タイプ別|採用オウンドメディア事例15選!すぐに真似できるポイントも紹介。
企業の採用活動において、従来の採用媒体の活用や人材紹介サービスの活用などに加えて、自社の採用オウンドメディアを活用した採用手法である「オウンドメディアリクルーティング」を行なっている企業が増えてきています。しかし、実際に採用オウンドメディアの運用に取り組もうと考えても、自由度が高い分どのような形式やコンテンツを作れば良いのかなどがわからない企業も多いと思います。
今回は、そのような企業に向けて採用オウンドメディアに対する理解はもちろん、実際にどのようなタイプの採用オウンドメディアがあるのか、またその各タイプに該当する他社のオウンドメディアにはどのような特徴や成功要因があるのかなどを徹底解説していきます。
目次
採用オウンドメディアとは
採用オウンドメディアとは「オウンドメディアリクルーティング」を目的としたオウンドメディアです。
「オウンドメディアリクルーティング」とは、社員インタビュー、実際の仕事内容、企業の取り組み、福利厚生といった内容のコンテンツを求職者に届けることで、その企業の取り組みや社風に共感したマッチ度の高い人材の獲得などを目指す採用手法です。
従来の、企業側からアプローチする手法と異なり、求職者がそのオウンドメディアに訪れ、欲しい情報に目を通した上で応募してくる手法となります。そのため、企業にとっても求職者にとってもマッチ度の高い人材や企業に出会うことができるというメリットがあります。
採用サイトとの違い
採用オウンドメディアと似たものに採用サイトが挙げられます。この記事を読んでいるユーザーの中にもあまり違いがわからない方もいるでしょう。
以下で、簡単にその2つの違いをご紹介いたします。
採用サイト | 採用オウンドメディア | |
---|---|---|
ターゲット | 求職顕在層 | 求職顕在層・求職潜在層 |
目的 | ・求人情報の提供 ・企業理解の促進 ・応募の促進 | ・企業ブランディング ・自社にマッチした人材の獲得 ・認知向上 |
提供コンテンツ | ・募集要項 ・応募方法と選考フロー ・会社概要 | ・社員インタビュー ・自社ミッションやビジョン ・カルチャーや価値観 |
採用サイトは求職顕在層に対して、応募に必要な情報や選考フロー、応募の窓口を提供することが目的になります。逆に、採用オウンドメディアは求職顕在層だけでなく、潜在層にも対して採用に関するコンテンツ以外にも提供することで中長期的に自社ブランディングや興味喚起を行い、マッチ度の高い人材の獲得や将来的な候補者の形成を行うことが目的になります。
基本的に採用サイト”と”採用オウンドメディアの運用を行うことで、ターゲットを広く拾うことが可能になり、かつマッチ度の高い人材の確保にもつながります。
採用オウンドメディアの運用に取り組むべき理由
採用オウンドメディアの運用は必ずしもする必要はありませんが、いくつか取り組むべき理由があります。以下では4つの取り組むべき理由を紹介いたします。
- 人々の仕事に対する価値観の変化
- 中長期的な採用コスト・リソースの削減
- 自社にマッチした人材の採用
- ファンの獲得を通じた求職潜在層へのアプローチ
人々の仕事に対する価値観の変化
今と昔では、人々の仕事に対する価値観が大きく変わってきているというのがあります。具体的には、従来は会社の知名度や給与などが意思決定において重要な情報として捉えられていましたが、最近は、人々の情報リテラシーが上がってきており、知名度や給与だけでなく「自分がしたい仕事か」「どんなスキルを身につけられるか」「働きやすさは担保されているか」など多角的に企業を評価する傾向が強まってきています。
それを踏まえると、求人情報だけでなく、「企業の取り組み」「各社員の1日の過ごし方」「具体的な仕事内容」といった情報も伝えることができる採用オウンドメディアの重要性が高くなっていると言えます。
参照データ:勤労者意識の変化と働き方
中長期的な採用コスト・リソースの削減
中長期的には、求人広告費や人材紹介手数料、セミナー実施に必要な人的リソースなどのコストを削減しながら採用活動できる可能性があるのも理由の一つです。
採用オウンドメディアがあれば、そこで企業は自由に発信したい内容をコンテンツとして提供することができます。広告と異なり、コンテンツは一度作ってしまえば蓄積されていくので中長期的に見たときに、コストを抑えながら採用活動を促進することが可能になります。
また、従来であれば説明会やセミナーなどを実施し、そこで求職者に対して情報を発信していく必要がありましたが、オウンドメディアがあれば、そこで情報を発信することもできます。
自社にマッチした人材の採用
採用オウンドメディアを運用すべきいちばんの理由とも言えるのが「マッチ度の高い人材の獲得」です。先述したように、採用オウンドメディアは採用サイトとは異なり、情報を伝達することが目的ではなく、自社への理解の促進や共感などが目的に当たります。そのため、オウンドメディアを見た後に応募してきた人材は、その企業に対する理解が深まり、ビジョンや社風に共感した上で応募してきているので、働き出してからのギャップが少なく、定着率も高くなります。
ファンの獲得を通じた求職潜在層へのアプローチ
オウンドメディアの強みは「コンテンツの種類において自由度が高い」というのがあります。そのため、社員インタビューや取り組みに加えて、コラム形式の面白コンテンツや他の企業の社員とのコラボ対談といったコンテンツも発信することができます。
そのような「読んでいて面白いコンテンツ」を提供することで、そのコンテンツを読みたいといったファンを獲得することができます。そして、求職顕在層だけでなく、潜在層も読者として獲得することで、将来的な人材の獲得にもつながります。
採用オウンドメディア内の主なコンテンツの種類
採用オウンドメディアを構築するコンテンツの種類について、主なものを6つご紹介いたします。もちろん先ほども言った通り、オウンドメディアは自由にコンテンツを発信できる手段でもありますので、アイデア案として以下のを捉えるようにしましょう。
自社の取り組み・風土 | サービスがどのような社会課題や企業課題を解決するのか、どんな理念を持った企業なのかについてのコンテンツなど |
社員インタビュー | 入社前後のギャップや活躍している社員のバックグランドの深掘りコンテンツなど |
実際の仕事内容や1日のスケジュール | 営業、マーケ、エンジニアなどの職種ごとの実際の仕事内容や個人にフォーカスした1日の働くスケジュールなどのコンテンツなど |
福利厚生・社内制度 | 自社の福利厚生の詳しい紹介や育児休暇を取得した社員の記事コンテンツなど |
エンタメコンテンツ | 検証企画記事やコラボ記事など興味喚起を引き起こすコンテンツなど |
決算情報 | IRなどの自社決算情報などのコンテンツ |
このように、採用に直結するような社員インタビューや実際の働き方などの採用コンテンツに加え、面白企画の記事や業界動向など、読んでいて面白いと思えるようなコンテンツも採用オウンドメディアでは発信することができます。
採用オウンドメディアのタイプ
他社の採用オウンドメディアを見たことがあるユーザーの中には「どの採用オウンドメディアも同じ」と感じたことがあるのではないでしょうか?以下では、3つのタイプに分けて採用オウンドメディアをご紹介いたします。
どのタイプの採用オウンドメディアが自社に最適かをイメージしながら読み進めてみてください。
- 総合コンテンツ型
- 採用サイト内設置型
- 他媒体活用型
総合コンテンツ型
採用コンテンツだけでなく、コラム、対談、エンタメ、決算などバラエティに富んだコンテンツで形成されるオウンドメディアです。
このタイプのメリットは、発信するコンテンツの種類に縛りがなく、ターゲットを広く拾うことができ、ファンの獲得にもつながりやすいと言ったのがあります。例えば、採用コンテンツは、その企業に応募したいと考えているユーザーや採用コンテンツに興味のあるユーザー向けとなりますが、その他のコラムや対談、企画検証といった面白コンテンツなども織り交ぜてオウンドメディアで発信することで、自社のブランディングやファンの獲得にも繋げることができます。
そのため、採用効果以外にも認知の拡大やBtoCであれば売上拡大、BtoBであればリードの獲得などにもつながる可能性があると言えます。
このように、採用目的に限らず、認知拡大、売り上げ向上、リード獲得など幅広い目的でオウンドメディアを運用したい企業におすすめです。
ただ、内製で行っていくのであれば、他の2タイプに比べてノウハウや運用リソースが必要となるのが注意点です。
採用サイト内設置型
採用サイト内にオウンドメディアへの入り口が設置されており、自社への応募を考えている・興味があるユーザーがそのままオウンドメディア内で採用コンテンツを閲覧できるタイプです。
先述の総合コンテンツ型とは異なり、採用サイトの中に採用オウンドメディアへの導線が組み込まれており、募集要項などの最低限の情報を得た上で、さらなる理解として、ユーザーが社員インタビューや1日の働き方、自社の取り組みなどを閲覧することができます。そのため、採用サイトと採用オウンドメディアの導線が整っているので、募集要項の情報と欲しい情報を採用オウンドメディアで得ることができ、かつそのまま応募することができるため、応募までの導線が総合型よりも整ったオウンドメディアと言えます。
採用目的でかつ、自社オウンドメディアを持てる程度のコストリソースの余裕やノウハウがある企業におすすめです。
他媒体活用型
noteやWantedlyといった他媒体のなかで採用オウンドメディアの運用を行うタイプです。このタイプであれば、自社でオウンドメディアを構築しなくとも、noteやWantedlyのなかでコンテンツを発信することができ、手軽にコストをかけずに始めることができます。また、フォーマットも用意されているので、それに則って制作することで、工数の削減も期待できます。さらに、noteやWantedlyはドメインパワーの強いサイトなのでSEOでも上位に表示されやすいという特徴があります。
ただ、ある程度フォーマットが決まっている分自社のオリジナリティが出しづらかったり、カスタマイズ性が低いという側面もあります。例えば、Wantedlyでは「企業の理念や社風に共感する求職者と企業をつなぐ」というコンセプトのサービスであるが故に給与などの雇用条件を採用ページに書き込むことができないという特徴があります。
他媒体活用型に関しては、コストを抑えて手軽に始めたい企業やオウンドメディアを構築するノウハウやスキルがない企業におすすめとなっております。
採用オウンドメディア事例15選
以下では、先述の3つのタイプに分け、各タイプ5つずつ実際の採用オウンドメディアをご紹介いたします。ただ、紹介するだけでなく、発信コンテンツの種類や実際に学べるポイントなどもご紹介するので、自社で採用オウンドメディアを行っていくイメージを思い浮かべながら参考にしてみてください。
総合コンテンツ型
まずは、採用コンテンツに限らず、バラエティに富んだコンテンツの発信が中心の総合コンテンツ型のオウンドメディアを運営している企業を5社紹介いたします。
トヨタイムズ(トヨタ自動車株式会社)
トヨタ自動車株式会社が運営するオウンドメディア「トヨタイムズ」はトヨタの取り組みや社員の働く様子や毎週更新の「トヨタイムズニュース」「トヨタイムズスポーツ」など豊富なコンテンツを発信しています。
コンテンツの種類 | ・社員インタビュー ・事業の取り組みや新商品情報 ・スポーツコンテンツ ・ノウハウコラム ・決算情報 |
特徴 | ・採用導線はフッター部分にのみ設置 ・自社の取り組み、ノウハウ、スポーツ、IR情報など幅広いコンテンツ設計 ・アクセスランキングを設置し、人気の記事への導線確保 |
学べるポイント
採用コンテンツに限らず、自社のノウハウやスポーツコンテンツ、コラムなど幅広い層に向けたオウンドメディアとなっているため、多くのファンの獲得を実現しています。また、毎週更新コンテンツを発信することで、定期的にオウンドメディアに訪れるきっかけ作りも欠かしていません。さらに、自動車業界を引っ張る存在として車の最新技術や未来予想図などトヨタの一員として働きたいと思えるコンテンツも発信しています。
Cyber Agent Way(株式会社サイバーエージェント)
Web広告・メディア事業、ゲーム事業などを展開しているサイバーエージェントはオウンドメディア「Cyber Agent Way」を運営しており、業界情報や社員の成長過程、IR情報など幅広いコンテンツを発信しています。
コンテンツの種類 | ・事業の取り組みや業界での役目 ・人材開発コンテンツ ・デザイナー/エンジニアコンテンツ ・決算情報 |
特徴 | ・技術の最先端な会社としてのブランディング ・幅広いコンテンツによる読者の獲得 ・ハッシュタグ検索機能の活用による高いUX |
学べるポイント
自社事業や教育体制、カルチャーの発信といった自社に関連するコンテンツに加え、AIに関する業界動向なども発信することで、どう最新技術を取り入れながら会社を成長させていくかなどのデジタルの最先端をゆく存在としてのブランディングも行っています。また、メイン事業以外にも学生との取り組みや漫画カルチャーとの関わり方などを発信することで「世間からのイメージ以外の印象付け」も行っているため、求職者がワクワクするような会社に感じられます。
サイボウズ式(サイボウズ株式会社)
サイボウズが運営するオウンドメディア「サイボウズ式」では「自社事業」「働き方や生き方」「カイシャ・組織」「家族と仕事」と大きく分けて4種類のコンテンツを発信しており、サイボウズで働くということを仕事の側面だけでなく、生活面でも発信しています。
コンテンツの種類 | ・組織やマネジメントに関するコンテンツ ・社員インタビュー ・漫画やブログコンテンツ ・働き方や家庭との付き合い方に関するコンテンツ ・事業の取り組み |
特徴 | ・サイボウズでの働き方や組織、それに関わるライフスタイルなどの発信が中心 ・文章形式だけでなく、漫画や画像を豊富に使用した飽きないコンテンツ ・サイトの左上の見やすい場所にSNSシェア用のCTA設置 ・シンプルなサイト設計によるUXの高さ |
学べるポイント
2つのポイントがあります。一つは「組織のあり方」というテーマが強い、二つ目は「UXの高さ」です。サイボウズ式では一貫して「自社の社員がどういう働き方や環境であれば幸せであるか」をテーマに、自社の組織やカルチャーの発信や逆に同様のテーマの他社の事例などを発信しています。仕事を中心ととらえるのではなく、生活の中に仕事があるという意味から「家族と仕事」というテーマで実際に働いている人の生活における仕事との向き合い方などを発信しています。これにより、コンテンツを見た求職者は多方面からサイボウズで働いた時のイメージをすることができます。また、総合型のオウンドメディアはコンテンツの数や種類が多い分、見たい記事を見つけるのが難しくなってしまっているものもあります。しかし、サイボウズ式では、大きく6つのテーマに分け、その中で特定のKWで記事を絞り込める機能を活用することでUXの高さを担保しています。
キャリアハック(エン・ジャパン株式会社)
エン・ジャパンが運営するオウンドメディア「キャリアハック」は、テック業界で働く人のためのWEBメディアというテーマで、多種多様な企業で働く人々のインタビューや他社企業のの事業への向き合い方、経営者の成功までの道のりなどを発信しています。
コンテンツの種類 | ・テック業界に関する様々な業種や役職、部署ごとのインタビューコンテンツ ・採用や組織作りに関するインタビューコンテンツ ・他社事業の取り組みに関するインタビューコンテンツ |
特徴 | ・コンテンツのほとんど全てがインタビューコンテンツ形式 ・ターゲットは、これから働く人や働いている人向け ・「人材会社」として、人と企業をつなぐ役割を果たすためのメディア |
学べるポイント
「キャリアハック」の学べる点は「間接的に働きたい」と思わせることができるコンテンツ設計になっているという点です。エンジャパンの経営理念である「人」、そして「企業」の縁を考えるというものに則ったメディア設計になっていることから「自分もそんな企業の一員として働きたい」と思わせるコンテンツになっていると感じます。人材会社だからこそ、自社の取り組みなどを発信するのではなく、他社の取り組みや働いている人のインタビューなどを取り上げることが自社が社会で果たす役割なのだ、という信念を持ってメディアを運用しているのが伝わります。このように「自社がその業界で果たすべき役割」に基づいたコンテンツ設計を行うことで「自分もその一員として働きたい」と思わせる効果を持たせることができます。
ばんぐみ(株式会社gumi)
株式会社gumiはゲーム事業、ブロックチェーン等事業などを展開しており、オウンドメディアとして「ばんぐみ」を運営しています。番組とgumiをかけたネーミングで、POPなデザインが特徴的です。
コンテンツの種類 | ・ドキュメンタリーコンテンツ(社員インタビューやゲーム制作の裏側) ・ニュースコンテンツ(制度やノウハウ) ・バラエティ(様々なエンタメコンテンツをゆるく紹介) |
特徴 | ・ゲーム会社の強みを活かしたデザインで、ワクワク要素が強い ・新入社員インタビューを通じて、どんな経験や知識がいるかを知ることができる ・コンテンツの見せ方として、インタビューワーと受け手に分けて、文章を並べることで、読み進めやすくなっている |
学べるポイント
ゲーム事業がメインであるということもあり、エンジニアなどのIT人材が中心の採用となることから、マッチ度を上げるコンテンツが豊富だと感じます。例えば、社員インタビューは新卒入社や若手社員が中心に取り上げられており、そこで業務で役立てているエンジニア言語や入社前後のギャップなどを発信しています。特にエンジニアは、会社側も求職者側もマッチ度が優先事項となってくるため、そこにズレが生じないように、インタビューコンテンツを通じて、働くイメージをより鮮明にしてもらえるようなオウンドメディア設計となっていると感じられます。IT人材を中心とした企業では、このポイントを意識したコンテンツ設計が必要になってくると言えるでしょう。
採用サイト内設置型
次に、採用サイトの中にオウンドメディアコンテンツを設置しており、そこから応募する上で必要な情報などを拾える設計となっているオウンドメディアを運営している会社を5社紹介いたします。
mercan(株式会社メルカリ)
株式会社メルカリが運営する採用オウンドメディア「mercan」は「エンジニアコンテンツ」「部署毎コンテンツ」「コーポレートコンテンツ」の大きく3つに分けたコンテンツを発信しているオウンドメディアです。
コンテンツの種類 | ・事業の取り組みや業界での役目 ・各部署や役職毎の社員インタビュー ・エンジニア特化コンテンツ |
特徴 | ・採用が難しい「エンジニア」に関しては別枠でコンテンツを設けている ・インタビューコンテンツの中で、採用ページへのCTAボタンを設置することで、記事を読んでそのまま応募という導線を確保している ・「mercari careers」という採用サイトの社員インタビューから「mercan」に飛ぶコンテンツ設計 |
学べるポイント
CTA設計が秀逸な採用オウンドメディアであると感じました。例えば、「mercan」までの動線として別で運営している採用サイト「mercari careers」のページの下部でメルカリで働く人々というコンテンツを設置しており、そこをクリックすると「mercan」に飛ぶ仕様になっています。また「mercan」内で特に採用向けのコンテンツとなる「今メルカリが一緒に働きたい仲間」という部署に対するインタビュー記事では、その部署の仕事内容ややりがいの紹介と共に文中で、その部署の各人材の募集ページへのCTAが設置されています。これにより、ただ記事を読んでページから離脱せずに、そのまま募集要項などの情報を見させる効果があると感じました。さらに、目のつくヘッダー部分に「採用サイト」へのCTAボタンを設置することで、簡単に採用サイトと採用オウンドメディアを行き来できる設計も真似できるポイントです。
NYLEARROWS(ナイル株式会社)
株式会社ナイルはBtoB企業のマーケティング支援やメディア事業などを展開しており、採用オウンドメディア「AYLEARROWS」では、「人」「事業」「組織」「カルチャー」と4つのテーマに分けたコンテンツを発信しています。
コンテンツの種類 | ・特定の社員やチームに密着したインタビューコンテンツ ・自社事業やサービスの裏側コンテンツ ・広報、採用、福利厚生などの組織コンテンツ ・社員旅行や表彰式などの社内イベントコンテンツ |
特徴 | ・すごくシンプルなコンテンツ設計 ・新卒向けだけでなく、中途向けに「転職理由」などのコンテンツも発信 ・「給与体系」など求職者が”本当に知りたいコンテンツ”を発信 |
学べるポイント
求職者のニーズを捉えたコンテンツ内容だと感じさせる採用オウンドメディアに感じました。「仕事内容」「カルチャー」「組織制度」などテーマは、そこまで他社の採用オウンドメディアと異なる点はありませんが、例えば、「ナイルの給与形態」などをこと細やかに発信しているコンテンツは、”求職者が本当に知りたい情報”を捉えた内容だという印象を受けました。採用オウンドメディアを運営しているといつの間にか「自社が発信したい情報」が先行してしまいがちですが、NYLEARROWSのように「求職者が本当に知りたい内容」という側面も常に意識したコンテンツ発信を心がけることが大切です。
フルスイング(株式会社DeNA)
IT事業を展開する株式会社DeNAが運営する採用オウンドメディア「フルスイング」では、働く仲間と働き方に特化したコンテンツ発信を行なっています。
コンテンツの種類 | ・エンジニアインタビューコンテンツ ・社内環境や制度コンテンツ ・マネジメントコンテンツ |
特徴 | ・求職者向けに特化したオウンドメディア設計 ・インターンの制作の裏側など新卒に特化したコンテンツも発信 |
学べるポイント
「DeNAで働く」そのイメージを持ってもらうことをテーマとして、社員インタビューや部署やチーム毎の仕事内容、事業やサービスと社員の関わり方などを発信しています。特に、学べるポイントとしてあげたいのは「インターンシップの裏側コンテンツ」です。これは、夏に行われる新卒向けのインターンを実際に、制作した社員を交えた裏側を発信するコンテンツです。インターンシップに参加した学生はもちろん、大学低学年のこれから就職活動を始める学生に対しても興味を持たせることのできるコンテンツに感じました。就職活動を行う大学3年生や4年生、中途向けのコンテンツだけでなく、大学低学年向けにもコンテンツを発信することで、より幅広い層への興味喚起を実現しているオウンドメディアと言えるでしょう。
Me and Honda, Career(本田技研工業株式会社)
車やバイクでお馴染みの本田技研工業株式会社が運営する採用オウンドメディア「Me and Honda, Career」は、職種毎の社員インタビューや次世代への取り組みなどを中心に発信しているオウンドメディアです。
コンテンツの種類 | ・組織やマネジメントに関するコンテンツ ・社員インタビュー ・事業の取り組みや業界での役目 ・新卒採用向けコンテンツ |
特徴 | ・Hondaが社会にどう向き合っているのか、というテーマの記事の発信が多い ・海外で働いている社員のインタビュー、オフィスツアーなど、コンテンツが豊富 ・新卒、中途、リファラル採用など対象を広く拾うコンテンツ設計 |
学べるポイント
Hondaのステートメントである「難問を愛そう。」に取り組んでいる内容を一貫して投稿しているのが大きな特徴としてあります。例えば「開発コンテンツ」では、まだ世界にないものを0から作ることに取り組んでいる社員に密着した内容を発信していたり「空飛ぶクルマ」を作るチームの記事などもあります。何かを0から作ることや、空飛ぶクルマのような皆の夢を実現するような、いわゆる難問に取り組む姿勢などを発信することで、求職者に自社のブランディングをより強く印象付ける、そんな採用オウンドメディアになっていると感じました。「自社の大切にしている理念やステートメントに共感をした社員と働きたい」と、強く思っている企業であれば、参考になる点が多いかもしれません。
freee採用サイト(フリー株式会社)
freeeは、企業のバックオフィス業務や管理業務などに対して「統合型経営プラットフォーム」の提供を行なっているBtoB企業です。そして、freeeが採用サイトで運営している採用オウンドメディアは、ブログ形式で社員インタビューやそれぞれの仕事内容などを発信しています。
コンテンツの種類 | ・新卒向け社員インタビューやインターンシップコンテンツ ・中途向け、中途入社社員インタビューコンテンツ ・社内イベントやカルチャーなどのバラエティコンテンツ |
特徴 | ・作りがシンプルで、採用サイトがあればどの企業でも真似できる形式 ・採用ページのヘッダーに同線を設置することですぐにユーザーがたどり着ける設計 |
学べるポイント
すごく作りがシンプルで、採用サイト内のヘッダーからユーザーが訪問できるという導線も効果的に感じます。特に、スモールアップ企業やベンチャー企業、中小企業などで、大規模なサイト開発など大きなコストをかけずにこれから採用オウンドメディアを運用しようと考えている企業にはいい見本として機能するのではないかと思います。コンテンツの種類も新卒・中途・自社情報と求職者が知りたい情報を的確に届けており、最近の更新日などを見ると中途向けコンテンツが充実していることから、中途採用に力を入れていることが伺えます。このように、まずは採用で力を入れていきたい対象(新卒・中途)を明確にし、その対象にコンテンツを発信し、ある程度数が揃えば、次のターゲット向けのコンテンツに力を入れていくというのも一つの運用の仕方としてあります。
他媒体活用型
自社の採用オウンドメディアを持たず、noteやWantedly内でオウンドメディアを運用している企業事例を5社ご紹介いたします。
クックパッド株式会社(note)
料理レシピのコミュニティウェブサイトを運営するクックパット株式会社は、note内で採用オウンドメディアの運用を行っています。
コンテンツの種類 | ・クックパットのデザインに関するコンテンツ「Cookpad Design Magazine」 ・社員インタビュー「クックパッドの中のこと」 ・クックパッドの技術力についてのコンテンツ「クックパッドの技術広報だより」 ・社員や組織、ビジネスの現場についてのコンテンツ「Cookpad HR Magazine」 ・ビジョンやミッションに関するコンテンツ「Cookpad Ideas」 |
特徴 | ・社外(求職者など)向けに加えて、社内向けのコンテンツも発信 ・ノウハウなど同業他社が読みたいコンテンツの充実(中途採用向け) ・社員や広報だけでなく、学生インターン、転職者が書いた記事など豊富なコンテンツ |
学べるポイント
一番の特徴は「多種多様な人を巻き込んだコンテンツ作り」に感じました。基本的に企業がオウンドメディアを運用する際のコンテンツ制作などを行うのはその企業の社員になります。しかし、クックパットのオウンドメディアは、自社社員だけでなく、インターンシップに参加した学生による「インターンコンテンツ」や、クックパットから他社に転職をした社員の「転職活動コンテンツ」など多種多様な人の視点から書かれたコンテンツが充実しているという特徴があります。このように、オウンドメディア運用に自社社員はもちろん、多くの人を巻き込みながらコンテンツを制作することで、コンテンツの種類にも幅ができ、運用もその分捗ることが伺えます。
株式会社ベーシック(note)
株式会社ベーシックはwebマーケティングツールや日程調整ツールなどBtoB企業の支援を行っているIT企業です。オンドメディアでは採用に特化したコンテンツを発信しています。
コンテンツの種類 | ・テーマを問わず発信したいことを発信する「べーシックのnote」 ・入社を決めた理由やこれからの挑戦内容「入社エントリ」 ・事業の取り組み ・自社のカルチャーや社風 |
特徴 | ・採用に特化したコンテンツを発信 ・ホームの左側に「採用サイト」へのCTAボタン設置による導線の確保 |
学べるポイント
noteの特徴でもある「ブログのような感覚」を活かし、社員それぞれが自分が伝えたいことを一人称視点で語り、そして分量などの制限も特に設けず、自由に書いているのが印象的です。また、それぞれのnoteでは、文字だけでなく、写真や図解を有効的に使用しており、読んでいていもあまり疲れる感覚や飽きる感覚を抱かないような工夫もされています。また、採用までの導線が整備されており、左側に大きく採用サイトへのCTAボタンを設置することで、採用オウンドメディアとしての機能を果たしているnoteと言えるでしょう。
森ビル株式会社(note)
デベロッパー・総合不動産会社である森ビルが運用するnoteでは、「都市の未来を考える」というテーマでコンテンツを発信しています。
コンテンツの種類 | ・社員インタビュー ・自社事業やプロジェクトコンテンツ ・YouTubeコンテンツ |
特徴 | ・自社ブランディングに特化したコンテンツ ・noteだけでなく、YouTubeコンテンツなどの視覚的な訴求も行う |
学べるポイント
このような知名度があり、事業内容もある程度求職者がイメージしているものと一致している企業ならではの、ブランディングに特化したコンテンツというのが特徴としてあります。何か事業内容などの”情報”を届けるのではなく、森ビルが大切にしている”姿勢”や個々の社員が大切にしている”想い”などを中心にコンテンツ発信を行うことで、自然と「森ビルで働きたい」と思えるようなオウンドメディアになっていると感じます。大企業であれば、知名度だけである程度求職者の母集団を形成することができるため、このようなオウンドメディアを活用して、マッチ度を高めていくことに注力するのも一つポイントだと言えるでしょう。
株式会社マネーフォワード(Wantedly)
株式会社マネーフォワードは、個人向け・法人向けに金融系のウェブサービスを提供しているBtoB企業です。Wantedlyのストーリー機能を活用し、採用オウンドメディアを運用しています。
コンテンツの種類 | ・社員インタビュー ・役員メッセージ ・新卒インタビュー ・カルチャー ・社内の様子 |
特徴 | ・採用に特化したコンテンツ設計 ・5つのテーマに分けることで、ユーザーがすぐに知りたい情報に辿り着ける設計 ・インターンコンテンツなども充実させることで、学生インターンからの採用導線も設計 |
学べるポイント
スタートアップ企業やベンチャー企業などでは、特にマッチ度や即戦力といった要素を採用で重視する傾向が強い中で、マネーフォワードのオウンドメディアでは特に学生インターンシップコンテンツが豊富だという特徴があります。これは、実際に就職活動を始める大学3年や4年向けのコンテンツとしては社員インタビューや事業内容を活用し、それ以前の大学低学年向けに実際に学生インターンシップとして働いている社員のインタビューやそのまま入社した社員のインタビューなどを充実させることで、早い段階で学生インターンとして採用し、育て、即戦力かつカルチャーが浸透した人材を採用したいという姿勢が見られます。特に、採用数、よりもマッチ度や即戦力を重視したい企業であれば、学生インターンの採用向けのコンテンツにも力を入れることもおすすめです。
株式会社Gunosy(Wantedly)
株式会社Gunosyは、消費者向けにニュースアプリ「Gunosy」を提供しているIT企業です。Wantedly内では採用コンテンツを充実させており、他にも別で「Gunosiru」という同じテーマのオウンドメディアも運用しています。
コンテンツの種類 | ・社員インタビュー ・社内イベントコンテンツ ・学生インターンコンテンツ ・自社事業やプロジェクトコンテンツ |
特徴 | ・社員インタビューなど求職者向けのコンテンツに特化 ・情報発信だけでなく、それらを通じた自社ブランディングの実施 |
学べるポイント
こちらも採用コンテンツに特化したオウンドメディア運用を行っており、新卒や中途向けだけでなく、学生向けに学生インターンから内定者になった社員のインタビューなど幅広く母集団形成を行っています。また、GunosyはWantedlyだけに限らず、別で「Gunosiru」という採用オウンドメディアの運用も行っており、複数の流入経路を確保することで、リーチできるユーザーを増やすという取り組みも行っています。例えば、自社オウンドメディアを保有しつつ、同じ内容でWantedlyでもオウンドメディアを運用することで、単純にリーチできるユーザー数を増やすという施策もおすすめかもしれません。
事例から分かる採用オウンドメディア運用の成功のコツ
以上、タイプ別に15社の採用オウンドメディアを解説した上で、簡単に以下で3つの採用オウンドメディア運用における成功のポイントをご紹介いたします。
- 運用の目的やターゲットを明確に
- 応募までの導線を忘れずに
- 中長期的に運用できる仕組みの構築
運用の目的やターゲットを明確に
採用オウンドメディアに取り掛かる際に、まずは「人材のマッチ度向上」や「潜在的な候補者の形成」といった採用目的にのみ特化したオウンドメディアの運用か、総合コンテンツ型のように、採用目的に加えて、ファンの獲得や認知度向上などの目的とした運用なのか、を明確にしましょう。その上で、ターゲットは、新卒学生、転職潜在層、消費者なのかをコンテンツごとに明確にすることで、自ずと、制作すべきコンテンツが決まってきます。
例えば「トヨタイムズ」は、採用コンテンツ以外にも、「トヨタイムズニュース」「トヨタイムズスポーツ」など生活者が楽しめるコンテンツも発信することでファンの獲得や認知の拡大にもつながっています。逆に、freeeなどが運営する採用オウンドメディアは、採用サイト内に設置されており、基本的には新卒や転職潜在層向けのコンテンツが中心となったオウンドメディアとなっています。
応募までの導線を忘れずに
”採用”オウンドメディアである以上、オウンドメディアから応募までの導線を必ず設置するようにしましょう。もちろん、総合コンテンツ型のような、採用以外の目的を含むオウンドメディア運用であれば、そこまで導線を強くする必要はありません。
しかし、採用目的で運用する場合は、ヘッダー部分に大きく応募や採用サイトへのCTAボタンを設置するなど、導線を確保するようにしましょう。それはnoteやWantedlyを活用する場合も同じです。noteであれば、今回ご紹介した株式会社basicのように画面左側に採用サイトへのCTAボタンの設置や、Wantedlyであれば自社ページ内の「Job postings」で募集することができるので、そこを充実させるようにしましょう。
中長期的に運用できる仕組みの構築
オウンドメディアの運用において「コンテンツの数や種類」は成功する上で一番重要な要素と言っても過言ではありません。よくあるのは、運用の始めたては定期的に更新することができていた企業が、時間が経つと更新が止まってしまい、訪れたユーザーに新鮮な情報を届けることができていない、なんてことがあります。そうならないためにも、運用体制や仕組みを整えるようにしましょう。
例えば、以下のような体制が挙げられます。
役割 | 業務内容 |
---|---|
メディア担当 | 採用オウンドメディアの運用における方向性/戦略の策定、データの確認・分析 |
ライター | 採用現場に近い人事担当者などが求職者の質問や他社の事例からコンテンツ企画・執筆 |
エディター | SEO観点や文章デザイン観点で編集・公開 |
運営 | 定例MTGの実施など、更新体制整備 |
また、オウンドメディア運用チームだけでは、リソース面はもちろんですが、アイデア面などで課題が生まれる場合があります。そのため「どれだけ他の社員を巻き込めるか」も重要な要素です。自社のことを発信する、という目的である以上、社員全員が当事者であり、オウンドメディアをより良いものにしていく意識が必要です。
それでも、ノウハウやリソースが足りないと感じるのであれば「オウンドメディア運用代行サービス」を活用するのも一つの手です。
以下では、おすすめのオウンドメディア運用代行サービスの選び方や比較ポイントを紹介しているので、検討している企業はぜひ、ご覧ください。
まとめ
今回は、他社の採用オウンドメディアの事例を3つのタイプに分けてご紹介いたしました。自社の目的や割けるリソース・コストを踏まえた上で、どのタイプのオウンドメディアを運用するかを明確にし、そしてどのコンテンツを作成するかを、事例などを参考にして決めましょう。
b-pos編集部
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