会社の強み、本当に伝わってる?営業戦略策定に役立つフレームワークをご紹介

「御社の強みって何ですか?」と聞かれて、スラスラ答えられますか?
商品やサービスが飽和した現代において、営業活動で成果を出すには、「競合との違い」を明確に伝えることが欠かせません。しかし、いざ自社の強みを言葉にしようとすると、
- なんとなくはあるけど、うまく言語化できない…
- 結局、どこも同じようなことを言っている気がする…
- “実績”や“対応力”くらいしか思いつかない…
そんな風に悩んだ経験がある方も多いのではないでしょうか。実は、“強み”は感覚で見つけるものではありません。論理的に絞り込んでいくことで、競合との違いがくっきりと浮かび上がってくるのです。
この記事では、営業戦略を構築する際に役立つ「4つの視点」をもとに、自社の強みを明確にする方法をわかりやすく解説します。さらに、実際の企業事例を用いながら、競合と差別化できる営業戦略の考え方もご紹介。
「なんとなくの営業」から抜け出し、「ちゃんと選ばれる営業」をしたい方は、ぜひ参考にしてみてください。
営業戦略を構成する4つの要素
自社の強みを考える際、「ウチの強みって何だろう?」とゼロから考え始めるのは、とても難しいものです。
たとえば、印刷会社がパンフレットの印刷案件を受注したい場合、ターゲットは展示会や広告を担当するマーケティング部門になることが多いでしょう。このとき求められる強みは、「印刷の正確さ」だけでなく、「見栄えの良いデザイン力」や「訴求力のあるレイアウト提案力」かもしれません。
一方で、社内で使用する伝票や帳票類の印刷案件を狙う場合、関わるのは総務部門や経理部門になります。このケースで重視されるのは、機能性やコスト面。つまり「納品スピード」や「価格の安さ」が強みになるのです。
このように、“強み”とは状況や相手によって変化する相対的なものです。そして、自社の強みを発見するためには、なんとなくの感覚ではなく、論理的に条件を絞り込んでいくプロセスが重要になります。
なぜなら、絞り込むことで初めて「誰と比べてどこが優れているのか(=競合との違い)」が明確になるからです。この“絞り込み”を行うには、営業戦略そのものを順序立てて構築する必要があります。そのために役立つのが、これからご紹介する「4つの要素」です。
- 商材の定義
- ニーズの定義
- ターゲットの明確化
- ポジショニング
この4つは、単なるチェックリストではありません。「商材 → ニーズ → ターゲット → ポジショニング」という流れを意識することで、自社の強みは論理的かつ具体的に抽出できます。
1. 商材の定義|あなたの「売っているもの」は何?
まず最初に考えるべきは、自社が提供している“商材”をどう定義するかです。たとえば、「パンフレット制作を行う企業」と一言で言っても、以下の要素を考える必要があります。
- 単なる印刷業務なのか?
- デザインまで含んだ制作なのか?
- クライアントの販売戦略にまで関わる企画支援なのか?
この定義の仕方ひとつで、商材の価値や位置づけが大きく変わります。「モノ」としてのパンフレットではなく、「売れる仕組みを作る支援」と捉えれば、提案の角度も変わってきます。
このように、まずは自分たちが売っているものは何なのかという点をしっかり定義付けすることがスタートになります。
2. ニーズの定義|それは、誰のどんな悩みを解決する?
商材を定義できたら、次は「その商材が、どんなニーズを満たしているか」を考えます。
パンフレット制作という商材が満たすことができるニーズは、単純に印刷してパンフレットを作るだけであれば「展示会で配るパンフレットが必要」というニーズになるでしょう。
しかし、仮にこの会社がパンフレットの中身にまで言及して提案するのが通常なのであれば、「新規リードを獲得したい」「営業活動をもっとスムーズに進めたい」というニーズも満たすことができます。
このように、一段深いニーズまで掘り下げると、自社が提供できる本当の価値が見えてきます。
3. ターゲットの明確化|その悩みは誰が抱えている?
次に、「そのニーズを感じているのは誰か?」を具体的に想定していきます。
先ほどの「営業活動をスムーズにしたい」というニーズを持っているのは、マーケティング部門ではなく、営業部門のマネージャーや現場の営業スタッフかもしれません。
単に「BtoBの製造業」など業界レベルで止まらず、「どの部門の、どんな役職の人か?」まで落とし込むことが重要です。ターゲットが明確になると、抱えている課題なども想像できるようになるため、商談の際にどのような返答が来るのかなども想定できるようになります。
4. ポジショニング|競合と比べて、自社はどう違う?
どのようなターゲットに営業していくかがわかると、そのような方たちが、どのような競合他社と接しているのか推測ができます。推測ができれば、競合他社と自社の違いを明確にする必要が出てきます。ここでやっと、”絞り込み”が完了し、この営業戦略において活用できる強みが抽出できるようになるわけです。
先の例で言えば、マーケティング部門の「パンフレットを配布したい」というニーズに対してアプローチしているのであれば、競合他社は印刷会社かデザイン会社と想定できます。
そうすると、価格優位性ですとか、デザインのわかりやすさなどが強みとしてアピールできるかどうかがポイントになるでしょう。
一方、「商談を効果的に進行させたい」という営業部門のニーズに対してアプローチしているのであれば、競合他社は営業研修会社や営業コンサルティング会社と想定され、打ち出すべき強みは、そのようなノウハウを持っている会社よりも自社のほうがさらにノウハウや情報を持っているということになるでしょう。
営業戦略を構成するためのフレームワーク
ここまでご紹介してきた4つの要素を整理すると、自社の“刺さる強み”を導き出す流れは以下のようになります。
商材を明確に定義する | 何を提供しているのかを再確認し、どの価値にフォーカスするかを明確にする |
その商材が満たすニーズを想定する | 顧客が求めている本質的な目的や課題を洗い出す |
そのニーズを持つターゲットを絞り込む | 担当部門レベルにまで具体化することで、より精度の高い戦略が立てれる |
競合と比較して、自社の強みを定義する | 競合の特徴を踏まえたうえで、自社ならではの優位性を言語化する |
このプロセスを実際に社内で活用しやすいように、以下のようなフレームワークを用意しました。
Googleスライド形式で作成してあるため、自社の状況にあわせて入力するだけで自社にとって最適な営業戦略の骨子を整理することができます。

大村 康雄 | 株式会社エッジコネクション 代表取締役社長
慶應義塾大学経済学部経済学科卒業後、シティバンク銀行(現SMBC信託銀行)入行。2007年、株式会社エッジコネクション創業。営業支援業を軸に、人事・財務課題にも対応するコンサルティング企業として展開。これまでに1600社以上を支援し、継続顧客割合は75%を超える。2024年7月には「24歳での創業から19期 8期連続増収 13期連続黒字を達成した黒字持続化経営の仕組み」を出版。