経理代行をフリーランスに任せるのはあり?契約書に明記するべき10の項目まで解説

「経理代行を検討しているけれど、業者ではなくフリーランスに依頼しても大丈夫?」と疑問を持つ方は多いでしょう。フリーランスへの依頼は柔軟でコストも抑えやすい一方で、契約内容や社内での準備があいまいだとトラブルに発展するリスクも大きいです。

そこで本記事では、

  • フリーランスに経理代行を依頼するメリット・注意点
  • 契約時に明記しておくべき10の重要項目
  • 安心して任せるためのチェックポイント

について、わかりやすく解説します。

フリーランスへの外注を検討している方は、ぜひ最後までご覧ください。

経理代行業者とフリーランスの違い

経理業務は経理代行業者・フリーランス・税理士事務所などの委託先があります。その中でフリーランスへの依頼を検討している企業の多くは、

  • 内製化したい
  • 外注費用をできるだけ抑えたい

の2択がほとんどでしょう。

ただし、経理代行業者とフリーランスにはさまざまな違いがあります。コストだけで判断せずに、以下の表で体制や柔軟性などさまざまな違いを確認しておきましょう。

画像を見てわかる通り、コストや柔軟性はフリーランスが優れていますが、業者の方が対応してくれる業務は多く、トラブル時のリスクも低い傾向に。

どちらを選ぶか迷ったら、

  • 安定感と体制を重視する→経理代行業者
  • コストや柔軟な対応を重視する→フリーランス

自社の業務量や求めるサポート内容に応じて、最適な依頼先を選びましょう。

料金体系・費用相場

経理代行業者とフリーランスの料金体系・費用相場は異なります。まずは、以下の表をチェックしてください。

依頼先料金体系・特徴費用相場(月額)
経理代行業者・従量課金制(仕訳数×単価)
・月額定額制
・時間単価制など

業務範囲や規模に応じて柔軟に設定。
・記帳代行:6,000~20,000円(100~250仕訳)
・部分経理代行:5~15万円
・フル経理代行:10~50万円
・時間単価:3,000~8,000円/時間
フリーランス・仕訳数
・納期
・業務内容など

柔軟な単価設定。スポットや少量依頼も対応。
・記帳代行:5,000~10,000円(フリーランス向け)
・仕訳単価:50~100円/仕訳
・月額1万円~(業務内容や量による)

経理代行業者は、業務範囲や会社規模が大きくなると、月額10万円以上の費用がかかることもありますが、フルサポートや専門性の高い業務にも対応可能です。

一方で、フリーランスは、仕訳数や納期、業務内容に応じて単価設定されることが多く、月額5,000~10,000円程度から利用できることもあり、相場は3万円〜5万円ほどです。

経理代行業者の費用相場は以下の記事で詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。

関連記事:経理代行の費用相場は?費用を抑える4つの具体策までセットで解説

依頼できる業務

依頼できる業務の幅は経理代行業者が多いです。ただし、フリーランスは柔軟に対応してくれるため、以下の表で確認してください。

依頼先依頼できる業務特徴
経理代行業者・記帳業務
・給与計算
・売掛金・買掛金管理
・支払い・振込代行
・経費精算
・請求書発行
・年末調整
・決算・申告業務
・経理業務全般を網羅
・法改正対応や専門的なアドバイスも可能
・税務申告は税理士監修が必要
フリーランス・記帳業務
・給与計算
・経費精算
・請求書発行
・入出金管理
・基本的な経理業務に限定されることが多い
・税務関連や財務業務は依頼不可のケースが多い

経理代行業者は、経理業務全般に対応していることがほとんどです。規模や業務量に応じた柔軟なサポートが可能で、法改正や専門的なアドバイスも受けられます。ただし、税務申告は税理士資格が必要なため、税理士監修のもとで対応するケースが多いです。

フリーランスは、税務関連や財務業務は依頼できない場合が多く、業務範囲が限定される点に注意が必要です。

経理代行をフリーランスに依頼するメリット

経理代行をフリーランスに依頼するメリットは主に以下の2つです。

  • 自社の方針に沿った対応をしてもらえる
  • 同じ担当者のため業務品質が変わらない

自社の方針に沿った対応をしてもらえる

フリーランスに経理代行を依頼するメリットの一つが、自社の業務方針やマニュアルに柔軟に対応してもらえる点です。

経理代行業者の場合、業者側のマニュアルやフォーマットに沿って作業を進めるのが一般的。そのため、自社独自のやり方を反映させたい場合、オプション料金が発生したり、標準外対応として費用が高くなる可能性もあります。

一方で、フリーランスの場合は依頼主との距離が近く、個別の希望やルールに合わせて業務設計してもらいやすい傾向があります。例えば、

  • 売上報告は毎週月曜日に報告
  • レシートはGoogleドライブ経由で管理

といったルールにも柔軟に対応してくれるため、現場に合った業務フローを維持しながら外注できるのが魅力です。

同じ担当者のため業務品質が変わらない

フリーランスに経理業務を依頼するメリットには、担当者が固定されることによって、業務の質が安定しやすいことも挙げられます。

経理代行業者では、チーム体制で業務を回しているケースが多く、月によって担当者が変わったり、特定の処理だけ別のスタッフが行ったりすることも。担当者が変わることで、「毎回説明が必要」「処理の質にバラつきがある」といったストレスを感じやすくなります。

その点、フリーランスは基本的に一人で継続して業務を担当してくれるため、業務の背景や細かいルールを理解した上で、継続的に一定の品質で対応をしてくれるのが特徴です。

経理は会社のお金を扱う重要業務であり、1つのミスがトラブルに発展するリスクもあります。だからこそ、「毎回同じ担当者に任せられる安心感」はメリットだと言えるでしょう。

【契約前】フリーランスへ依頼する前に確認すべき3つの項目

フリーランスへ経理業務を依頼するのであれば、契約前に以下3つの項目を必ず確認しておきましょう。

  • 責任の所在は明確にしておく
  • スキルの見極めは必須
  • データ管理体制は厳しく整える

責任の所在は明確にしておく

フリーランスに経理業務を依頼する際は、「誰が何の責任を持つのか」を契約書などで明確にしておくことが重要です。

代行業者の場合は、担当者が急に辞めても別のスタッフがカバーできる体制が整っていることが一般的。しかし、フリーランスは原則として一人で業務を担うため、病気や家庭の事情などで急に対応できなくなるリスクがあります。

急に対応できな苦なる事態に備えて、

  • 業務の一部をマニュアル化しておく
  • 重要データの引き継ぎ体制を整えておく」

自社側でも対応できるように準備は必要です。また、契約書に「緊急時の対応方針」や「納期遅延時の責任区分」を明記しておくと良いでしょう。

スキルの見極めは必須

フリーランスに依頼する場合、経費を抑えられるというメリットがある一方で、スキルや経験に大きなバラつきがあるのも事実です。特に「相場より安い人」に依頼する場合は、「本当にこの人に任せて大丈夫か?」と不安を感じることもあるでしょう。そこで、事前に以下のようなスキルの見極めポイントをチェックすることが大切です。

  • 簿記資格の有無(最低でも日商簿記2級が目安)
  • これまで対応してきた業種や企業規模(自社と近ければ適応しやすい)
  • 月次決算・年次決算、経営分析などの経験の有無

実務経験と自社業務との相性を確認することで、安心して任せられるフリーランスかどうかを見極めることができます。場合によっては、トライアル契約を行うのも一つの方法です。

データ管理体制は厳しく整える

経理業務では、売上情報・取引先の口座情報・従業員の給与データなど、機密性の高い情報を扱います。ところが、フリーランスに依頼する際に、この「情報管理の重要性」が軽視されがち。実際にセキュリティ対策が不十分なまま業務を任せて、情報漏洩などのトラブルが発生したケースもあります。

そのため、依頼前に以下の点をしっかり確認しましょう。

  • 業務データをどのように保存・管理しているか(クラウドストレージの使用有無)
  • アクセス権限の管理方法やログの記録の有無
  • ウイルス対策ソフトやパスワード管理など基本的なセキュリティ対策が講じられているか

加えて、契約書に「情報の機密保持」や「漏洩時の責任分担」などを記載することで、より安全にフリーランスに委託できるでしょう。

【契約後】トラブルを避けるためにやるべき重要事項

契約して終わりではなく、契約後もトラブルを避けるために以下3つの重要事項を確認しておきましょう。

  • 業務の丸投げはしない
  • なるべく常駐で対応してもらう
  • 業務の優先順位を明文化しておく

業務の丸投げはしない

フリーランスに経理業務を依頼したからといって、業務の全てを丸投げで済ませてしまうのは危険です。代行業者であれば「複数人でのチェック体制」「品質管理のルール」が整っていることが多いですが、フリーランスは基本的に1人で対応します。

そのため、セキュリティや業務の正確性においてリスクは業者に比べて多いでしょう

だからこそ、依頼後も自社側で確認体制を構築しましょう。たとえば、

  • 請求書の発行は月末に社内担当が最終チェック
  • 入力データは必ずクラウドで共有し、都度確認する

といった二重チェック体制を意識すると、ミスやトラブルの防止につながります。

なるべく常駐で対応してもらう

可能であれば、経理業務は社内で実施してもらうことが理想的。というのも、情報漏洩リスクの多くは、カフェや公共のWi-Fi環境など、外部の不特定多数が出入りする場所で作業を行うことに起因しています。

経理業務には、顧客情報・銀行口座・従業員の給与といった機密性の高いデータが含まれるため、漏洩してしまうと会社の信頼を落とすことに。

社内に常駐してもらえれば、そうしたリスクを大幅に減らせるうえ、業務フローを目の前で確認できることで属人化を防ぎ、透明性も高まります。万が一トラブルが起きた場合も、すぐに直接コミュニケーションが取れるため、対応のスピードと質が向上します。

業務の優先順位を明文化しておく

フリーランスの多くは、複数のクライアント案件を同時に抱えて業務を行っているのがほとんどです。そのため、依頼主の「これは急ぎでお願いしたい」という気持ちが伝わっていないと、納期の優先順位がすれ違ってしまうことも少なくありません。

特に注意したいのは、「着手しやすい業務」から先に処理されてしまうこと。依頼側からすれば急ぎの月次締めや資金繰りレポートが、後回しにされることもあり得ます。これを防ぐには、業務ごとの優先度・納期・報告方法をあらかじめ明文化しておくことが必須なのです。

たとえば、

  • 毎月10日までに○○を完了
  • 緊急時の対応基準を設定」
  • 対応遅延が発生した場合は事前に連絡を義務付ける

など、業務指示のルールを明確にしておくことで、誤解や納期遅延を防止できます。

経理代行をフリーランスへ依頼するべき企業

ここまでの内容を読んで、「結局、自社にはフリーランスと業者のどちらが向いているのだろう?」と迷っている方も多いでしょう。そこで、フリーランスに経理代行を依頼するのに向いている企業の特徴を3つ紹介します。

  • 内製化を考えている企業
  • 経理業務の費用を抑えたい企業
  • 自社である程度のマニュアルが整備されている企業

共通しているのは、「自社の業務フローを柔軟にコントロールしながら、コストを抑えて経理体制を整えたい」という企業です。

フリーランスであれば、業務の進め方を柔軟に調整できるうえ、必要な業務のみをピンポイントで依頼できるため、コストと効率のバランスを取りやすくなります。また、上記3つの項目に当てはまらない場合も、業務内容や体制次第ではフリーランスへの依頼が良い場合も。

重要なのは、自社の状況と目的に合わせて「どこまでを依頼し、どこまでを自社で担うのか」を明確にすることです。

経理業務を外注する時に明記するべき契約書10項目

経理業務をフリーランスへ外注するときは、契約書で業務範囲や責任の所在、報酬などを明確に定めておきましょう。口頭のやり取りだけでは、トラブル時に「言った・言わない」の水掛け論になりかねません。

明記するべき10の項目や詳細・注意点については以下の通りです。

上記10項目が必要な理由としては、経理業務が会社の資金管理・税務対応・信用保持に直結する重要な業務であるため。わずかな認識のズレや確認不足が、納税遅延・顧客との信頼低下・会計トラブルなど損失を招く可能性があります。

特にフリーランスとの契約では、業者のようなマニュアル化や組織的フォロー体制がない分、契約内容がすべての業務遂行の基準となるのです。

まとめ

フリーランスに経理代行を依頼することは、コストの削減や柔軟な対応といったメリットがある一方で、事前準備と契約内容の明確化が必須です。業務の性質上、認識ズレや対応ミスがトラブルにつながることもあるため、外注は慎重に進める必要があります。

契約前と契約後で以下の項目は必ず実施しましょう。

【契約前】

  • 責任の所在を契約書で明確にする
  • スキル・実績の見極め(簿記資格、業務経験など)
  • セキュリティ体制やデータ管理のチェック

【契約後】

  • 業務の丸投げをせず、自社で確認フローを持つ
  • 可能な限り社内で作業してもらう(セキュリティ対策)
  • 優先順位や納期の明文化で納品のズレを防ぐ

フリーランスを活用すれば、コストを抑えて経理業務を効率化しながら、事業成長に集中できる体制をつくることも可能です。

今後の外注方針を検討するうえで、ぜひ本記事の内容を参考にしてみてください。

b-pos編集部