インサイドセールス立ち上げ手順!失敗しないための3つの準備と成功事例まで紹介

「インサイドセールス部門を立ち上げたいけれど、手順がわからない」
「立ち上げに失敗しないように注意点を知りたい」

といった悩みは、経営者・マーケティング部責任者の方に起きがちです。

インサイドセールスを立ち上げるには「導入の目的を明確にする」「業務プロセスを分解する」「適切な人材を確保する」といった準備をする必要があります。その後、インサイドセールスの種類に応じて、立ち上げの手順を踏みます。

本記事では、インサイドセールスの具体的な立ち上げ手順、失敗しないための準備を中心に解説します。

そもそもインサイドセールスとは?

インサイドセールスとは、見込み顧客を商談に導くことを目的とした営業活動です。電話やメール、オンライン商談ツールなどを活用し、非対面で顧客とコミュニケーションを取ります。

従来は営業ひとりひとりが、見込み顧客へのアプローチから受注、サポートまでを属人的に実施していました。昨今は、営業活動のアプローチ/商談/サポートを分業化し、効率化を図るためにインサイドセールスというものが取り入れられてきています。

多くの顧客のなかから、受注見込みが高いリードをフィールドセールスにつなぎます。受注見込みが低いリードに対しては、継続的にアプローチして購買意欲を高めます。

インサイドセールス:見込み顧客にアプローチし商談化する
フィールドセールス:商談を実施し受注する

インサイドセールスが「顧客と関係を構築する」「フィールドセールスと適切に連携する」といった役割を果たすことで、効果的な営業活動が実現します。

インサイドセールス導入のメリット

インサイドセールスを導入するメリットは次のとおりです。

  • 営業活動を分業化することで生産性が上がる
  • 移動によるコストがかからない
  • 購買意欲が低いリードにもアプローチ可能

インサイドセールスは「THE MODEL型」と呼ばれるビジネス手法の1つです。「マーケティング」「インサイドセールス」「フィールドセールス」「カスタマーサクセス」の4つに分業することで、営業の生産性が向上します。

またインサイドセールスは非対面で顧客と関係を築くため、時間や交通費といったコストがかかりません。インサイドセールスがリードを十分に育てることでフィールドセールスが外出する回数・時間を減らすことにもつながります。結果として、営業活動全体のコスト削減につながります。

さらに購買意欲が低いリードにも、時間をかけてアプローチすることができます。顧客にとって有益な情報を提供しながらコミュニケーションを取り続けることで、問い合わせにつながる可能性があります。

インサイドセールスの種類

インサイドセールスには、大きく分けて2つの種類があります。

SDR

SDRは「sales development representative」の略であり、反響型の営業です。問い合わせフォームやLPといった場を通じ、顧客からの問い合わせを受けて対応します。WebサイトやSNS、メルマガで情報発信し、問い合わせを促す役割もあります。

「購買意欲が高いリードが獲得できる」「幅広い市場にアプローチできる」といった特徴があります。

BDR

BDRは「business development representative」の略であり、新規開拓型の営業です。レターや電話、メールといった手法でアプローチし、商談化を目指します。ターゲット企業を選定したうえで、戦略的に商談獲得を目指します。

「関係性を築きたい企業にアプローチできる」「客単価が高額になりやすい」といった特徴があります。

インサイドセールス立ち上げの準備

インサイドセールスを立ち上げる際に以下の3つの準備をしておきましょう。

  1. 導入の目的を明確にする
  2. 業務プロセスを分解する
  3. 適切な人材を確保する

1.導入の目的を明確にする

まずはインサイドセールスの導入目的を明確にしておく必要があります。よくある導入目的は以下です。

  • 未接点の大手企業の新規獲得商談数を増やす
  • 蓄積された未商談のリードからの掘り起こしで商談数を増やす
  • フィールドセールスの業務を効率化する
  • フィールドセールスの離職率を下げる

例えば、大手企業の新規獲得商談数を増やしたいという課題であれば、BDRの組織をつくり、アプローチをする手法があります。まだアプローチできていない企業に架電、メール送信などで接点を持つことで売り上げの最大化につながります。

また「たくさんのリードがあるものの、アプローチできていない」という課題もあります。この場合は掘り起こしのためにインサイドセールスを組織し、休眠顧客にアプローチをしていきます。

またインサイドセールスをつくることでフィールドセールスの業務効率化ができ、離職率を下げることも考えられます。決定率の高そうなお客さんをインサイドセールスで選別することで「フィールドセールスが商談すべき顧客」の優先度を設定できます。そのため効率化が可能です。

2.業務プロセスを分解する

次にインサイドセールスを含めた組織の業務領域を明確にしていきます。一般的にリード化からサポートまでの流れと担当者は以下です。

担当者対応業務
マーケティングリードを集める施策を企画・実行する
インサイドセールス商談数を最大化する。顧客との関係値を構築する
フィールドセールスインサイドセールスからトスされた顧客を購買まで導く
カスタマーサクセス購買済みの顧客について、問い合わせ対応などのサポートをする。LTVを最大化できるよう、アップセル・クロスセルをおすすめする。

イメージとしては、

これまで
・営業

今後
・インサイドセールス
・フィールドセールス
・カスタマーサクセス

ただし組織をしてすぐのころは、人員が不足しているため、専門的な役職がいない場合があります。その場合は、既存社員がひとまず役割を担うこともあります(ディレクターがカスタマーサポートに対応するなど)。

3.適切な人材を確保する

組織が安定して機能するために、先ほどの役割を明確に振り分ける必要があります。このあたりは目的からブレークダウンした形で適性を見極めて配置しましょう。

例えば「休眠顧客の掘り起こし」が目的の場合は、営業社員のなかでも、既存顧客との関係構築が上手い社員をアサインすることが重要です。同様にフィールドセールス、カスタマーサクセスについても、社員のスキルを把握したうえで、配置しましょう。

また人員配置のスケジュールをあらかじめて練っておくことも重要です。スケジュールを確定しないと、ずるずると延びてしまい実現できないこともあります。最終的な立ち上げ時期から逆算して、引継ぎのスケジュールも考えましょう。

インサイドセールス(SDR)の立ち上げ手順

ここまでの準備ができたらインサイドセールスをたちあげます。SDRの具体的な手順は以下です。

  1. KPIを設定する
  2. アプローチ対象を決める
  3. 運用ルールを設計する
  4. トークスクリプトを作成する
  5. 開始

KPIを設定する

インサイドセールスの目標を明確にするために、KPIを定めてください。インサイドセールスの役割はフィールドセールスへのトスを行うことです。そのためKPIは「商談化数 / 商談化率」となります。

インサイドセールスのKPIについて、詳しくは以下の記事で紹介しています。

アプローチ対象を決める

続いて具体的にどの顧客にアプローチするのかを定めます。目的に応じてアプローチする対象/しない対象を明確にしましょう。

新規リードから商談化する場合

マーケティングチームとの連携が必要です。リードといっても「ホームページから資料請求をした」「展示会で名刺交換をした」など、さまざまな顧客がおり、自社商材への興味関心は大きく違います。
「どの条件を満たした新規リードにアプローチするのか」を明確に定義しておきましょう。

例)
・問い合わせ/資料請求 した新規リードには5分以内に架電
・他お役立ち資料をダウンロード した新規リードには架電せず、後日情報提供メールのみ

【自社休眠顧客から商談化する場合】

休眠顧客である自社のハウスリストから再度商談に引き上げる場合、「どのチャネルで獲得したリードにあたるのか」「最終コンタクト日/決算月/業界/従業員数など、どの条件を満たしている企業にアプローチをするのか」を、事前にマーケティングチームと協力して定義しておきましょう。

例)
・決算月:2ヶ月前に迫った企業
・従業員数:101〜300名
・業界:コンサルティング業界
の企業には、予算消化も兼ねた価値提供メール/架電を実施

運用ルールを設計する

インサイドセールスはマーケティングチーム・フィールドセールスと連携して進めます。そのため他部署を巻き込んだ運用ルールを設計しないと、うまく機能しません。

具体的には「顧客データの運用ルール」「商談の受け渡しルール」「架電するリードのルール」を決めておきましょう。

【顧客データの運用ルール】

顧客データは一般的にCRM / MA / SFAなどのツールを用いて保存・更新されます。どのタイミングで、誰が更新するのか、顧客の購買意欲をどう管理するのか(スコアリング)などのルールを決めておきましょう。


・タイミング:月曜日午前中
・入力:該当クライアント担当者
・確認:運用担当者
・スコアリング:資料請求:2点、セミナー参加完了:4点…等

【商談の受け渡しルール】

商談をフィールドセールスに受け渡すタイミングも重要です。顧客の購買意欲がどの程度まで高まったら受け渡すのかを決めておきましょう。その際、購買意欲の定義も定めておく必要があります。「顧客から○○という言葉が出た」「体験版を導入してくれることになった」などで顧客の意欲を定義しておきましょう。


・条件a:予算、検討度、課題感のヒアリングを終えた顧客
・条件b:顧客から〇〇という言葉が出た
・条件c:体験版の導入の意思が見られた

【架電するリードのルール】

リードが大量にある場合は、インサイドセールスが架電する顧客を絞る必要もあります。こちらも顧客の購買意欲を軸に定義しましょう。まだ購買しそうにない顧客に関しては資料送付、メルマガ送付、セミナー案内などの対応策を取るといいです。


・A:商談打診
・B:セミナー案内
・C:資料送付/メルマガ送信

トークスクリプトを作成する

ここまでクリアしたら、トークスクリプトをつくります。トークスクリプトとは顧客向けの原稿です。トークスクリプトを定めないと、人材によって成果がばらけてしまい属人化してしまいます。しかし成績のよい社員のトーク術などを軸にトークスクリプトを定めることで、チーム全体で成果を高められます。

事前にスクリプトを作っておき、顧客の反応を踏まえてスピーディーに改善を行いましょう。

開始

ここまでの手順ができたら、インサイドセールスとして業務を開始できます。KPIである商談数、商談化率の達成を目標に業務を推進しましょう。ただし、KPI自体はその都度、見直す必要があります。継続的にPDCAを回しながら、質を高めることを考えましょう。

インサイドセールス(BDR)の立ち上げ手順

では続いて、BDRの立ち上げ手順をご紹介します。BDRはSDRと違って、既存のリードではなく、新規リードの獲得を目指す必要があります。その分、商談までのハードルが高いことを事前に意識しておきましょう。

  1. ターゲット企業を決める
  2. 類似企業のリストアップ
  3. 運用ルールを設計する
  4. トークスクリプトを作成する
  5. 開始

ターゲット企業を決める

まずはどういった属性をもつ顧客にアプローチするかを定義します。商談化率、購買率を高めるために、商材自体が狙っているターゲットとリンクしておく必要があります。

以下の手順でターゲット企業を決定します。

1:自社の受注顧客の分析
2:狙いたい顧客の決定
3:その企業の属性/課題を整理

まずは「1:自社の受注顧客の分析」を行いましょう。自社商材を導入している企業について、主に以下の項目を整理します。

  • 企業規模(年商、社員数)
  • ビジネスモデル
  • 導入ニーズ
  • 決裁者
  • 導入前の代替策

こちらの情報をもとに「2:狙いたい顧客を決定」しましょう。受注顧客以外でも単価アップを狙いたい場合は、より大きい事業規模の顧客にアプローチする必要があります。またクロスセルしたい商材が他にある場合、より幅広いニーズを持っている顧客を探す必要があります。

最後に以下の例のように、「3:狙いたい顧客の属性/課題を整理」します。

例)
・従業員数:501名以上
・業種:化粧品メーカー
・担当者:マーケティング責任者
・アプローチ方法:フォーム/キーマン架電
・基本的に常に新しいマーケティング施策を探している

類似企業のリストアップ

上で定めたターゲット像をもとに未接点企業をリストアップしましょう。一覧で洗い出してスプレッドシートなどにまとめることで、今後管理しやすい状況をつくります。

スプレッドシートにまとめる際のイメージ

運用ルールを設計する

続いて運用ルールを定めます。主に以下の運用ルールを決めておきましょう。

  • 1日の架電数
  • 架電前調査/準備する項目
  • 架電する企業の優先順位

ただしこれらの項目は、実際にスタートしたあとに見直していく必要があります。

例えば「1日の架電数を設定したが、実際はKPIが達成されない」という課題が生まれたとしましょう。その場合は「単純に1顧客に時間をかけすぎている」「優先順位の要件が間違っている」などの可能性があります。

当初のプランがそのままKPIに沿って遂行されることは少ないです。運用後にKPIを達成できるようなルールに改善していきましょう。

トークスクリプトを作成する

SDRと同様、トークスクリプトを定める必要があります。BDRの場合は接点のない顧客ですので、商談までのハードルが高いです。なかでも決裁者に行きつかずに切られてしまうことが多くあります。そのためトークスクリプトの質が求められます。

以下はトークスクリプト作成のための参考記事になります。

開始

ここまでの準備ができたら運用を開始します。KPIを達成できているかをシビアに見定めましょう。ただしBDRは特に新規顧客への架電ですので、メンバーが精神的に疲弊しやすいといえます。「無理な目標を設定をしていないか」という側面でも、常に観察を続けることが重要です。

インサイドセールス立ち上げの成功事例

ここではインサイドセールス立ち上げの成功事例をご紹介します。

株式会社メドレー

株式会社メドレーは、人材採用・医療分野においてプラットフォーム事業を展開しています。インサイドセールス部門は社員3名からスタートし、業界トップシェアにまで引き上げました。

立ち上げ時はKPIを「商談獲得数」とし、各種データ・ナレッジを蓄積しました。「フィールドセールスとのコミュニケーションを円滑にし、インサイドセールス部門のポジションを確立する」といった目的で、社内で一目置かれているメンバーを配置しました。

その後も成長期、調整期に応じて「アウトバウンドコールのストレスを緩和する」「商談をスコア化して効率化する」といった施策を実施しました。その結果、有償導入企業がゼロの状態から有償導入先1,200社へと引き上げることに成功しました。

出典:ProSharing Consulting|【イベントレポート】成功するインサイドセールスーISのプロが語る、事業成長に繋がるインサイドセールス部隊の創り方とは?ー

株式会社Faber Company

株式会社Faber Companyでは、Webマーケティングを支援するサービスを提供しています。

「展示会や外部イベントなどで得たリードのフォロー」「見込み顧客の課題をヒアリングする」といった目的で、2016年にインサイドセールス部門を立ち上げました。マネージャーをのぞいた10名程度のメンバー全員がインターン生という体制でスタートし、立ち上げに成功しています。

マネージャーがKPI設計やトークスクリプトの準備・更新を担当し、インターン生が実際の架電を担当しました。高いモチベーションによりうまく回っていましたが、学業や就職活動の都合で出勤が不安定になることが予想されたため、徐々にアルバイトを主体とした体制に変更しました。

展示会経由のリストはリードタイムが長いため「アプローチする見込み顧客の課題感」「利用中の商品・サービス」「決算時期」といった数々の情報を取得し、CRMやSFAツールに記録することを重要視して運用しました。

インサイドセールス部門の目標は「有効商談の創出数・受注金額」としています。商談を担当したフィールドセールスから受けるフィードバックをもとにメンバーのトークを調整することで、営業活動の質の向上に役立てています。

出典:才流|インサイドセールスの立ち上げ方と2社の成功事例【SDR・BDR】

インサイドセールスの立ち上げ〜運用で失敗するケース

インサイドセールスの立ち上げ~運用で失敗するケースには、次のような特徴があります。

プロセス間のコミュニケーションが少ない

営業プロセス間のコミュニケーションが少ない場合、フィールドセールスの運用で失敗する可能性があります。

企業としての目標を達成するには、営業プロセス間の連携が欠かせません。そのため「マーケティング」「インサイドセールス」「フィールドセールス」間で十分にコミュニケーションを取る必要があります。

コミュニケーションが不足することで、KPIに差が出ます。具体的には、インサイドセールスが獲得したアポイントに対し、フィールドセールスが「アポイントの質が悪い」といった不満を抱えるケースがあります。

そのためコミュニケーションを密に取り「有効リード」や「有効商談」の定義を、プロセス間で統一しましょう。

経営者レベルがコミットしていない

経営者がインサイドセールス導入を現場に任せきりにした場合、失敗する可能性があります。

インサイドセールスの立ち上げには、社内の関係者の協力が不可欠です。導入する目的や目標、体制や実施する施策を決めなければ、方向性を統一できません。

運用がうまくいくまでは、経営者レベルが伴走する必要があります。具体的には「定例ミーティングに参加する」「案件の進捗を把握する」「失敗した原因をともに検証する」などに取り組むことで、インサイドセールスの立ち上げ~運用を成功させることができます。

まとめ

インサイドセールスを立ち上げる際は、SDR・BDRに応じて手順を踏む必要があります。他社の成功事例や、失敗するケースを参考にすることで、インサイドセールスの立ち上げ~運用の成功に近づきます。

ご紹介した手順を理解し、インサイドセールスの立ち上げに役立てましょう。

b-pos編集部

代行・外注サービスの比較サイトb-pos(ビーポス)の編集部。b-posは、BPOサービスの比較検討時に知っておきたい情報やサービスの選び方について解説するメディアです。サービスの掲載企業の方はこちらから(https://b-pos.jp/)