記帳代行の費用相場は?外注費を安くする3つのポイントも解説

「記帳が追いつかない」「経理業務が煩雑になっている」。このように悩む方は多いでしょう。しかし、記帳は事業を行ううえで欠かせない重要な業務です。
この記事では、記帳を代行する際の相場やメリット、デメリットについて解説します。記帳業務に追われて本業に集中できないといった方は、ぜひ参考にしてみてください。
目次
記帳代行の2つの依頼先
記帳代行の依頼先には、以下の2つが挙げられます。
- 記帳代行会社
- 税理士事務所
ここではそれぞれに分けて解説しますので、詳しく見ていきましょう。
記帳代行業者
記帳代行業者とは、記帳代行を専門に請け負う業者です。税理士のように税務に精通した専門家ではないため、業務の質・スピードは業者ごとにバラつきがあります。
しかし、一般的に税理士へ依頼するよりも費用がリーズナブルに済む傾向にあります。また月単位で契約できることが大きなメリットです。
注意点としては、代行業者に税理士が在籍していない場合「決算申告業務を依頼できないこと」があげられます。
以下記事では、スタートアップ企業・中堅企業などの企業タイプ別におすすめの記帳代行サービスを紹介しています。ぜひあわせてご覧ください。
税理士事務所
記帳代行の依頼先として一般的に挙げられるのが、税理士事務所です。
決算申告業務や年末調整業務の代行は税理士の独占業務とされているため、普段の記帳以外にも決算申告まで依頼したい場合は、税理士事務所に相談するとよいでしょう。
また、税理士事務所に依頼する場合、顧問契約を結ぶことが一般的です。契約内容にもよりますが、帳簿作成以外にも税務相談に対応してもらうこともできます。
【依頼先別】記帳代行の費用相場
ここでは依頼先別の記帳代行の相場を詳しく見ていきましょう。
記帳代行会社へ依頼した場合
記帳代行業者に依頼した場合の費用相場は、月の仕訳数を100〜250件程度だと想定すると、月額に6,000〜20,000円程度です。
これらに加えて「急ぎの作業を依頼する」「領収書や請求書などのファイリングをお願いする」「部門別に記帳する」などを追加した場合は、オプションの料金が発生します。追加料金に関する規定は代行業者ごとに異なるため、事前に確認しておきましょう
税理士事務所へ依頼した場合
税理士事務所に記帳代行を依頼する場合、顧問契約を結ぶことが一般的です。そのため、月額顧問料を定額で支払います。
記帳代行を含む月額顧問料の相場は、法人であれば40,000円程度から、個人事業主なら30,000円程度からです。ただし記帳代行業者と同じく、企業規模や仕訳数に応じて顧問料は変動するため、税理士へ依頼する場合も事前に確認してください。
【料金体系別】記帳代行の費用相場
記帳代行の料金体系は、大きく分けて「月額制(時間制)」と「従量課金制(単価制)」の2種類に分けられます。
月額制(時間制)は「ひと月の稼働時間30時間で月額〇〇円」のように、ひと月あたりの記帳代行における稼働時間をあらかじめ想定して費用が設定されています。月30時間の稼働で5万円~10万円程度かかるため、時間あたりの費用相場は2,000円~3,000円程度となります。
従量課金制(単価制)は、依頼する記帳の仕訳数に応じて料金が変動し「仕訳数×単価」の計算式でサービス料金が決まります。1仕訳あたりの費用相場は50円~100円程度で、月額基本料が別途かかるサービスもあります。
仕訳数ごとの月額費用の相場は、以下のとおりです。
仕訳数 | 月額費用の相場 |
---|---|
〜100仕訳 | 10,000円程 |
101〜200仕訳 | 15,000円程 |
201〜300仕訳 | 20,000円程 |
301〜400仕訳 | 25,000円程 |
401仕訳〜 | 30,000円程 |
1か月あたりの仕訳数が100件にも満たない小規模事業者の場合は、月額制よりも従量課金制の方がコストの無駄なく利用できます。一方で、ひと月あたりの仕訳数が多い中堅・大企業や小売店、飲食店などは、従量制だと割高になる可能性があるため、月額制の方が適しています。
記帳代行と似たサービス「経理代行」との2つの違い
記帳代行と似たサービス「経理代行」との違いには、以下の2つが挙げられます。
- 対応範囲
- 費用
対応範囲
記帳代行に依頼できるのは、領収書の整理・会計ソフトへの入力・帳簿の作成などの記帳関連の業務がメインである一方で、経理代行は記帳業務を含む経理業務全般を代行しています。そのため、記帳代行は経理代行サービスのなかの一部といえます。

記帳代行と経理代行に依頼できる業務は、以下のようなものがあります。
<記帳代行>
領収書の整理 | レシートや領収書の日付や仕訳科目ごとに整理 |
会計ソフトへの入力 | 領収書・請求書・通帳コピーなどの証憑を会計ソフトへ入力 |
帳簿の作成 | 会計ソフトに入力したデータをもとに試算表・総勘定元帳などの帳簿を作成 |
<経理代行>
記帳業務 | 領収証の整理・会計ソフトへの入力・帳簿の作成など |
経費精算 | 社員が立て替えた経費の精算 |
売掛金・買掛金管理 | 売掛金と買掛金の管理・消込作業・支払いなど |
給与計算 | 従業員に支払う給与額の計算やそれに伴う勤怠管理 |
月次・年次決算 | 月次試算表・損益計算書・貸借対照表などの作成など |
記帳業務だけでなく、売掛金・買掛金管理や給与計算などの経理業務まで依頼したい場合は、経理代行会社への相談がおすすめです。
以下記事では、おすすめの経理代行サービスを紹介しています。「基本的な経理業務のみ依頼したい」「業務プロセスの改善まで任せたい」といったニーズごとに選べる内容のため、ぜひあわせてご覧ください。
費用
記帳代行は記帳作業に関連する業務のみを代行する一方で、経理代行は幅広い経理業務全体を代行するため、料金もおのずと高くなります。
たとえば、中小企業が記帳業務から給与計算、決算書作成、法人税申告まで一連の経理業務をアウトソースしたい場合、月額20万円〜100万円程度が相場です。なお、業務範囲や内容、会社の規模などに応じて変動します。
以下記事では、経理代行の費用相場について詳しく解説しています。経理代行の利用も検討中の方は、ぜひあわせてご覧ください。
記帳代行の外注費を安くする3つのポイント
記帳代行の外注費を安くするポイントは以下の3つです。
- 領収書・請求書などを整理してから共有する
- 期日から余裕をもって依頼する
- 税理士との契約内容を見直す
領収書・請求書などを整理してから共有する
領収書や請求書をあらかじめカテゴリー別に整理して共有することで、依頼先が効率的に記帳を進められます。特に時間制で依頼している場合は、同じ時間内により多くの仕訳処理を行えるため、結果的にコストを抑えられるでしょう。
また、データ整理によりデータ入力時のミスを減らすことにもつながるため、のちの修正作業も削減できます。法人口座やクレジットカードを一本化して取引の整理を簡単にする方法も、作業時間を短縮する面で効果的です。
期日から余裕をもって依頼する
依頼するタイミングが期日直前になってしまうと、特急での対応にオプション料金がかかる可能性があります。たとえばあるサービスでは、通常20営業日以内でデータを納品していますが、5日営業日以内での対応に5,500円(50仕訳まで)のオプション料金がかかります。
特に年末調整や確定申告などの時期は記帳代行会社の繁忙期にあたるため、決められた期日までにデータを納品してもらいたい場合は期日から余裕をもって依頼しましょう。
税理士との契約内容を見直す
税理士事務所のなかには、顧問先に限り記帳代行を割引価格で請け負っている事務所もあります。そのため顧問税理士がいる場合は、記帳業務もあわせて依頼できないか確認しましょう。
ただし、税理士事務所の規模・体制によっては多くの記帳には対応できないケースもあります。依頼する記帳の量が多い場合、税務関係は引き続き税理士に依頼し、記帳のみ記帳を安く請け負っている代行会社に依頼することで、外注コストを抑える方法もあります。
記帳が重要である2つの理由
記帳が重要である理由には、以下の2つが挙げられます。
- 記帳は事業を行ううえで義務とされている
- 適切に仕訳を行い、お金の流れを見える化する
ここではそれぞれに分けて解説しますので、詳しく見ていきましょう。
記帳は事業を行ううえで義務とされている
記帳業務は、事業者が経済活動を行ううえで義務とされています。以前は、少ない所得の白色申告者には、記帳業務が免除されていました。しかし、平成26年の税法改正から義務付けられました。
すべての事業者に記帳業務が義務化されたことによって、事業規模に関わらず記帳業務が重視されています。また、取引の透明性を確保することが目的です。
適切に仕訳を行い、お金の流れを見える化する
記帳業務を行うには、勘定科目と仕訳についての理解を深めなければなりません。「勘定科目」は取引の詳細項目です。「仕訳」は取引をルールに従って帳簿へ記載する作業です。
それぞれの例を挙げると以下のようなものがあります。
- 商品の売り上げ:売上高
- 広告費用:広告宣伝費
仕訳する場合、貸方と借方に分けて適切な勘定科目に沿って記帳します。取引を「貸方」と「借方」の二軸で記帳することで、お金の流れを見えやすくすることが大きな目的です。
記帳代行を依頼する3つのメリット
記帳代行を依頼するメリットには、以下の3つが挙げられます。
- 業務負担を軽減できる
- コストダウンを見込める
- リソースを重要業務に振り分けられる
ここではそれぞれに分けて解説しますので、詳しく見ていきましょう。
業務負担を軽減できる
記帳代行を利用すると、経理を担当している社員の業務負担を大きく軽減できます。経理担当者は、記帳業務以外にも、給与計算から売掛金や買掛金の管理まであらゆる領域の仕事があります。
毎日の記帳がなくなるだけでも負担を軽減でき、副次的に離職率ダウンにも寄与できます。
コストダウンを見込める
記帳代行を利用することによって、コストダウンが見込めます。
一つ目に削減できるコストは採用費です。例えば、1人を雇用するまでにかかる費用は数百万円単位がかかります。一方で記帳代行業者と契約する際にイニシャルコストはかかりません。
二つ目に削減できるのは継続的な人件費です。例えば、記帳をメイン業務とする社員を月給20万円で雇用している場合、月額費用5万円の記帳代行サービスに切り替えることで、毎月15万円削減することにつながります。
リソースを重要業務に振り分けられる
業務負担や費用以外にも、社内リソースを重要業務に振り分けることができます。特に小規模事業者の場合、記帳担当者を設置せず、経理担当者が記帳業務もすべて実行しているケースもあります。
現状、経理担当者から記帳業務を省くことによって、ほかの仕事をする余力が生まれます。すると業務に余裕ができ、ヒューマンエラーを防止することにもつながります。
記帳代行を依頼する3つのデメリット
記帳代行を依頼するデメリットには、以下の3つが挙げられます。
- 依頼できる業務が限られるケースがある
- 情報漏洩リスクがある
- 外注管理をする必要がある
ここではそれぞれに分けて解説しますので、詳しく見ていきましょう。
依頼できる業務に注意しなければならない
記帳業務を外部に依頼する場合、対応できる業務内容をしっかりと確認してから契約を結びましょう。
記帳代行でよくある失敗としては「税務申告まで依頼するつもりだったが、税理士が在籍しておらずできなかった」が挙げられます。税務申告の代行は、税理士のみが行える業務です。
そのため、記帳代行に加えて税務申告まで依頼したい場合は、税理士が提携・在籍しているかを確認しましょう。
情報漏洩リスクがある
記帳代行を利用することで社外の人間が経理データを取り扱うようになります。社内で業務を完結させるよりも情報漏えいのリスクが高まります。
クラウド上で業務が完結する場合においても「依頼先がどのようなセキュリティ対策を施しているのか」を事前に確認してください。
外注管理をする必要がある
記帳代行を利用することによって外注管理の手間が生じます。「誰が記帳代行との契約内容の管理や費用の把握、依頼内容の確認などの管理業務を行うのか」を検討しておきましょう。
記帳を外注すると業務負担が軽減されますが、それ以上に管理業務が煩雑にならないかをよく考えてください。
記帳代行相場に関するよくある質問
記帳代行相場に関してよくある質問は、以下の2点です。
- 質問1.記帳代行は違法ではありませんか?
- 質問2.フリーランスに依頼した場合の相場はいくらですか?
質問1.記帳代行は違法ではありませんか?
記帳代行自体は違法ではありません。税理士や会計士の資格がなくてもできる事業です。
しかし、税理士資格がない記帳代行サービスへの税務相談や税務関連書類の作成代行は、法律で禁止されています。
そのため、税理士資格を有していない業者が税務相談を受けている場合は、違法となります。事前にどの範囲までを依頼するのかを検討し、適切な業者へ相談するようにしましょう。
質問2.フリーランスに依頼した場合の相場はいくらですか?
記帳代行をフリーランスに依頼する費用相場は、3,000〜10,000円程度と幅広い傾向があります。試算表の作成をはじめとする経理業務の一部を含めて依頼できる場合もありますが、経験年数・知識量・対応業務などは個人差があります。そのため記帳代行をフリーランスに依頼する場合は、経験・スキル・信頼性などを確認したうえで依頼先を決めましょう。
フリーランスに仕事を依頼できる「クラウドワークス」や「ランサーズ」などのクラウドソーシングサービスでは、フリーランスの経歴・保有資格などを含めたプロフィールを確認できるだけでなく、実際に仕事を依頼したユーザーからの評価を確認することもできます。依頼先選びの際に参考にしてみましょう。
まとめ
記帳代行の相場について解説しました。記帳代行の月にかかる費用の相場は、依頼先の種類や自身が法人・個人なのかによって変動し、目安としては以下の通りです(いずれも1ヶ月あたり)。
記帳代行業者:6,000〜20,000円
税理士事務所:40,000円(法人)、30,000円(個人事業主)
また、この費用に加えて、依頼先や業務内容に応じてオプション料金が別途発生します。相場と併せて、依頼したい業務内容を洗い出し、最適な代行業者を探しましょう。

b-pos編集部
代行・外注サービスの比較サイトb-pos(ビーポス)の編集部。b-posは、BPOサービスの比較検討時に知っておきたい情報や、内製化・成果向上に繋げるノウハウについて解説するメディアです。サービスの掲載企業の方はこちらから(https://b-pos.jp/lp)