予算をかけずに顧客を獲得する5つの認知拡大戦略。パーソルキャリアBRSの「成果が出た施策の裏側」
この記事ではBPO事業者を対象に、サービスの立ち上げから現在に至るまでで一番効果があった施策や取り組みについて紹介していきます。
今回取材したのはパーソルキャリア株式会社のBRS事業部のディレクターである、徳久 愛子(とくひさ あいこ)さんと営業担当の石動 まき(いしどう まき)さんです。これまでの苦悩から現在行っている顧客獲得手法などについてお伺いしました。
目次
英語対応が可能な採用代行「BRS RPOサービス」
熊本
まず初めに、BRSのサービス内容についてお伺いしてもよろしいでしょうか。
徳久
BRSではバイリンガル・マルチリンガル人材を専門とした人材紹介サービスと、英語対応が可能なRPO(採用代行)サービスを提供しております。元々は人材紹介のみでしたが、サービスを展開する中でお客様から多くのご要望をいただいたこともありRPOサービスを開始いたしました。
RPOサービスでは、企業様の採用ニーズに合わせて入口から出口までEnd to Endで採用代行を提供しております。
採用プロセスにおいて英語力が必要なお客様を対象に、高い語学力を持つ専門スタッフが、クライアント企業様の採用活動をご支援します。英語を必要とするポジションの採用や、海外本社や外国籍の採用ご担当者様、外資系エージェントとの英語でのコミュニケーションも含めた採用全体をサポートいたします。
熊本
なぜ、語学が必要になる方を対象としたサービスを提供することになったのでしょうか。
徳久
まず、BRSの人材サービスを通してお付き合いのある企業様からRPOのご要望をいただくことが多くありました。特に外資系企業様は採用業務自体に語学力が必要になることが多く、また採用においても一般的な日系企業の採用とは異なるため、日本の市場を理解しつつ、外資系企業での採用ノウハウを持つBRSが採用代行サービスを提供する価値があると考えました。
石動
パーソルグループの中にも複数のRPOサービスがありますが、BRSでRPOサービスを始める前は、語学対応が必要なRPO案件の多くをご支援できていませんでした。そのため、バイリンガル事業部であるBRSでのRPOサービス提供はパーソルグループにとっても新たな価値提供となっています。
熊本
なるほど。ちなみに、外資系に強いRPOサービスを展開する競合企業の数は多いのですか。
石動
数はそれほど多くないですが、ほぼすべてが外資系企業です。
熊本
そのような競合他社と比較した時のBRSの強みを教えてください。
石動
やはり日本市場を熟知しているところです。
競合は外資系企業が多いため、グローバル基準で採用目標やKPIを設定するケースが多いです。しかし、日本の採用市場は採用充足日数が海外に比べ長いことや転職回数が注目される点など、他国と異なる部分が多くあります。そのため、採用要件をはじめとするグローバル基準の要求の多くが日本市場に適しません。
BRSは日本の採用市場や歴史的背景などを深く理解していることに加え、日本で幅広い人材サービスを提供するパーソルグループにこれまで蓄積されている採用知見を活かすことができます。例えば、「こういった経験やスキルを持った人材は日本の採用市場にこれだけしかいない」という具体的なデータを用いることで、グローバルな企業様に対しても説得力を持って説明することが出来ます。
予算をかけずにリード獲得ができる営業戦略
熊本
現在の営業活動について教えていただけますか。
石動
BRSのRPOサービスの立ち上げ当初は営業体制の整備を行い、想定できる営業パターンを全てチャレンジしました。その後、それまでに行なった施策の中で成果が上がったものにフォーカスし、フォローアップを行ないました。
徳久
営業の施策として、まずサービスの強みとターゲットのお客様を明確化することが重要です。例えば、私たちの場合は採用過程で英語力が必要となるお客様なので、外資系企業や日系のグローバル企業となります。その上で、そのターゲットにリーチするためのチャネルを検討します。
弊社の場合、会社の1事業部なので完全に新規で顧客を獲得するという方法以外に、既存ネットワークを活用する方法があります。もちろん新規ネットワークの開拓は重要ですが、営業リソースが限られている中で効率的な方法は既存ネットワークを有効に活用しつつ、独自の新規営業活動を実施する方法です。
- 会社の既存ネットワークを使うパターン
- 独自ネットワークをゼロから構築するパターン
そのため、まずは既存のネットワークを最大限に活用しました。具体的には、BRSという私たちが所属している事業部のネットワークやパーソルキャリアの自社ネットワーク、さらにパーソルキャリア以外のパーソルグループのネットワークなど、それぞれのネットワークでターゲットのお客様との接点があるチームと協力することを優先します。その上で、そのネットワークにおいてどのようにアプローチをしていくか、営業手法に対して優先順位をつけていきます。
このように、段階を踏んでプランニングを行い効率的に動くことが非常に大切です。一人の営業担当者のマンパワーだけに頼った営業プランは成果が出るまでに時間がかかってしまうと思います。
熊本
なるほど。ちなみに、現在はウェブマーケティングなどは行なっているのでしょうか。
徳久
BRSでRPOに特化したウェブ広告などへの投資は行っていません。
全方位カバーするようなアプローチで顧客獲得
熊本
BRSでRPOサービスをリリースした当初はどのように顧客を開拓していったのでしょうか。
石動
当初はまだどこに当たりをつけて動いていくのか、またどのような反響があるのか想像がつかない段階だったので、様々なアプローチを行いました。
まずはBRSのお客様に全体的にアプローチしました。具体的には、ニュースレターを送信し、BRSがRPOサービスの提供を開始したことを広く周知する活動をマーケティング担当者と連携して行いました。
次に、BRSのお客様のうち、すでにご支援実績のあるお客様に対して個別提案を実施しました。お客様からのフィードバックや反応を直接いただくことで、より適したご提案やサービスの向上につながっています。
このような方法で認知度を高めるとともに、ターゲットとなる企業や関係者に直接アプローチする機会を増やしました。
また、反響や問い合わせ状況の分析をもとにフォローアップ戦略を調整することで、より効率的にリードを獲得することが出来ました。 施策としては、ウェブサイトの整備も行いました。1年目には、BRSのホームページやパーソルキャリアのホームページにBRSのRPOサービスに関する情報を追加しました。実際にホームページをアップデートしたのは、おそらく9月か10月頃ですが、結果、11月頃にはホームページ経由で問い合わせをいただき、新しいお客様とのつながりを持つことができました。
さらに、パーソルグループ内で外資系のお客様や、語学が必要な求人案件をお持ちのお客様に対する社内周知活動として、勉強会を開催しました。メールベースでの連絡は個別で行っていましたが、勉強会はセミナーなどを行う専門の部署と連携して、BRSのRPOサービスの紹介を1時間ほど行いました。
この勉強会にはグループ内から約100人の参加者が集まり、認知を少しずつ広げることで、リード獲得につながりました。
このように、1年目は優先順位をつけながら、考えられるあらゆる営業活動を試してきました。
熊本
なるほど。リリース当初から非常に多方面にわたるアプローチをされていたんですね。
石動
そうですね。特にBRSの既存のお客様へ対する個別アプローチは、やはりお客様へのサービスの親和性もありとても有効でした。すでにご契約いただいたケースもありますし、現在も継続してサービスの導入を前向きに検討してくださっているお客様も複数いらっしゃいます。
徳久
もう一つ挙げるとしたら、既存ネットワークを活用した「自組織向けの社内キャンペーン」ですね。
BRSの人材紹介サービスコンサルタントに向け、営業のアポイント獲得に対してインセンティブを設けるという方法をとりました。BRSがRPOサービスの提供を開始したことは、人材紹介サービスコンサルタントにとってもサービスの幅が広いことのアピールや、コミュニケーション機会の創出など、クライアントとの関係構築においてプラスになります。さらにインセンティブを設けることによって、動機を強めたのです。実際に、これを機にコンサルタントによるアポイント取得が増加しました。
営業活動をする上では、自力で動ける施策と、他の人の力を使ってうまく動かす施策をあらゆる方向から考えることが、結果的に早い受注に繋がるのではないかと思います。
これまでに効果が出なかった施策は無い
熊本
これまでに色々な施策を行なってきたと思うのですが、その中で効果がいまいちだったものはありますか。
石動
実は、これまで取り組んできた施策で「いまいちだった」というものは特にありません。もしかしたら、今後の優先順位の中で「やらなくてよかった」という判断がされることもあるかもしれませんが、一度チャレンジして結果が出ないと判断はできないため、「やってよかった」「チャレンジして良かった」「リーチしておいて良かった」というところが多いです。
徳久
まず、自分たちの中では「このクォーターはとりあえずボリュームを重視する」と決めて実行しているので、石動が言う通り失敗とは感じていないです。
重要なのは、検証できるようにしっかりとデータを取っておくことだと思っています。最初から検証ありきの観点を持っていないと、走り出してから振り返ろうとしてもデータが揃っていないということが起こります。プロジェクトの開始前にシステム上でデータの取り方やクライアントミーティングの記録方法など、検証に必要な情報と、その情報が取得できる準備をしておくことが重要です。
クォーターの終わりに振り返りを行います。3ヶ月では十分にわからないこともありますが、半年後に再評価することで傾向が見えてきます。1年近く経つと「ここが一番効果が高そうだ」というような具体的な傾向が見えてくると思います。
今後は認知拡大に力を入れて事業拡大
熊本
今後やろうと思っている施策などはありますか。
石動
まだやれていない事として今後やってみたいのは、対外的なセミナーの開催です。社内ではサービス紹介セミナーを実施しましたが、外部にはまだ開催していません。企業向けセミナーや勉強会を開き、BRSがRPOを提供している認知を広げていきたいと思っています。
徳久
最後にお伝えしたい点として、弊社のような比較的大きな会社で、グループの他サービスからの紹介がないと新規開拓が成功しないということはないと思います。大切なのは、自社のサービスの特徴(強み)とサービス提供させていただきたいお客様ターゲットを明確にして、そこに向け様々なルートでアプローチしてみることだと思います。
ありがたいことに、私たちのグループには多様な組織があり、それらをうまく活用していますが、独立した企業でも同じように成功できると思います。実際に私たちも独自で獲得している案件が半分くらいあります。
今後もお客様と向き合いながら、BRSの事業をより多くの方に知っていただくために、様々な施策を行なっていく予定です。
熊本
パーソルというネームバリューだけで勝負せずに、BRS独自で様々な施策を打っているということですね。
本日は貴重なお話ありがとうございました。
まとめ
BRSは広告費等の予算をかけずに、様々な営業施策のみで顧客を獲得していることが分かりました。
① 既存顧客への個別アプローチ:BRS内で既に関係のあるお客様に対して、RPOサービスの紹介を個別に行うことで、新規獲得工数をかけずに顧客を獲得しています。
② ニュースレターの活用:マーケティングチームと連携し、BRSがRPOサービスを開始したことを広く周知するためのマスメールやニュースレターを送信しています。
③ ウェブサイトの整備:BRSのホームページやパーソルグループ内のホームページにBRSのRPOサービス関連の情報を追加することで、グローバル企業からの問い合わせに繋げています。
④ 社内セミナーの開催:パーソルグループ内で、BRSのRPOサービスに関する勉強会を開催し、約100人の参加者を集め、社内での認知度を高めています。
⑤ 社内キャンペーンの実施:営業担当者がRPOサービスに関するアポやミーティングを獲得した際にインセンティブを設けることで、社内からの積極的な営業活動を促進させることができます。
今回は英語対応が可能な採用代行サービスを展開するパーソルキャリア株式会社BRS事業部の徳久様と営業を担当されている石動様にお話をお伺いしました。
顧客獲得に課題を持つ方は、ぜひ参考にしてみてください。
b-pos編集部
代行・外注サービスの比較サイトb-pos(ビーポス)の編集部。b-posは、BPOサービスの比較検討時に知っておきたい情報やサービスの選び方について解説するメディアです。サービスの掲載企業の方はこちらから(https://b-pos.jp/)