コールセンターの離職率が高い理由|改善策一覧と抜本的な方法も解説
「コールセンターのスタッフが定着しない」
「いつまで経っても生産性が向上しない」
このような悩みを抱える方は少なくありません。
この記事では、コールセンターの離職率が高い理由や改善策、抜本的に改善するための方法について詳しく解説します。
ぜひ、参考にして自社コールセンターの離職率改善を目指してみてください。
目次
コールセンターの離職率とは
コールセンターの離職率は、一般的な職種と比較して高い傾向にあります。ここではコールセンターの離職率や、判断基準とすべき数値にそれぞれ分けて解説します。
コールセンターの離職率
コールセンターの離職率について「月刊コールセンタージャパン」が2018年に行った調査結果を参考にすると、「1年以内に入社したオペレーター離職率が71%を超える」と回答した企業が全体の22%を占めています。
2013年の調査時に同様の回答が0.9%だったことと比較すると、大きく離職率が高まっていることがわかります。
また、厚生労働省が実施した「令和4年上半期雇用動向調査」においても、コールセンターが含まれている「サービス業(他に分類されないもの)」は、産業区分ごとのなかでも3番目に高い離職率となっています。
そのため、コールセンターは離職率を下げる取り組みを推進していかなければ、人手不足である状態を解決することはできません。
ひとつの判断基準は離職率「30%」
自社コールセンターの離職率が高いと判断する基準は、年間30%です。この値を超える離職率になると、注意しなければなりません。
離職傾向としては、初期教育後に実際のコール業務に就くようになると、負担に耐えられず辞めてしまうことがよく見られます。
離職する人から正確な理由を聞き出すことは難しいことです。しかし、可能な限りヒアリングを行い、採用後の教育体制や計画、過度なノルマとなっていないかなどを振り返ることが離職率を低下させる手がかりとなります。
コールセンターの離職率が高い理由
コールセンターの離職率が高い理由には、以下の3つが挙げられます。
- 職場環境
- モチベーション
- コミュニケーション
ここではそれぞれに分けて解説しますので、詳しく見ていきましょう。
職場環境
企業の研修やサポート体制が不十分であることが原因で離職してしまうことがあります。暗記すべき項目・クレーム対応のやり方などを知らないまま現場に出ることで、顧客や上司から叱られることでストレスが溜まると離職の意志が高まってしまいます。
また、ミスが続き人間関係が悪化してしまうと、居心地の悪さを感じてしまい、退職につながってしまうこともあります。
そのほか、労働時間の長さや休暇を取りにくい環境も離職率が高まってしまう原因です。
モチベーション
「キャリアアップ」や「ノルマ」の観点から、モチベーションを保ちにくい職種であることも、離職率が高い理由のひとつです。
コールセンターのキャリアとして、スーパーバイザー・管理者へのステップアップがあります。しかし、オペレーターに対して管理者の数は少なく、昇進までに時間がかかります。さらに業務内容上、スキルを磨きにくいこともあり、将来性を感じられず退職に至ることが多いようです。
またコールセンター業務のノルマを達成できないことがストレスとなり、退職に至るケースも多いようです。コールセンターにおけるノルマの例には、以下のようなものが挙げられます。
領域 | ノルマ |
---|---|
インバウンド | ・応答率 ・初回完結率 |
アウトバウンド | ・架電数 ・成約件数 |
特にアウトバウンドは、売上に直結することから強いプレッシャーを感じてしまい、ストレスを抱えてしまうことが多い傾向にあります。
コミュニケーション
コミュニケーション不足から退職につながることもあります。
たとえば、上司によって指示の内容が異なることがあるかもしれません。これにより、新入社員は混乱してしまい、不信感を募らせて退職を考えることもあります。
また、業務中は顧客からの電話対応にほとんどの時間を割くことから、スタッフ同士のつながりが希薄である場合も考えられるでしょう。そのため、困ったことがあっても誰にも相談できずに不安な気持ちを抱えたまま仕事をしなければならないこともあります。
このようにコミュニケーションの悩みを抱えてしまうと、ストレスを感じながら仕事をしなければならないため、「辞めたい」と考える人が一定数いるのも無理はありません。
コールセンターの離職率が高いデメリット
コールセンターの離職率が高いことによるデメリットには、以下の3つが挙げられます。
- 生産性が下がる
- サポート品質が下がる
- 採用と教育にコストがかかる
ここではそれぞれに分けて解説しますので、詳しく見ていきましょう。
生産性が下がる
コールセンターのスタッフの離職が多ければ、当然対応する人数が減少するため、全体の生産性が下がってしまいます。
不足した人員が補充できたとしても、1人前になるまでは教育に時間がかかるに加え、教育担当者のリソースを割かなければなりません。
離職率が高いほど、コールセンター部門の生産性は低下してしまい、スタッフ1人あたりの業務量も多くなってしまいがちです。また、人員が少なければ休暇を取りにくくなることから、職場環境の悪化の原因ともなってしまいます。
サポート品質が下がる
離職率が高い職場では、常に補充された不慣れなスタッフが業務をしている状態であるといえます。そのため、ベテランでは起こり得ないようなミスや失礼な話し方から、クレームにつながることも考えられます。
クレーム対応や新人の件数を補うために、他のスタッフやスーパーバイザーの業務量が増加してしまうことが多いようです。
このようにスタッフの入れ替わりが激しい職場は、サポート品質が低下してしまう傾向にあります。
採用と教育にコストがかかる
離職者が増えた場合、新たな人材を採用する必要があります。さらに、スタッフが1人前になるまで教育しなければなりません。
採用・教育にはコストが発生します。採用には求人サイトへの掲載や応募者の電話対応、面接官の人件費などが費用です。
また、新しく採用したスタッフに対して、研修期間やサポートが必要なくなるまでの期間中の給与も支払う必要があります。
コールセンターの離職率の改善策一覧
コールセンターの離職率を改善する方法として「初期離職を防止」「定着率の向上」の2つがあげられます。以下では、それぞれについて詳しく解説していきます。
目的 | 改善策 | 内容 |
---|---|---|
初期離職の防止 | 就業前後のギャップをなくす | 事前の採用説明会で、 職場をイメージしやすい資料で丁寧に説明 |
実践を中心とした カリキュラムの構築 | ロールプレイングやケーススタディなど、 実践的な内容を実施し、業務イメージを湧かせる | |
定着率の向上 | フォロー研修の実施 | テストの不合格者、業務に不安を覚える スタッフ向けにフォロー研修を実施 |
評価基準の明確化 | キャリア体系や昇給・昇格の基準を明確に定め、 スタッフ1人ひとりに伝えて納得感を醸成 | |
表彰制度の整備 | KPI達成上位者や皆勤賞を上長から表彰する制度を設け、 モチベーションを向上 | |
職場環境の整備 | ES調査を実施、イベントの開催などで チームの一体感を醸成 |
初期離職の防止
初期離職を防止するための施策には、以下の2つが挙げられます。それぞれに想定される離職理由を事前に補うことで、早期に退職したいと感じる人を減らす効果があります。
- 就業前後のギャップをなくす
- 実践を中心としたカリキュラムの構築
就業前後のギャップをなくす
就業前後のギャップは、スタッフが働く前に抱いていたイメージとの乖離が大きいほど退職に繋がってしまいます。解決するためには、事前の採用説明会で職場をイメージしやすい資料を準備して、丁寧に説明するようにしてみてください。
ほとんどの場合、事前の説明不足から採用者が職場のイメージを膨らませてしまい、実際の業務に入るとギャップに悩むことが多いようです。
実践を中心としたカリキュラムの構築
研修時には座学を中心としたカリキュラムを組むことが多い傾向にありますが、業務の難易度を高く感じさせてしまいます。また実際の業務をイメージしにくいです。
そのため、座学に留まらずロールプレイングやケーススタディなど、実践的な内容を多く盛り込んだカリキュラムを準備するとよいでしょう。
定着率の向上
定着率を向上させるには、スタッフに寄り添った研修や評価制度を取り入れることが重要です。主な施策には、以下の4つが挙げられます。
- フォロー研修の実施
- 評価基準の明確化
- 表彰制度の整備
- 職場環境の整備
フォロー研修の実施
スタッフの能力によっては、初期教育だけではついていけないことも想定できます。そうなってしまうと、離職してしまうリスクが高まります。
それを防ぐには、初期教育を終了したあとにテストを実施し、テストの不合格者、業務に不安を覚えるスタッフ向けにフォロー研修を行うことで定着率を高めることが可能です。
評価基準の明確化
評価基準を明確にして、公表することも定着率を高めるには有効です。たとえば、評価方法や内容が不透明かつ不公平だとスタッフに感じられてしまうと、不満を抱える原因となってしまいます。
このような不満や不信感を与えないようにするには、キャリア体系や昇給・昇格の基準を明確に定め、スタッフ1人ひとりに伝えることが重要です。
表彰制度の整備
表彰制度を取り入れることにより、スタッフのモチベーション向上が期待できます。毎日同じ業務を繰り返していると、どうしてもモチベーションは下がってしまいがちです。
たとえば、一定の期間を定めてKPI達成上位者や皆勤賞を上長から表彰する制度を設けることで、モチベーションを高められます。また、個人単位だけではなく、チーム表彰を定めることでスタッフ同士がコミュニケーションを取る効果も期待できるでしょう。
職場環境の整備
コールセンターは先にも解説したように、コミュニケーション不全に陥りやすい職場環境となってしまいがちです。そのため、働く意欲を失ったり、不安を抱えたりした状態で働かざるを得ない状況につながります。
そうなると、退職を考えるスタッフが一定数生まれても不思議ではありません。職場環境を整えるには、年に1回は全スタッフを対象としたES調査を実施し、1人ひとりが抱えている課題を明確にしたうえで、改善に取り組むとよいでしょう。
併せて、定期的に社内で季節感のあるイベントを開催することによって、スタッフ同士が交流する機会が生まれ、連帯感を醸成するとともに風通しのよい職場環境を構築することが期待できます。
コールセンターの離職率を抜本的に改善する方法
コールセンターの離職率を抜本的に改善するには、以下の2つの方法が挙げられます。
- 採用プロセスを見直す
- 教育体制を見直す
ここではそれぞれに分けて解説しますので、詳しく見ていきましょう。
採用プロセスを見直す
コールセンターの離職率が高い原因は、企業側に問題があると思われがちです。しかし、採用すべき人材とズレが生じてしまっていることも十分に考えられます。
そのため、面接のみではなくロールプレイングを実施し、実際に働くことを想定した採用評価を取り入れることをおすすめします。
その際、志望者のチェックしたい項目は以下の通りです。
項目 | 内容 |
---|---|
知識/経験 | ・コールセンター業務経験はあるか ・コールセンターでなくとも接客業務経験はあるか |
スキル | ・PC操作 / 入力に問題はないか、基本的なことはできるか ・言葉遣いは問題はないか |
姿勢 | ・顧客目線で考えられそうか ・ストレス耐性はありそうか |
面接とロールプレイングを組み合わせた採用プロセスを導入することによって、職場にフィットしやすい人材かを見極めやすくなります。
教育体制を見直す
コールセンターは、一括で多くの人材を採用し、全員に向けて教育する傾向にあります。しかし、能力の個人差は大きいため、一括の研修よりも1対1の形式で行う方が効果的です。
内容としては、以下の3つを使い分けて実施するようにしましょう。
項目 | 頻度 | 内容 |
---|---|---|
コーチング | 2ヶ月に1回程度 | オペレーターの「課題」を「ともに考え」、 どう解決するかを考える時間 |
カウンセリング | 2ヶ月に1回程度 +随時 | オペレーターの「悩み」を「聞き」、 どうすればその悩みが解決するかを助言・提案する時間 |
フィードバック | 1~3ヶ月に1回程度 | 客観的な事実を伝え、評価する時間 ※評価・報酬制度を基にしたフィードバック |
これらを実施することで、個人の能力や特性に応じて、課題へのアプローチや悩みの解決を一緒に考えることができるため、パフォーマンス向上を期待できます。
フィードバック面談は、客観的な「評価」を自己認識してもらう場になるので、コーチングやカウンセリングとは異なり「事実」をしっかりと伝えるようにしましょう。以下のような項目を伝えると効果的です。
- 勤怠:出勤率・遅刻早退回数
- 成果:ミス件数
- 生産性:通話時間・保留時間・作業時間
まとめ
コールセンターの離職率が高い理由やそのことによって起こる影響、抜本的に改善する方法について解説しました。
コールセンターはどうしてもコミュニケーション不全に陥りやすいため、スタッフ1人ひとりに合わせた教育体制を構築することが重要です。
ぜひ、この記事を参考にして自社に適した改善策を検討・実施してみてはいかがでしょうか。
b-pos編集部
代行・外注サービスの比較サイトb-pos(ビーポス)の編集部。b-posは、BPOサービスの比較検討時に知っておきたい情報やサービスの選び方について解説するメディアです。サービスの掲載企業の方はこちらから(https://b-pos.jp/)