アカウント営業とは? 他の営業手法との違い/実践7ステップを解説
「アカウント営業って何なの?」
「アカウント営業をやってみたいけど、どんなメリットとデメリットがあるか分からない」
本記事はそんな疑問を持つあなたにアカウント営業を理論的にも感覚的にも解説します!
また、アカウント営業と他の営業手法との違いを解説し、アカウント営業を実践するための7ステップと具体的な手法や戦略立案のヒントを紹介します。
本記事を通じて、あなたがアカウント営業を理解・活用することで、ビジネスを一歩先へ進める手助けになれば幸いです。
アカウント営業とは?
アカウント営業とは、特定のアカウント(顧客)に対して深く分析することで長期的な関係を築くことを目指す営業手法です。
つまり、一回限りの取引や短期的な利益を追求する営業手法とは異なりアカウント(顧客)となる企業や個人と長期的に深い関係を築き上げることを重視します。
アカウント営業の根底には、顧客のビジネスや課題を深く理解し、それに対する最適な解決策を提供することが求められます。
単に商品やサービスを売るだけではなく、顧客が直面している問題を解決し、そのビジネスの成長をサポートするパートナーとなることがアカウント営業なのです。
アカウントの簡単なステップ
以下は、アカウント営業の簡単なステップになります。
- 対象となるアカウント(企業)を絞り込み
- その企業や担当の特性、課題、ニーズについて詳細な調査を実施
- その調査結果に基づいて、適切なアプローチを計画
- 受注をゴールとせず、受注後のサポートまでセットで総合的なソリューションを提供
そのため、アカウント営業では顧客との信頼関係の構築が重要となります。
顧客のビジネスを理解し、その課題を解決するための提案ができる営業担当者は、顧客から信頼を得やすく、結果的に長期的な関係を築くことが可能となります。
アカウント営業のメリット・デメリット
アカウント営業のデメリットとして挙げられることは、「結果を出すまでに時間がかかること」となりますが、それを上回るメリットとして、「一度築き上げた関係が長期的なビジネスの成功に繋る」ことが挙げられます。
また、アカウント営業を通じて得られる深い顧客理解は新たなビジネスチャンスの発見や、更なる提案の機会をもたらすこともあります。
〇〇営業とアカウント営業の違い
アカウント営業をより理解するために他の営業手法との違いを以下にまとめて解説していきます。
ソリューション営業との違い
ソリューション営業は、顧客の特定の問題や課題に対して、その解決策(ソリューション)を提供することが目的です。
一方、アカウント営業は顧客の課題解決だけでなく、顧客との長期的な関係性を構築することを重視します。
つまり、単に一度の問題解決を目指すだけではなく、顧客のビジネスパートナーとして共に成長を目指すことを意味します。そのため、アカウント営業では、顧客のビジネス戦略や将来的なビジョンに対しても理解を深めることが求められます。
ルート営業との違い
ルート営業は、特定の地域や顧客を定期的に訪問し、商品やサービスを売り込む営業手法です。
その目的は、既存の顧客を維持し、新たな顧客を開拓することにあります。一方、アカウント営業は特定のアカウント(顧客)に焦点を当て、長期的な関係を構築します。
ルート営業が「広く浅く」顧客を担当するのに対し、アカウント営業は「狭く深く」顧客を担当すると言えます。
これにより、アカウント営業では、顧客との深い信頼関係の構築や、そのビジネスの成長に対する影響力が高まります。
【感覚的に理解】従来の営業手法との違い
- アカウント営業は「一社を取り仕切る」、従来営業は「数撃ちゃ当たる」の営業
- アカウント営業は顧客理解により多くの時間を使う
- アカウント営業は現状の売り上げだけでなく、今後の長期的な関係性も構築する
(参考)
アカウント営業はABM(アカウントベースドマーケティング)と類似していると言われます。ABMとは端的にまとめると、成功の確率が高い顧客に絞ってターゲッティングして成果を上げるマーケティング手法です。アカウント営業では成功の確率に関わらずターゲティングを行いますが、「ターゲットの顧客数を絞って営業のリソースを集中させる」という点に関しては、ABMと類似していると言えます。
アカウント営業のステップを解説
本記事の冒頭で簡単にアカウント営業のステップを紹介しましたが、ここではより詳細に解説していきます。
STEP1:アカウント営業が必要かどうかを判断する
アカウント営業を始める前に、まず自社にとってアカウント営業が本当に必要かどうかを判断する必要があります。
アカウント営業は一部の顧客に深く注力するため、他の顧客よりも注力することが適切かどうかを見極める重要なステップです。
例)
『時間をかけてエンタープライズ(大手企業)の開拓をするのか』
それとも、
『今まで通り数を撃った方が売上拡大しそうなのか』
どちらが良いかを冷静に判断することが1つ目のSTEPになります。双方のメリットとデメリットを洗い出して、判断しましょう。
STEP2:ターゲット選定
次に、アカウント営業の対象となる「ターゲット」を選定します。
ターゲット選定の際には、顧客の「業種」「従業員数」「地域」「想定課題」など、様々な要素を考慮します。重要なのは、顧客がどのような課題を抱えていて、今後自社がその課題をどのように解決できるかのビジョンを持つことです。
ターゲットの大枠を決める際には、以下のようなステップで実施していきます。
- 獲得したい顧客像を決定する
- 特定の企業を決める(実名で)
- 特定企業の属性情報を整理
- 同条件の類似企業をリストアップする
例えば、時間をかけてエンタープライズ(大手企業)を開拓すると決めた場合
①獲得したい顧客像を決定する
「〇〇業界の従業員規模が300名程度の会社を獲得したい」というふうに考えます。
②特定の企業を決める(実名で)
次に、その顧客像に該当する企業を実名でイメージします。(例:株式会社Cone とか、こんな企業!ではなく、これくらい1社に絞り込みます。)
③特定企業の属性情報を整理
そして、実名で出した企業の条件を以下のようにまとめます
===
株式会社Cone
・業種:コンサルティング
・従業員数:101〜300名
・部署:マーケティング
・他…
④同条件の類似企業をリストアップする
③で洗い出した属性情報が同じ企業をリストアップします
以上の流れでターゲットを選定します。
STEP3:ターゲットの課題調査・仮説立て
ターゲットを選定できたら、次にそのターゲットが抱える課題を詳細に調査し、解決策の仮説を立てます。
仮説を立てるためには顧客の「ビジネスや業界のトレンド」「競争状況」「課題」などを深く理解する必要があります。
アカウント営業は長期的な関係性を構築することを念頭に、自社の価値がどのように顧客のサポーターになれるか仮説立てることが重要です。
例)
採用プラットフォームでエンジニア採用の募集をかけていた+決算資料でプロダクトの機能拡充の重要度の記載があったため、プロダクトづくりの質/スピードに課題感があるのでは?
とターゲットの課題仮説を立てる
STEP4:顧客接点創出・関係構築
顧客の課題に対する仮説が立てば、いよいよ顧客との接点を創出し、関係性を構築します。
アカウント営業において重要なのは、ただ単に商品やサービスを売るだけでなく、顧客のビジネスパートナーとして信頼関係を構築し、長期的な関係を築くことを目指すことですが、まずは接点を持つことから始めなければなりません。
新規開拓に関しての参考記事を紹介しておきます。
STEP5:アカウント戦略立案
関係構築の次のステップは、顧客の(課題解決の)ための戦略(顧客に対して行う「行動」)立案です。
自社の商品を使って何ができるかを考え、この後どのように提案を行なっていくかを考えます。これまでのSTEPで集めた情報を基に、顧客との良好な関係性を築く戦略を立案します。
アカウント戦略とは、見込み顧客が
・どのような課題があって(STEP3で立てたターゲット課題仮説)
・どのような時系列で
・どのように解決するのか
を計画に落とし込んだものです。
戦略をしっかり資料などにまとめて、提案にもっていきましょう。
STEP6:提案・クロージング
アカウント戦略が作成できたら、顧客への具体的な提案と、クロージングに移ります。
再三再四、お伝えしていますがここでのゴールは受注ではなく、見込み顧客の成果の実現です。成果の実現のために、自社→見込み顧客という話の流れではなく、自社↔見込み顧客という対話により、二社で最適な解決策を見つけるために、商談を実施しましょう。
STEP7:計画進捗確認・改善提案
最後は、受注・契約後のステップとなります。
受注後の計画進捗を確認し、必要に応じて改善提案を行います。
顧客のビジネス状況の変化や市場環境の変動に対応するための活動であり、長期的な関係性を構築するアカウント営業では重要な要素となります。
つまり、アカウント営業における受注はゴールではなく、契約後も自分が立てたアカウント戦略通りに進捗しているか、進捗していなければ(自社売上に関わらず)改善するための提案をすることが必要です。
顧客の売上が拡大すれば、クロスセル・アップセルが実現でき結果的に売上が拡大するはずです。
以上7つのSTEPがアカウント営業の流れになります。
これだけの工数をかけないといけないということは、期待される成果も大きくなるため、アカウント営業でのターゲットは必然的にエンタープライズ(大手)企業になることが多いです。
アカウント営業のポイント
アカウント営業を実施する際のポイントを3つ紹介します。
自社で売れている企業群を分析する
アカウント営業における最初のポイントは、自社で既に成功している顧客群を深く分析することです。
自社が有する強みを事実ベースで正確に理解することで、商品やサービスの顧客にとっての価値を最大化できます。
自社の強みの理解こそが、新たなターゲット顧客を選定する際の重要な基準となります。
自社顧客にインタビューして売れる理由を探る
自社の商品やサービスがなぜ売れているのか、その理由を探るために直接顧客にインタビューを行うことも有効です。
このインタビューにより、商品やサービスが顧客のどのような課題を解決しどのような価値を提供しているのか、顧客自身の視点から理解することができます。
以下のような内容を質問すると効果的です。
- なぜ契約してくれたのか
- そのとき、どんな課題があったのか
- 他の競合製品はなにを検討していたのか
- なぜ自社を選んでくれたのか
- なぜもう一度契約してくれたのか
- どこに満足してくれたのか
- 逆に、どこが不満だったのか
- など
また、顧客が自社を選んだ理由、満足度、改善点など、様々な視点からのフィードバックを得ることが可能となるため、新たなターゲット顧客へのアプローチや商品・サービスの改善の際に活かすことができます。
ターゲット課題の分析の粒度
ターゲットの課題を分析する際には、情報の粒度(細かさ)が重要となります。
粒度が大きすぎると、課題の本質を見失い、具体的な解決策を提供することが難しくなります。逆に、粒度が小さすぎると、大きなビジネスチャンスを見落とす可能性があります。
適切な粒度で課題を分析することがアカウント営業の成功に直結するため、以下のツールなどを使って推察、仮説立てすることが重要となります。
- SimilarWeb/エイチレフス
- 決算資料
- SNS・オウンドメディア
- 採用プラットフォーム
SimilarWeb/エイチレフス
ウェブサイトのトラフィック分析ツールであるSimilarWebやエイチレフスは、顧客の「ウェブサイトへのアクセス」や「広告チャネル」などを知ることができるツールです。
これらのツールを使用することで、顧客のウェブサイト訪問者の動向、訪問源、訪問ページなどを詳細に把握し、顧客のビジネス環境や顧客の課題をより深く理解することが可能です。
また、競合他社の動向を把握するうえでも役立ちます。
決算資料
企業の決算資料に記載されている情報を読み取ることで、財務状況、業績、戦略、課題など顧客の今後の戦略理解をすることが可能になります。
顧客のビジネスの強みと弱み、成長の機会とリスク、そしてそれらが自社の商品やサービスにどのように影響するかを理解することができます。
SNS・オウンドメディア
SNSやオウンドメディアは、顧客のブランドイメージや製品やサービスに対する顧客の反応、顧客の関心事などの理解に役立ちます。
顧客のニーズや課題をリアルタイムで把握しそれに対応するアカウント営業の戦略を立てることが可能です。
採用プラットフォーム
採用プラットフォームから読み取れる「どのような人材を必要としているのか」の情報は
顧客の企業文化や組織構造などを把握するうえで役立ちます。このような情報は自社の商品やサービスが顧客のどの部署やどの役職の人々に最も価値を提供できるかを理解するために重要となります。
まとめ
今回の記事を通じて、アカウント営業を理論的にかつ感覚的に解説してきました。
アカウント営業とは特定の顧客(アカウント)にフォーカスを当てることで、顧客のニーズを深く理解し、対応する商品やサービスを提供することで、顧客のパートナーとして長期的なビジネス関係を構築する営業手法です。
各企業における商品・サービスは異なるため、一概にすべての企業にアカウント営業が適しているとは言えません。アカウント営業はターゲットを絞り営業のリソースを集中させるため、従来の営業手法よりも時間や労力はかかります。しかし、アカウント営業に成功した時にはあなたの会社のビジネスを成長させる大きな力となり得ます。また、顧客との長期的な関係性を構築できるため、将来にわたりビジネスのチャンスを獲得できるでしょう。
この記事が、あなたのアカウント営業への理解と実践の手引きとなり、ビジネスの成功に貢献することを願っています。
b-pos編集部
代行・外注サービスの比較サイトb-pos(ビーポス)の編集部。b-posは、BPOサービスの比較検討時に知っておきたい情報やサービスの選び方について解説するメディアです。サービスの掲載企業の方はこちらから(https://b-pos.jp/)