。振込データ作成や振込、決算・税務申告、経理・記帳、年末調整関連業務なども別サービスで代行しています。
以下の記事では、さらに多くの給与計算アウトソーシングを紹介しています。「従業員対応も依頼したい」「勤怠データ集計・入退社管理などの周辺業務も対応してほしい」といったニーズに応じて最適なサービスが選べる内容のため、給与アウトソーシングを検討されている方はぜひあわせてご覧ください。
まとめ
給与計算代行は「給与計算のみを依頼する場合」と「オプションも追加する場合」とでは、かかる費用に大きく差が出ます。自社がアウトソーシングしたい業務を明確にしたうえで、各サービスの費用を比較する必要があります。
本記事でご紹介した費用相場・比較ポイントを参考にして、自社にとって費用対効果の高い給与計算代行を選びましょう。
b-pos編集部
代行・外注サービスの比較サイトb-pos(ビーポス)の編集部。b-posは、BPOサービスの比較検討時に知っておきたい情報やサービスの選び方について解説するメディアです。サービスの掲載企業の方はこちらから(https://b-pos.jp/)