売れない理由は“個人”じゃない!データと仕組みで変える営業組織のつくり方

営業組織には、常に「売れる人」と「売れない人」が存在します。成果に大きな差がついてしまうと、「あの人は才能がある」「あの人はセンスがない」といった“個人の資質”で語られがちです。しかし本当に、成果の差は個人の問題なのでしょうか?

実は、同じ人が別の会社では成果を出したり、環境が変わると急に数字が伸びたりするケースは少なくありません。つまり、成果の差には「属する組織の仕組み」が深く関係しているのです。

本コラムでは、営業成果を“属人化”の問題としてではなく、「再現性のある仕組み」でどう変えられるかという観点で紐解いていきます。営業生産性の低さに悩む企業に共通する構造的課題を明らかにし、成果を最大化するための組織設計と運用のヒントをお届けします。

データが示す“売れる営業”の条件とは?

営業成果を高めるためには、個人の経験や勘に頼るだけでは限界があります。実際、営業生産性の高い企業では、売れている営業担当の行動やプロセスをデータで可視化し、共通項を見出す取り組みが進んでいます。

売れる営業の行動パターンの共通点

そこから見えてくるのは、「売れる営業」は感覚ではなく、一定の行動パターンや仕組みの中で成果を出しているという事実です。

  • 商談前の準備:顧客情報や仮説をしっかり整理して臨んでいる
  • ヒアリングの深さ:表面的な質問にとどまらず、課題の本質まで掘り下げる
  • 案件管理の精度:進捗を正確に把握し、次のアクションを明確化している
  • 報告頻度:情報をタイムリーに共有し、組織としての知見蓄積につなげている

データ分析から得られる気づき

「売れる営業」の行動パターンを可視化するだけでなく、受注案件の分析からも「どの顧客に、どのタイミングで、どの情報を届けるのが効果的か」といった共通点が見えてきます。

  • 受注案件の共通点
    →どの顧客属性・フェーズ・情報提供が効果的かを把握
  • 行動データの活用
    →Salesforce/ SFAツールで「成果に直結する行動」と「そうでない行動」を切り分け可能

これは、売れる営業が「特別な能力」を持っているからではなく、「成果につながる行動」を“仕組みとして再現できる状態”にあるということを意味します。

つまり、「売れる営業」を育てる鍵は、個々の才能よりも“成果の型”をデータで抽出し、それを全体に展開する仕組みにあるのです。そして“成果の型”を見つけるのを諦めるからこそ、センスや勘といった言葉がはびこってしまうのです。

属人的なスーパープレイヤーを増やすよりも、誰でも一定以上の成果が出せる営業設計こそが、強い営業組織への第一歩だと言えるでしょう。

成果が出ない営業組織に共通する3つの落とし穴

営業成果がなかなか上がらない企業には、いくつかの共通した“構造的な落とし穴”があります。表面的には個々の営業担当者のスキルや努力不足に見えても、実は組織設計やマネジメントの問題であることが少なくありません。

ここでは、特に多く見られる3つの課題を紹介します。

  1. 成果の属人化を肯定している
  2. マネジメントが数字の報告に終始している
  3. 現場に“共通言語”がない

①成果の属人化を肯定している

「売れる人は売れる」「売れない人は仕方ない」といった前提で、成果が個人任せになっているケースは非常に多く見られます。営業のやり方が人それぞれで、ナレッジの共有や標準化が進んでいないと、偶発的な成果しか生まれず、チーム全体の底上げができません。

これでは、組織としての成長も限られてしまいます。

②マネジメントが数字の報告に終始している

営業会議が「売上の報告会」で終わっている組織では、メンバーの行動や思考にフィードバックが行き届かず、改善が進みません。

本来、営業マネジメントは「行動の質」に介入し、「再現性のある成果の出し方」を支援する役割です。数字だけを追っても、問題の本質は見えてきません。

③現場に“共通言語”がない

「ヒアリングが浅い」「課題の本質を突けていない」といった言葉が社内で飛び交っていても、その定義や基準が曖昧なままではノウハウの共有や改善につながりません。

共通の営業プロセスやフレームワーク、評価基準などが整っていないと、属人的な判断や言葉の使い方が横行し、チームで成果を出すことが困難になります。

これらの落とし穴は、いずれも“個人の努力”では解決しにくい構造的な問題です。だからこそ、組織として成果を上げるためには、仕組みで解決する視点が欠かせません。

次章では、成果を生む営業組織に共通する設計と仕組みの工夫について解説していきます。

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大村 康雄 | 株式会社エッジコネクション 代表取締役社長