経理代行の費用相場は?費用を抑える4つの具体策までセットで解説

「経理代行を検討しているけれど、どこに頼めば費用を抑えられるのか分からない」「安いところに依頼したいが、ちゃんと対応してもらえるか不安」と悩みを抱える中小企業や個人事業主の方は少なくありません。

実際、経理代行の費用は依頼先や支援内容によって異なり、選び方を間違えると追加料金が発生したり、コストに見合わないサービスに悩まされたりするケースも。

そこで本記事では、

  • 経理代行の費用相場と料金が決まる仕組み
  • 費用を抑えるための3つの具体的な対策
  • コスト削減を実現するための実践的な依頼方法

をわかりやすく解説します。

経理代行の導入を検討している方は、後悔しないためにもぜひ最後までご覧ください。

経理代行とは

経理代行とは、企業が本来自社で行うべき経理業務の一部または全部を、外部の専門業者や会計事務所に委託するサービスのことです。

業務内容としては、

  • 日々の仕訳や帳簿作成
  • 請求書の発行
  • 売掛金・買掛金の管理
  • 給与計算
  • 支払処理

などが挙げられます。中には年末調整や決算書作成など、税務に関連する業務まで対応してくれるところも。経理担当者を採用・育成する手間やコストを削減できるだけでなく、ミスのリスクや業務の属人化も防げます。

経理業務は内製と外注どちらが費用を抑えられるのか

経理業務のコストを抑えたいと考えるとき、「社内で経理担当を置くべきか、それとも外部に委託すべきか」で迷う企業は多いでしょう。

結論からいえば、業務量が多い企業は外注の方がコストを抑えられるケースが多いです。ただし、すべての企業に外注が向いているわけではなく、自社の状況に合わせた判断が必要です。

内製と外注のコストシュミレーション

ここでは、内製と外注のコストシュミレーションを2つのケースに分けて解説します。また、今回は株式会社キャスターが提供する「CASTER BIZ経理」の料金例をもとにシュミレーションをしています。

結論から言えば、外注=安いとは限らないが、条件次第で内製より合理的です。

ただし、仕訳数が少ない・業務が限定的・兼任可能な体制がある企業では、柔軟性や即応性の観点から内製の方が合っている場合もあります。つまり、どちらが「絶対に安い」という話ではなく、自社の規模・業務量・求める品質に合わせて判断することが大切です。

内製に向いている企業

内製が向いている企業の例としては、

  • 従業員数が少ない中小企業やスタートアップ
  • 月間の取引件数が400件未満
  • 確定申告や年末調整といった一時的な経理業務だけを必要とする企業

上記に当てはまる企業は、経理業務の量が限られているため、外部に委託せずとも、社内のスタッフが他の業務と兼任しながら対応できる体制を整える方が効率的でコストも抑えられます。

また、人員や予算に制限がある企業では、外注費用を捻出するよりも、既存のリソースを活用した方が柔軟性が高く、経営判断も素早く行いやすくなります。経理業務の頻度や複雑さがそれほど高くない場合は、クラウド会計ソフトなどを活用も検討すると良いでしょう。

外注が向いている企業

外注が向いている企業の例としては、

  • 年商1億円を超える中堅企業
  • 月あたりの仕訳数が1,000件以上ある
  • 日々の振込業務や入金確認、複数部署との社内調整が頻繁に発生する企業

このような企業では、経理業務のボリュームや複雑さが増すことで、社内の限られた人材だけでは対応しきれなくなり、人的ミスや処理遅延といったリスクが高まります。そのため、専門知識を持つ外部の経理代行業者に委託することで、正確かつ効率的に業務を進めることができ、結果として人件費や教育コストを抑えながら、経理の質も向上させられます。

特に振込ミスや売掛金の回収漏れといったトラブルが企業運営に影響を与える規模になると、外注先によるトリプルチェック体制(担当者→上長→代表または責任者)などの品質管理が安心になります。

【業務別】経理代行の費用相場

経理代行の費用は、依頼する業務の種類によって異なります。以下に主要な3業務の相場を紹介します。

  • 記帳業務
  • 給与計算業務
  • 決算書・法人税申告

記帳業務

記帳は、売上・経費の記録や領収書の整理、会計ソフト入力など、日常経理の基本。仕訳ミスを防ぎ、財務状況を正確に把握するために外注する企業も多いです。

記帳代行の料金は「100仕訳まで月額〇〇円」といった月額制と「仕訳数×単価=価格」といった計算で料金が決まる従量制の2種類あり、1仕訳あたりの費用相場は50円~100円程度です。

月間仕訳数月額料金の目安
~100件約10,000円
101〜200件約15,000円
201〜300件約20,000円
301〜400件約25,000円
401件〜約30,000円

給与計算業務

給与計算は、勤務時間や控除の確認、社会保険料の対応など多岐にわたり、ミスが許されない業務。アウトソーシングすれば、期日通りの正確な支払いが可能になります。費用は従業員数に応じて変動しますが、15,000円〜100,000円程度が相場です。

従業員数月額料金の目安
10名約15,000円
50名約50,000円
100名約100,000円

代行業者によっては、基本料金や初期設定費用がかかったりオプションの範囲が異なったりするケースもあるため、注意が必要です。なお、依頼するボリュームが多くなるほど従業員1人あたりの給与計算の料金が割安になるサービスもあります。

決算書・法人税申告

決算書作成は企業の財務状況を示す重要な業務で、収益性や財務健全性、キャッシュフローなどを評価するための基礎情報を提供します。一方、法人税申告は企業の所得と税負担を正確に算出し、法令に従って申告・納付を行う手続きです。

項目費用相場
決算書作成約5万円〜15万円
法人税申告書作成約5万円〜10万円
消費税・地方税の申告約2万円〜5万円
年次決算サポート一式約10万円〜20万円
法定調書の作成・提出約5万円〜10万円
賠償責任試算申告書の作成約5万円〜10万円

決算書・法人税申告を含めた決算代行の費用相場は5万円~20万円程度です。加えて法定調書・賠償試算申告書などの対応も依頼した場合、10万円~20万円程度上乗せされるケースもあります。

【企業規模・ニーズ別】経理代行の費用相場

経理代行を検討する際、その目的と依頼したい内容によって費用相場も変わります。特に企業の規模(従業員数)によってニーズは大きく異なります。それぞれのケースにおける相場を見ていきましょう。

まずは特定業務をアウトソースしたい(従業員数:小)

少人数企業・スタートアップ企業などで、まずは経理業務のなかの特定業務をアウトソーシングしたい場合、おすすめの依頼内容・依頼先と費用相場は以下のとおりです。

依頼目的経理業務の一部を外部に委託し、主要業務に集中したい
おすすめの依頼内容給与計算、決算書作成などの特定業務
月額費用の相場約5万円〜10万円
おすすめの依頼先・フリーランス
・アウトソーシング会社(事務代行サービス)
・税理士事務所

毎月の給与計算や決算書作成など、専門知識を要する業務をアウトソースするのが一般的です。

費用は月額5万~10万円程度が目安とされていますが、実際の金額は業務の内容・量によって変動します。

中長期的に丸っと経理業務をアウトソースしたい(従業員数:中)

中小企業で、中長期的に経理業務全体をアウトソースしたい場合、おすすめの依頼内容・依頼先と費用相場は以下のとおりです。

依頼目的経理業務全体を外部に委託し、業務効率化とコスト削減を実現したい
おすすめの依頼内容記帳業務から給与計算、決算書作成、法人税申告まで一連の経理業務
月額費用の相場約20万円〜100万円
おすすめの依頼先・経理代行会社
・会計士事務所
・中小企業に対応できる税理士事務所(税理士法人)

中規模企業では、経理部門全体を外部に委託して、経理業務の効率化やコスト削減を図るケースが少なくありません。費用は業務範囲や内容、会社の規模などに左右されますが、一般的には数十万円から数百万円程度となります。

経理部と連携をとって膨大な量の経理業務をアウトソースしたい(従業員数:大)

自社の経理部と連携して膨大な量の経理業務をアウトソースしたい場合、おすすめの依頼内容・依頼先と費用相場は以下のとおりです。

依頼目的経理部門と連携し、膨大な経理業務を外部に委託したい
おすすめの依頼内容経理全般の専門的な業務
月額費用の相場数百万円~数千万円
おすすめの依頼先・経理代行会社
・会計事務所や税理士事務所などをグループ内にもつ企業・法人

大企業では、膨大な経理業務をアウトソースするニーズがあり、業務の一部だけでなく、専門的な業務全体を外部に委託するケースも。これにより経理部門は戦略的な業務に注力できる一方で、依頼範囲や企業規模に応じて数百万円から数千万円に及ぶ外注費がかかることもあります。

格安経理代行を選ぶ前に知っておきたいこと

経理代行の費用を抑えるために、格安経理代行の利用を検討しているケースも多いでしょう。もちろん、格安経理代行を選択するのも1つの手段ですが、トラブルが起きやすいことも理解しておきましょう。

  • 依頼された業務を下請に回すケース
  • 業務が低品質でお金の流れが見えない
  • 税理士法違反に該当する場合がある

依頼された業務を下請に回すケース

格安の経理代行業者の中には、受託した経理業務をさらに外部の下請け業者に委託して処理しているケースがあります。一見するとコスト削減に繋がっているように見えるかもしれませんが、実はリスクも大きいのです。

なぜなら、経理業務は従業員の給与、取引先への支払い、売上の詳細といった機密性の高い情報を扱うからです。こうした情報が不特定の下請け企業に流れることで、情報漏洩や不正使用といった問題に発展する可能性は自然と高くなります。

データの取り扱いルールが曖昧な業者は、情報がどこまで共有されているか把握できず、トラブル発生時の責任の所在も不明瞭になりがち。経理代行を依頼する際は必ず「業務はすべて社内で処理しているのか」「誰が実際に対応するのか」といった体制を確認し、自社の情報が第三者に渡らない仕組みになっているかをチェックしましょう。

業務が低品質でお金の流れが見えない

格安経理代行サービスの中には、業務報告や会計レポートの質が極端に低く、自社のお金が「どこに」「どう使われているか」が見えなくなるという問題が発生することがあります。

たとえば、費目の分類が雑であったり、明細に具体的な内容が記載されていなかったりすると、経費の使い道や支出の妥当性を判断する材料が不足し、経営者が正しい判断を下せなくなります。

最悪なケースは、万が一社内で着服や不正が行われていたとしても、経理報告が粗雑であるために発見が遅れ、損失が大きくなるリスクがあるという点です。実際、社員による横領は中小企業で意外と多く、その兆候を見逃すケースは珍しくありません。

格安サービスを選ぶ場合には「報告の内容が具体的であるか」「お金の流れを可視化できる帳票やレポートが提供されるか」といった、情報の透明性と精度にも十分に注意しましょう。

税理士法違反に該当する場合がある

経理代行サービスは、基本的に記帳や請求書発行、振込業務といった実務処理を担うものであり、「税務申告書の作成」や「税務相談」は税理士資格を持つ者だけが対応できる独占業務と税理士法で定められています。

しかし、格安経理代行業者の中には、税理士資格を保有していないにもかかわらず、「確定申告対応可能」「税務署への手続きもお任せください」といった表現で違法に業務を請け負っているケースがあります。こうした業者に依頼してしまうと、最悪の場合、依頼者である企業側も共犯と見なされ、行政指導や法的責任を問われる可能性も。

「安いから」「対応が早そうだから」と安易に選んでしまうと、後々トラブルに発展することがあります。そのため、税務関係の対応を依頼する場合は、必ず在籍税理士の有無や税理士事務所との提携の有無を確認しましょう。

経理代行にかかる費用を抑える4つの具体策

経理代行に依頼しようと思っている企業のほとんどが「社内にリソースがない」という理由でしょう。しかし、代行に依頼して費用がかさむのも避けたいと同時に実現するのは簡単ではありません。

しかし、やり方次第でコストを最小限に抑えながら、精度と効率を最大化することができます。重要なのは、単に安い代行先を探すのではなく、自社の業務設計と仕組みそのものを見直すことです。ここでは以下4つの具体策を解説します。

  • 業務フローの無駄を省き、自動化・見える化を徹底
  • クラウド会計+自動連携ツールの導入で業務負担を最小化
  • 外注は「記帳」などコア業務のみに絞る
  • 単なる代行ではなく、「仕組みごと変える」視点で選ぶ

業務フローの無駄を省き、自動化・見える化を徹底

まず取り組むべきは、社内の経理業務フローの無駄を徹底的に洗い出すこと。たとえば、経費精算を紙ベースで行っていたり、同じ請求書を複数部署が二重チェックしていたりすると、それだけで処理工数が増え、外注先の作業量も膨らみます。

なので、以下図のような対策を実施しましょう。

ポイントは、誰でも処理できるように標準化し、手作業をできる限り排除すること。これにより、外注先が行う作業もシンプルになり、費用は自然と抑えられます。また、リアルタイムで数字を見える化する仕組みを導入すれば、経営者側もタイムリーに意思決定しやすくなります。

クラウド会計+自動連携ツールの導入で業務負担を最小化

経理業務の効率化とコスト削減を両立させるために、効果的なのがクラウド会計ソフトと自動連携ツールの導入です。

たとえば、「マネーフォワードクラウド」や「freee」などのクラウド型会計サービスは、銀行口座・クレジットカードなどと連携することで、日々の取引データを自動で取り込み、仕訳まで自動化してくれます。今まで人の手で行っていた入力作業が大幅に削減され、ミスのリスクも低減。

以下の図で工程を確認し、その中で依頼するべき部分も見てみましょう。

自動化できる仕組みを導入すれば、経理代行に依頼する業務は「データの確認」と「例外処理」「決算処理」などの専門的で判断が必要な業務に限定されるため、外注先の作業負担が減り、その分コストも抑えられるのです。手作業を減らし、標準化されたデジタルフローに切り替えることが、経理コストとリソースの削減が実現します。

外注は「記帳」などコア業務のみに絞る

経理業務を外注する際に意識したいのは、「とにかく全部丸投げする」という考え方ではなく、業務の優先度と専門性に応じて、外注と内製のバランスを取るということです。

たとえば、下記のように2つに分類して外注を検討します。

なお、時間はかかるもののルール通りに処理すれば完了する作業は、社内スタッフでも対応可能。クラウド会計ツールと組み合わせれば、自動化できるケースが多く、わざわざ外注する必要はありません。

一方で、社内で対応しようとすると教育コストや人件費が膨らみやすい専門性が高いコア業務だけをプロに外注するのがおすすめです。

内製と外注の境界線を明確にすることで、外注費を最小限に抑えながらも、経理業務の品質とスピードを確保することが可能になります。コスト削減とガバナンス強化を両立させるには、「何を外に出すべきか」の見極めが重要なのです。

単なる代行ではなく、「仕組みごと変える」視点で選ぶ

経理代行を単なる「業務の肩代わり」として捉える企業は多いですが、依頼を続ける限りは費用も発生します。そうではなく、「業務フローを効率化し、会社全体の生産性を上げる代行」として代行先を選ぶ視点が重要です。

事務処理にとどまらず、仕組みから改善提案してくれる代行会社は長期的に見てコストパフォーマンスが高いです。料金の安さだけでなく、「社内業務をどう変えられるか」という視点で選びましょう。

経理代行相場に関するよくある質問

ここでは、経理代行の相場に関するよくある質問をまとめています。

  • フリーランスに依頼した場合の相場は?
  • 経理業務を全て丸投げした場合の費用相場は?
  • 経理代行会社に依頼する際の注意点は?

フリーランスに依頼した場合の相場は?

フリーランスの経理担当者に依頼する場合、相場は月額3万円〜10万円前後が目安です。

業務内容によっては、記帳だけなら月2〜3万円程度で依頼できることもあります。ただし、給与計算や年末調整などの業務が含まれると、5万円以上になるケースもあります。

フリーランスは比較的安価に依頼できる反面、「対応スピードが遅い」「担当者が急に辞める」「法的責任の所在が曖昧」などのリスクも存在します。

経理業務を全て丸投げした場合の費用相場は?

経理業務を丸投げする場合の費用相場は、月額20万円〜100万円以上です。費用は従業員数や仕訳件数、業務の範囲によって変動します。

たとえば、従業員20人規模の中小企業が記帳+給与計算+決算補助を依頼する場合、月額20〜30万円程度が一般的。一方で、従業員が100名を超えるような中堅企業が、振込処理や入金管理、税理士連携まで含めて依頼する場合は、月50万円〜100万円以上の費用がかかることもあります。

なお、クラウド会計ツールとの連携や、業務の標準化が進んでいる企業ほど、コストを抑えやすくなる傾向があります。

経理代行会社に依頼する際の注意点は?

経理代行会社を選ぶ際の注意点は、

  • 誰が業務を実際に担当するか
  • 業務体制がどうなっているか」

です。とくに格安業者の場合、業務を外部の下請けに丸投げしていたり、情報管理体制が甘いケースがあります。経理は給与・取引先・売上といった極秘情報を扱う業務のため、セキュリティ体制は必須です。

また、「税務申告を代行」と謳っているのに税理士資格を持っていない業者も存在し、税理士法違反に問われるリスクもあります。料金が安くても、業務の品質やリスク管理が甘ければ、結果的に高くつく可能性があります。

まとめ

経理代行を導入する際に最も重要なのは、「料金の安さ」だけにとらわれるのではなく、自社の業務設計や体制、リソース状況に応じて必要な業務だけを適切に委託できる仕組みを整えることです。

自社のリソースを削減しつつ、コストを抑えるには、

  • 業務フローの無駄を省き、自動化・見える化を徹底
  • クラウド会計+自動連携ツールの導入で業務負担を最小化
  • 外注は「記帳」などコア業務のみに絞る
  • 単なる代行ではなく、「仕組みごと変える」視点で選ぶ

ことで、品質を保ちながらコスト削減が実現できます。また、社内ルールの見直し、情報整理といった工夫を加えるだけでも、外注先の作業量が減り、見積額は下がります。単なる「経理作業の外注」ではなく、「仕組みごと効率化する代行会社」としての視点で選べば、経理代行の費用対効果は高くなるでしょう。

b-pos編集部