オウンドメディアの立ち上げ手順!戦略設計・実行運用に分けて詳しく解説
あなたが自社のブランドをより広く深く知ってもらうための手段、それが「オウンドメディア」です。
本記事では、その立ち上げ手順を戦略設計と実行運用の二つのフェーズに分け、成功事例や実際にかかる費用、成功の秘訣といった要素を交えながら、読者一人ひとりが自身のオウンドメディアを効果的に運営していくための具体的なステップを詳細に解説します。
目次
そもそもオウンドメディアとは?
オウンドメディアとは、企業や組織が自ら運営・管理するメディアのことを指します。企業のウェブサイトやブログなどが典型的な例です。
オウンドメディアの特徴は、企業が情報を直接コントロールできる点にあります。つまり、自社のメッセージを独自の視点やスタイルで自由に発信でき、それによってブランドの価値を深化・拡散させることが可能になるのです。
オウンドメディアは、一方的な広告や宣伝ではなく、情報を提供することにより価値を提供し、顧客との信頼関係を築くためのプラットフォームとして機能します。
以下は自社のサービスをお客様に深く知ってもらうため、実際に三井住友カードが運営しているオウンドメディアです。
オウンドメディアの目的
目的は、大きく分けて二つあります。一つ目は「顧客獲得」、二つ目は「採用」です。
① 顧客獲得
オウンドメディアは、顧客獲得のための非常に強力なツールです。
具体的な製品やサービスについて詳しく情報を提供することで、消費者が購買意欲を高め、最終的には購入に至るような流れを作り出すことが可能です。
また、ブランドの理念や取り組みを伝えることで、消費者との信頼関係を築くことができます。この信頼関係は、長期的な顧客ロイヤルティを確保するうえで非常に重要です。
BtoBであれば「HRNOTE」(https://hrnote.jp/)、
BtoCであれば「北欧、暮らしの道具店」(https://hokuohkurashi.com)などの企業が上記の目的でオウンドメディアを運用しています。
② 採用
また、オウンドメディアは優れた人材の採用にも寄与します。企業のビジョンやカルチャー、働く環境などを具体的に紹介し、理想的な候補者に直接訴求することができます。具体的な職務内容や社員の声を紹介することで、候補者と企業のミスマッチを防ぐことにも繋がります。
また、これは単に採用活動を助けるだけでなく、企業ブランド全体の強化にもつながります。企業が従業員に対してどのように配慮しているか、どのような働きがいを提供しているかという情報は、現在の顧客だけでなく、将来的な顧客にとっても非常に魅力的です。
つまり、オウンドメディアは企業の「顔」とも言える存在で、企業と顧客、そして潜在的な従業員との間に強い結びつきを作り出すことができるのです。
メルカリが運営する「mercan」(https://mercan.mercari.com)や
サイバーエージェントが運営する「Cyber Agent Way」(https://www.cyberagent.co.jp/way/)などがあります。
オウンドメディアの立ち上げ手順・設計
オウンドメディアを成功させるためには、しっかりとした設計と計画が必要です。
ここでは、戦略ステップと実行ステップの2つのフェーズに分けて、オウンドメディア立ち上げの手順を解説します。
- 戦略ステップ
- 1. 目的の明確化
- 2. 運用体制の構築
- 3.目標の設定
- 4.KW設計
- 実行ステップ
- 5.サイトの構築
- 6.記事作成開始
- 7.データ分析・改善
戦略ステップ
- 1. 目的の明確化
- 2. 運用体制の構築
- 3.目標の設定
- 4.KW設計
1.目的の明確化
まずは、オウンドメディアを運営する目的を明確に定義することが大切です。目的が明確でないと、どのようなコンテンツを作成すべきか、どのような視点で読者にアプローチすべきかが曖昧になってしまいます。
目的はビジネスの成長や認知度の向上、顧客獲得や採用促進など、企業の状況や目標に応じて変わるでしょう。
例)
【課題】顧客獲得チャネルが広告依存になっているため、
【目的】オウンドメディアから自然流入の顧客を獲得し、広告コストを下げる。
2.運用体制の構築
次に、運用体制を構築します。オウンドメディアは継続的な運営が求められるため、担当者の役割分担や運用ルールを設定することが重要です。
例)
【担当者の役割】
マネージャー(鈴木)…目標管理
記事担当(田中)…記事執筆
デザイン担当(佐藤)…記事内キャプチャ等作成
【運用ルール】
1.定例MTGで、次週公開する記事を決定(全員)
2.記事執筆(記事担当者)
3.記事確認・キャプチャ作成(デザイン担当)
4.公開前確認・公開(マネージャー)
また、必要に応じて外部の専門家を巻き込むことも運用を続けるために効果的な手段になります。
3.目標の設定
具体的な目標を設定することで、運営の方向性を明確にし、達成感を得られるようにします。
目標は、小さな目標から設定していき、かつ定量的に測定可能なものが望ましいです。自分たちがコントロールしやすい順番に設定するのがコツです。
なので、まずは「記事更新数」を目標に置きましょう。
例)記事更新数…5本 / 月
それから、徐々に目標を下記のように変更していきます。
最初の3ヶ月 | その後1年 | それからずっと |
---|---|---|
記事更新数 | PV数 | 新規顧客数 |
5本 / 月 | 5000 / 月 | 8000 / 月 |
4.KW設計
戦略ステップの最後に、キーワード(KW)設計を行います。SEOに対する理解と、自社の商品やサービスについての深い理解が必要です。
適切なキーワードを選択し、それに基づいたコンテンツを作成することで、検索エンジンからの訪問者を増やすことができます。
KWの選び方の参考記事 → https://clm.seojapan.com/572
そして、KWはスプレッドシートなどにまとめましょう。
実行ステップ
- 5.サイトの構築
- 6.記事作成開始
- 7.データ分析・改善
5.サイトの構築
戦略ステップが完了したら、次に進んで実際のサイトを構築します。
デザインはブランドイメージを反映させつつ、ユーザーが容易に情報を見つけられるようにすることが重要です。
外注、内製のどちらでも構いませんが、他社の参考にしたいロールモデルなどを持っておくと外注の際でも解像度の高いものを構築できるでしょう。
こちらに成功事例をまとめた記事を紹介しておきますので他社のオウンドメディアを見てみてください(→ https://web-kanji.com/posts/owned-media-success-case)
6.記事作成開始
サイトが完成したら、記事作成を開始します。
定期的に高品質なコンテンツを投稿することで、読者からの信頼を得て、リピート訪問を促します。その際、読者のニーズを掴むために、KW検索をした際上位に表示されたサイトを参考にするのが良いでしょう
簡単なステップを紹介します。
- キーワード調査
- 構成作成
- 原稿執筆
- 公開
【1】キーワード調査
戦略ステップの「1. KW設計」でリストアップしたKWから狙うKWを選び、そのKWを調査します。
そのキーワードを実際に検索して競合記事にどのような内容を書いているかを調べたりして、そのKWで検索する人はどんなことが知りたいのかを考えます。
・実際にそのKWを検索して上位記事の内容を見てみる
・エイチレフスなどのツールを使って記事難易度などを見てみる
【2】構成作成
ここでは、記事やレポートの大枠を作ります。読者が情報を理解しやすいように内容を整理し、順序立てます。
基本的に構成は以下のようになります
1. タイトル | 健康的な食生活のための5つのヒント |
2. イントロ | 健康的な食生活の重要性と、それを保つための簡単なヒントを紹介する。 |
3. ボディ (内容) | 1: バランスの取れた食事: 各食事で炭水化物、タンパク質、脂質のバランスを保つ重要性。具体的な食品例とその摂取量についても触れる。 2: 加工食品の摂取を減らす: 加工食品がなぜ健康に悪影響を及ぼすのか、そしてそれをどのように避けるか。 3: 水分補給: 十分な水分補給の重要性と、そのための具体的な方法。 4: 定期的な食事: 食事の頻度とその健康への影響。間食の影響についても触れる。 5: 食事の質: 食材の選び方、有機食品と非有機食品の比較など。 |
4. 結論 | 健康的な食生活の重要性の再確認。 これらのヒントを日常に取り入れることで、健康的な食生活が維持できるというメッセージを強調。 |
5. CTA (要求) | 読者に向けて、今日から取り入れてみるヒントを選び、そのヒントを実行するために必要な商品の紹介、購買を促す。 |
【3】原稿執筆
このステップでは、先に作成した構成をもとに文章を書きます。ここでの重要なポイントは、キーワードを自然に組み込みつつも、読者にとって有益で興味深い内容を提供することです。
ポイントを紹介しておきますので、原稿執筆時に参考にしてみてください。
- とりあえず始める
原稿を書き始めるのは最も難しい部分であることがよくあります。完璧な文章を作ろうとすると、途中で行き詰まる可能性が高いです。まずは一度自由に思考を文章に落とし込むところから始めてみてください。 - 読者を考える
原稿を書くときは、常にあなたのターゲットとなる読者を念頭に置くことが重要です。彼らが何を求めているのか、どのような情報が有益かを考えながら書きましょう。 - 明瞭さと簡潔さ
読者が理解しやすいように、文章は明確で簡潔にすることが大切です。また、誤解を招かないよう、用語や概念を明確に説明することも重要です。 - 分割と見出し
長い文章は段落に分割し、見出しを付けることで、読者が内容を理解しやすくします。 - 自然なキーワードの使用
SEOを考慮する場合、適切なキーワードを自然に組み込むことが重要です。
※キーワードを無理に詰め込むと読み手に不自然に感じられ、SEOの観点からもマイナスとなることがあります。
【4】公開
最後に、作成した文章をオウンドメディアで公開します。
公開前には、文章が目的に合致しているか、誤字脱字がないかなどをチェックする校正作業も必要です。公開後も、読者からのフィードバックに対応するために、記事を更新したり修正したりすることもあります。
7.データ分析・改善
最後に、データ分析を行い、必要な改善を加えていきます。
訪問者の行動や反応を分析し、それに基づいてコンテンツやサイト設計を見直すことで、より効果的なオウンドメディアに成長させることができます。迅速にニーズに合わせて変化を加えられるからこそ、初期の段階から数値を追うことは大切になってきます
■ おすすめツール
オウンドメディアの効果を数値で可視化することに長けたahrefs(https://ahrefs.jp/)
検索キーワードの順位を簡単にチェックできるGRC(https://seopro.jp/grc/)
オウンドメディアの成功事例
オウンドメディアの立ち上げは容易ではありませんが、様々な企業がそれぞれ独自の手法で成功を収めています。ここでは、その中でも特に注目すべき三つの成功事例、サイボウズ式、LIG、CAREER HACKをご紹介します。
サイボウズ式
サイボウズ式は、オフィスツールを提供するサイボウズ株式会社が運営するオウンドメディアです。
同社の製品についてだけでなく、働き方改革、チーム作り、組織運営といったテーマについて幅広く取り扱い、一方的な商品紹介にとどまらずに価値を提供する内容になっています。
サイボウズ式の特徴的な点は、自社の製品を使うことで解決できる課題やその解決策を具体的な事例を交えて提供している点にあります。
これにより、読者が自社の製品に関心を持つだけでなく、一般的なビジネスの知識やスキルも向上させることができます。(https://cybozushiki.cybozu.co.jp)
LIG
LIGは、デザイン会社が運営するオウンドメディアで、デザインやクリエイティブに関する情報を発信しています。
特に若手クリエイターやデザイナーに向けた教育的な記事が多く、デザイン業界の最新情報や技術的な知識、キャリアに関する情報などを提供しています。
LIGの成功は、その特化したコンテンツと対象読者の明確さにあります。これにより、具体的なターゲットに対して深く響くコンテンツを作り出し、強いファンを獲得しています。(https://liginc.co.jp)
CAREER HACK
CAREER HACKは、エン・ジャパンが運営するキャリア情報メディアです。
キャリア形成に関する様々な情報を提供しており、転職や就職活動、スキルアップのヒントなど、働く人たちが必要とする情報が豊富に揃っています。
CAREER HACKの成功は、リアルなキャリアストーリーや具体的なアドバイスを提供することで、読者が自身のキャリア形成に活かせる価値ある情報を提供している点にあります。
また、エン・ジャパンの採用情報やサービスも紹介しており、情報提供と自社サービスの宣伝をうまく融合させています。(https://careerhack.en-japan.com)
オウンドメディアの立ち上げ〜運用で失敗するケース
オウンドメディアの立ち上げと運用は、数多くの企業で成功していますが、一方で失敗するケースも少なくありません。
ここでは、よく見られる失敗パターンを3つ取り上げ、その原因と改善策について説明します。
運用体制が構築できていない
最初の失敗例は、運用体制が整っていないケースです。
オウンドメディアは一度立ち上げれば良いというものではなく、定期的にコンテンツを更新し続ける必要があります。
しかし、担当者の役割分担が明確でなかったり、運用のルールやスケジュールが設定されていない場合、更新が滞り、結果的に訪問者の減少やSEO順位の低下を招きます。
運用体制を整えるためには、専任の担当者を設ける、外部の専門家を活用する、更新スケジュールを作成するなどの対策が必要です。
目標を最初から売上/採用指標にしている
次に、初期段階から売上や採用を直接的な目標とすることです。
オウンドメディアはあくまで中長期的な戦略であり、短期間で具体的な成果を求めるのは難しいです。すぐに結果が出ないからと言って焦り、質を落とすと、逆にブランドイメージを損なう可能性もあります。
先述の通り、初期段階では読者の反応を見ながらコンテンツの品質を上げることや、SEO対策によるアクセス向上を目指すなど、具体的で達成可能な目標を設定することが重要です。
経営者レベルがコミットしていない
最後に、経営者レベルでのコミットメントが足りないケースです。
オウンドメディアは、企業全体のブランディングやマーケティング戦略の一部となります。そのため、経営者自身が積極的に関与し、全社レベルで取り組むことが必要です。経営者がオウンドメディアに関心を持ち、必要なリソースを提供することで、長期的な視点で取り組み続けることができます。
また、経営者自身がメディアで発信することで、企業のビジョンや価値観を伝え、読者との信頼関係を深めることも可能です。
オウンドメディア立ち上げにかかる費用
オウンドメディアの立ち上げには、企業の規模や目的に応じてさまざまな費用が発生します。ここでは、主な項目ごとにその概算を解説します。
- 戦略設計費:数十万〜数百万円
- オウンドメディア制作費:数十万〜数百万円
- 記事作制作費:数万円 / 記事
戦略設計
オウンドメディアの成功には、しっかりとした戦略設計が不可欠です。
この段階では、オウンドメディアの目的の設定、ターゲットユーザーの定義、ブランドメッセージの策定、コンテンツテーマの選定、運用スケジュールの作成などが含まれます。
この作業を自社で行う場合は人件費が主な費用となりますが、専門家に依頼する場合は、プロジェクトによっては数十万円から数百万円が必要となることもあります。
オウンドメディア制作
次に、オウンドメディアのウェブサイトを制作する費用です。
デザイン、開発、ドメイン取得・ホスティング料などが含まれます。ここでも自社で行うか外注するかで大きく変わります。
自社で行う場合は人件費が主ですが、外注する場合はシンプルなサイトでも数十万円、カスタマイズが多いと数百万円に上ります。
記事制作
そして、記事の制作費用です。
記事を自社で書く場合は人件費が主な費用となりますが、外部ライターや編集者を雇う場合はその費用も考慮する必要があります。
一記事あたり数千円から数万円、あるいはそれ以上かかることもあります。
これらの費用は中長期的な視点で見れば投資となり、企業のブランド価値向上やリード獲得に結びつくことを理解することが重要です。
まとめ
本記事では、オウンドメディアの立ち上げについて解説しました。以下に要点をまとめておきます。
オウンドメディアの目的
- 顧客獲得
- 採用
オウンドメディアの立ち上げ手順・設計
- 戦略ステップ
- 1. 目的の明確化
- 2. 運用体制の構築
- 3.目標の設定
- 4.KW設計
- 実行ステップ
- 5.サイトの構築
- 6.記事作成開始
- 7.データ分析・改善
オウンドメディアの立ち上げ〜運用で失敗するケース
- 運用体制が構築できていない
- 目標を最初から売上/採用指標にしている
- 経営者レベルがコミットしていない
オウンドメディア立ち上げにかかる費用
- 戦略設計費:数十万〜数百万円
- オウンドメディア制作費:数十万〜数百万円
- 記事作制作費:数万円 / 記事
b-pos編集部
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