売らない営業がつくる“仕事の連鎖”。顧客に選ばれる「価値起点営業」とは?

「営業」と聞くと、「売り込み」を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。
私はセールスギルド株式会社の代表として、法人向けの営業支援や日本最大級の営業の大会「S1グランプリ」を運営しています。そんな「営業」を生業にしている私が、創業当初から実践してきた営業手法は、実は「売り込み」とはまったく違うものでした。それが、売らない営業、「価値起点営業」です。
私が提唱する「価値起点営業」とは、相手にとって意味のある価値を提供し、貢献することから始まる営業のあり方です。売り込まなくても、人とのつながりを大切にし、信頼を築くことで、仕事が自然に舞い込む仕組みができあがります。
「そんな夢のような話、本当にあるの?」と思われるかもしれません。しかし、私はこのアプローチを地道に続けたことで、営業や広告に費用をかけることなく、創業から5年間で5億円以上の売上を生み出すことができました。
本記事では、私が実際に取り組んできた「価値起点営業」の考え方と、明日から実践できる具体的な行動をご紹介します。営業に苦手意識がある方、営業専任者がいない経営者や起業準備中の方に、特にお読みいただきたい内容です。
目次
「価値起点営業」とは何か
営業といえば「売り込むもの」というイメージが根強くありますが、私が実践してきた営業はその逆です。この章では、「売らない営業」ともいえる“価値起点営業”の考え方と、なぜそれが今の時代に有効なのか、その背景をお伝えします。
「価値起点営業」の考え方
価値起点営業とは、「相手にとって意味のある価値」を提供することを出発点にした営業手法です。見込み顧客にひたすら売り込みをして契約を狙うのではなく、自分の知見や経験を惜しみなく提供し、信頼を築くことで、必要な時に声がかかり、自然と案件や紹介が生まれます。
「売らない」と言っても、“受け身”の意味ではありません。むしろ、自分から積極的に価値を提供する“能動的な姿勢”こそが求められます。
信頼を積み上げる営業が、なぜ効果的なのか?
今、情報や選択肢が溢れる時代。顧客は情報も選択肢もあふれる中で、自分にとって本当に価値のあるものを、自分の意思で選びたいというニーズが強まっています。そのため、一方的に押し付けられるような営業は敬遠されがちです。
一方で、信頼をベースにした人とのつながりや紹介を通じた営業は、心理的ハードルが低く、自然とビジネスが生まれやすい傾向にあります。特に、営業専任者がいないスタートアップや、起業初期のフェーズでは、「自分という存在」をブランディングし信頼を得ていくことで、コストを抑えながらも効果的な営業手段となります。
こうして信頼を積み重ねることで、やがて「話を聞いてみたい」と相談が自然と舞い込み、営業しなくても仕事が集まる状態が生まれるのです。

「価値起点営業」で信頼を築き、案件が自然に生まれる仕組み
価値起点営業の出発点は、相手への価値提供です。しかし、その前提となるのが、「この人なら信頼できる」と思ってもらえる関係性づくりです。
この章では、私自身の経験も交えながら、信頼を築き、結果として案件が自然に生まれる状態をどうつくるか、その考え方と行動のヒントをご紹介します。
まずは価値提供できる知識や経験を身に着ける
困りごとが生じたときに「まず最初に相談したい」と思ってもらうためには、何よりも「信用」と「信頼」の土台が必要です。
- 信用とは、過去の実績によって得られるもの。
- 信頼とは、これから先に対して「この人なら大丈夫」と思ってもらえること。
信用され、信頼されることで、ようやく相手の課題に対してアドバイスできる立場になれるのです。 そのためには、まず相手に価値を提供できるだけの知識と経験を身につけることが欠かせません。
まずは、自身の専門領域を徹底的に磨き上げましょう。商談相手よりも深い知見を持ち、自社の中でもっとも詳しい存在になることを目指してください。
同時に、ビジネス全般への関心と理解を広げる意識も大切です。特定の業界や分野にとどまらず、さまざまなビジネスに目を向けましょう。知らないことに出会ったときは、恥ずかしがらずに質問し、即座に学びに変える姿勢が重要です。
その「学ぶ力」と「興味を持って話を聞く姿勢」は、やがて商談のヒアリング力を高め、より深い信頼につながっていきます。
ノウハウ、情報、つながりを惜しみなく提供する
SNSやnoteでの情報発信、つながりの紹介、壁打ち相談など、提供の形は問いません。大切なのは「見返りを求めないこと」です。
私は会社員から副業、フリーランスを経て起業し、現在までの6年間で約500人と営業やキャリアの相談、壁打ちをしてきました。1時間の壁打ちで相手に何か渡せるものはないかと考え、ノウハウを出し切ってきました。
「古瀬さんに何のメリットがあって、こんなに話を聞いてくれるんですか?」とよく聞かれますが、そこで見返りを求めたことはありません。この積み重ねが「信頼できる人」という評価をつくり、気づけば仕事として返ってくるのです。
何かあれば一番に相談したいと思われる存在になる
営業の場面で、商品やサービスの説明だけをしていませんか?
顧客は「課題を解決してくれるかもしれない」という期待をもって話を聞いています。価値起点営業では、初回商談の目的は「売ること」ではなく、「意味のある価値を提供すること」です。
課題が明確なら、自社のサービスで解決できるかを探る。それが難しい場合でも、解決できそうな人や他社サービスがあれば、惜しみなく紹介します。課題がまだぼんやりしているなら、丁寧なヒアリングを通じて気づきや整理を促し、対話を価値に変えることができます。話すことで考えが整理され、「話してよかった」と思ってもらえるのです。
私自身、会社員時代に無形商材を扱っていた経験から、ヒアリングを通じて信頼を得る力を養ってきました。仮説を立てて質問を重ねることで、「なぜうちのことがそんなに分かるの?」と驚かれるようになり、経営者とも対等に話せるようになりました。
結果として、受注は「信頼の副産物」として自然に生まれます。「今すぐではないけれど、何かあれば一番に相談したい」と思ってもらえる存在になること。それが、価値起点営業のゴールです。

古瀬 貴大 | セールスギルド株式会社 代表取締役
2009年、スターティアラボ株式会社(現 クラウドサーカス株式会社)で法人営業を担当し、プレイングマネージャーとして活躍。その後、2016年にラクスル株式会社に転職し、生産管理、IS改善、CS立ち上げを手掛ける。SMBからエンタープライズ営業まで幅広く経験し、IS、FS、CS全般にわたる知識と実務経験を持つ。2020年にセールスギルド株式会社を設立。新規事業やスタートアップに対して営業コンサルや営業代行を中心とした法人営業支援を行い、特にアウトバウンド営業の0→1を得意とする。営業コミュニティセールスギルドの運営、日本最大級の営業の大会S1グランプリの代表も務める。