採用戦略とは?明日から始められる採用戦略の立て方4ステップ|事例を交えて解説

「採用戦略の立て方がわからない」
「そもそも、採用戦略って何?」
といった悩みは、企業の経営者や採用担当者の方に起きがちです。
採用戦略とは、企業において自社が求める人材の獲得を目指して策定する戦略のことです。採用戦略を立て、計画的に人材を確保することで「企業の安定的な発展」につながります。
本記事では「採用戦略の概要」と「簡単に実践できる採用戦略の立て方4ステップ」を中心に解説します。
目次
採用戦略とは?
採用戦略とは、企業において自社の求める人材の獲得を目指して策定する戦略のことです。
企業が安定して発展し続けるためには「人材」の計画的な採用が大切です。そのためには将来を見据えて採用計画を立て、具体的な戦略を策定する必要があります。
また、採用戦略では「中期経営計画」や「事業計画」といった計画も大切です。これらの会社経営において重要な計画をもとに「誰にどのようなことを伝えて入社してもらうのか」といった点を考える必要があります。
採用戦略の目的
採用戦略には、次の3つの目的があります。
- 採用効率の向上
- 早期退職やミスマッチ防止
- 認知・応募者増加
自社の状況やターゲット層を考慮して「採用手法」などの戦略を立てることで、採用効率が向上します。採用に関する効果を検証することで、不要なコストの削減にも役立ちます。
また戦略を立てる過程で「自社の強み・弱み」「自社で活躍できる人材の特徴」などを把握できます。自社にマッチする人物像が明確になることで「早期退職」や「ミスマッチ」といったリスクを減らすことができます。
加えて、採用戦略を立てた場合「市場の動向」や「求職者のニーズ」といった点を踏まえて、自社の強みを効果的にアピールできます。その結果、認知・応募者が増加するため「自社が求める人材を獲得する」という目的の達成に近づきます。
採用戦略がより重要になった背景
現在、日本において少子高齢化が進んでおり、それにともない15~64歳の生産年齢人口も減少しています。

上記のグラフからもわかるとおり、1955~1972年あたりまでの高度成長期においては、生産年齢人口が多い時代でした。工夫しなくても人材が集まるため、戦略を立てる必要性はありませんでした。
しかし1995年をピークに生産年齢人口は減少しており、2050年には5,275万人に減少するといわれています。人手不足だけでなく、各個人のキャリアニーズも多様化しているため、採用が難しくなっているのが現状です。
このような背景から、安定的な企業経営に直結する「採用戦略」の重要性が増しています。
採用戦略を駆使して成功した企業事例
採用戦略を駆使して成功した3つの企業事例をご紹介します。
トヨタ自動車株式会社

トヨタ自動車株式会社は2019年から採用改革をおこない、第二新卒・キャリアの採用を強化しました。大手企業ならではの採用課題である「トヨタで働くイメージが湧きにくい」といった点を解決するために「職場の情報発信」「オウンドメディアと連携した採用ブランディング」に積極的に取り組みました。
「トヨタの今」を発信した結果、キャリア採用比率が上昇しました。また第二新卒・キャリア採用者が企業になじみやすいように「四半期に1回研修を開催する」「同期入社でイベントを開催する」といった取り組みをおこない、採用後もサポートしています。
ソフトバンク株式会社

ソフトバンク株式会社は、常時約100ポジションを募集しています。採用手法に工夫があり「求める人材は転職顕在層・潜在層どちらにいるのか」「どの部分にコストを割くのか」といった点を明確にしてから、適した採用手法を決定します。
自社採用では「スカウト型採用」「リファラル採用」「採用イベント」を実施しており、自社を紹介する機会では「よい部分ばかりでなく、自社の実情を正しく伝える」といった点を重視しています。
また、スピーディーな採用を実現するために「その日のうちに内定を出す1day選考会」といった取り組みもおこなっています。
リクルーターは、組織ごとに担当を決めており、同じ担当者がすべての施策に関わることで「最適な採用手法を選択するための感覚が磨ける」「求める要件に変更があっても柔軟に対応できる」といったメリットがあります。
キャディ株式会社

キャディ株式会社は2017年の創業時から、多くの採用施策を打ち出して注目されています。求職者に「事業について理解してもらうこと」を目的として、最終選考の場でディスカッションをおこないます。
また採用プロセスを通じて、それぞれの求職者に合ったポジションを見極めてアサインします。エントリーしたポジションだけでなく、活躍できると判断したらポジションを柔軟に検討し、求職者に提案します。
ほかにも「会社説明会」や「ミートアップ」「代表自らが登壇するイベント」といった多様なイベントを実施しています。これらの様子を特設サイトで公開することで、母集団形成に役立てています。
明日から始められる採用戦略の立て方4ステップ
採用戦略は以下の4ステップで立てることができます。

- 採用したいターゲットを明確にする
- 自社の採用課題を明確にする
- 自社の特徴を整理する
- 採用手法とメッセージを策定する(戦術)
それぞれのステップごとに詳しく解説します。
①採用したいターゲットを明確にする

まずは、採用したいターゲットを明確にします。具体的には、以下のような項目でまとめておきましょう。
- 職種
- 年齢
- 経験
- 考え方
- 性格
職種が複数ある場合は、職種ごとに整理しておきましょう。

「企業文化」や「社風」といった部分は非常に大事です。そのため「求める人物像」といった根幹の部分は、全社統一して言語化しておきましょう。
②自社の採用課題を明確にする

採用したいターゲットを明確にしたら、自社の採用課題を明確にしましょう。
採用課題の具体例には、次のようなものがあります。
- 採用したいターゲットからの応募が少ない
- 離職率が高い
- 競合との検討で負ける
上記のような「自社の採用活動における課題」を洗い出し、深掘りして明確にしましょう。
たとえば「競合との検討で負ける」といった場合「どのような競合に負けているのか」「そもそも、本当に競合と比較・検討されたうえで負けているのか」といった点を深掘りましょう。
そうすることで、自社の採用における根本的な課題の発見につながります。これが採用戦略を立てるうえで、もっとも重要なポイントとなります。
③自社の特徴を整理する

自社の採用課題を明確にしたら、自社の特徴を整理します。具体的には、以下の表の項目ごとにまとめてみましょう。
項目 | 内容 | 具体例 |
---|---|---|
会社について | ・経営理念 ・会社沿革 ・売上規模/利益 | ・〇〇で社会に貢献する ・創業100年以上 ・売上数億円 |
事業について | ・事業内容 ・実績 ・今後の事業展開 | ・製造、販売、Webサイト制作など ・生産台数〇〇台 / 支援企業数〇〇社 ・海外事業を展開予定 |
組織について | ・メンバー(年齢・職種・男女) ・社風 ・文化 ・制度 | ・30代がメイン ・能力や実績を重視する社風 ・風通しのよい文化 ・キャリアパス制度が明確 |
採用について | ・待遇 ・職場環境 ・採用フロー | ・給与〇〇円 ・フレックスタイム制 ・最終面接は社長が担当 |
「会社について」では、自社の基本的な情報を整理しましょう。求職者がその企業の「安定性」や「成長性」を判断する項目となります。
「事業について」では、自社の具体的な事業内容を整理しましょう。求職者が「自分が取り組みたい仕事と合致しているか」「長期的に働けるか」といった内容を判断する項目になります。
「組織について」では、自社で活躍しているメンバーや社内文化について整理しましょう。求職者が「実際に入社して働く姿」や「どうキャリアアップしていくか」といったイメージに役立つ項目です。
「採用について」では、採用する場合の待遇などの情報を整理しましょう。採用に関する情報は、求職者の就職・転職活動において、早い段階で接する情報です。そのため、競合他社と比較されることが多い項目です。
上記の情報を整理し、自社の魅力や強みといったポイントを整理しましょう。
④採用手法とメッセージを策定する(戦術)

自社の特徴を整理したら、自社へのエンゲージメントが高い社員にインタビューしましょう。
ステップ③で整理したリストを見てもらい、以下の項目をインタビューしましょう。
- どの点がこの会社の魅力なのか
- いまも働き続けてくれている理由はなんなのか
- どこで自社を知ったのか
- そのとき、転職/入社のきっかけとなったコンテンツはあるのか?
上記の項目をインタビューし「自社の課題を解決できる採用戦術」を決定しましょう。
たとえばステップ②で「採用したいターゲットからの応募が少ない」といった課題を発見した場合、以下のポイントに着目します。
- ターゲットが自社を知る媒体として考えられるのはどこか
- ターゲットを採用できる採用手法はなにか
- ターゲットに刺さるメッセージはどんな内容か
採用手法を決める場合「どこでこの会社を知ったのか」から、媒体や採用手法を決定しましょう。
たとえばインタビューを通じて、社員が「〇〇転職サイトで知って入社した」といったことが判明するとします。この場合「〇〇転職サイト」に求人情報をアップすることで、高い効果が期待できます。

また求職者宛てのメッセージは「この会社のどこがよいと思ったのか」から内容を決定しましょう。インタビュー内容をもとに求職者へのメッセージを決めることで、ターゲットに刺さる内容が発信できます。
たとえばインタビューにおいて「年功序列でなく、能力や実績を重視する社風が好きで働き続けている」といった場合、その内容を求職者へのメッセージに役立てましょう。

このように「自社の望む人材」を獲得するには、自社の特徴や社員に目を向けることが大切です。戦略策定に役立て、ターゲットに向けて施策を打ちましょう。
「自社の特徴を整理する」際に使えるフレームワーク
ステップ③「自社の特徴を整理する」で使えるフレームワークは「3C分析」と「SWAT分析」の2つがあります。

3C分析は「顧客(Customer)」「競合(Competitor)」「自社(Company)」の3つの項目をもとに分析するフレームワークです。採用戦略において「顧客」は「求職者」や「採用市場」に置き換え、以下の内容を分析します。
- 求職者:求人倍率、転職顕在層の数、求職者のニーズ・価値観
- 競合:採用数、採用状況、業界におけるポジション、強み・弱み
- 自社:強み・弱み、過去の採用人数
3C分析を活用することで「自社の立ち位置の把握」や「競合他社との差別化」に役立ちます。

SWOT分析は「強み(Strength)」「弱み(Weakness)」「機会(Opportunity)」「脅威(Threat)」の4項目をもとに、自社を深く分析し理解するフレームワークです。
それぞれの項目を視覚化・言語化することで「伸ばすべき魅力」や「具体的な強み」「課題解決のためになにをすべきか」といった点が明確になります。
また4項目を掛け合わせて分析することで、さらに具体的に自社の強み・弱みが把握できます。
強み×機会 | 「機会」に自社の強みをどう活かすか |
強み×脅威 | 「脅威」を避けるために自社の強みをどう活かすか 「脅威」を避けるだけでなく、どうしたら「機会」にできるか |
弱み×機会 | 「機会」を活かすために、弱みを補強する方法はあるか |
弱み×脅威 | 自社の弱みを理解し「脅威」を避ける・最小限にする方法はあるか |
SWOT分析は自社の「内部環境」と「外部環境」を理解したうえで、適切な対策を立てることができます。
「採用手法を策定する」際に参考になる主な採用手法
ステップ④「採用手法を策定する」際に参考になる、主要な採用手法は次のとおりです。
- 転職/転職サイト
- 人材紹介/人材派遣
- リファラル
- 合同ブログ
- 合同説明会
- ヘッドハンティング/スカウト
- SNS
- マス広告
- Web広告
社員へのインタビューを参考にして、これらの採用手法・媒体から求職者へのアプローチ方法を決めましょう。
採用戦略を実行する際のポイント
採用戦略を実行する際のポイントは次の3つです。
- 経営企画もコミットする
- 採用戦略を社内で共有する
- 採用戦略は「見直す」
それぞれ解説します。
経営企画もコミットする
採用戦略を実行する際は、経営企画もコミットしましょう。
経営企画は、会社視点から「将来どのような会社にしていくか」といったビジョンを考え、ゴールに至るまでの課題を発見・解決策を提案します。採用戦略は、会社が安定して発展していくために必要な要素です。
会社の発展を妨げる「課題」として、人材確保の問題は無視できません。会社としてこの問題に取り組むために、経営企画もコミットして採用戦略を実行しましょう。
採用戦略を社内で共有する
採用戦略を実行する際は、担当者だけでなく社内全体で共有しましょう。
採用戦略を効果的に進めるには、社内での連携が必要です。「どのような採用計画を立てているのか」を社員全員が認識し、協力体制を構築することで「採用戦略を滞りなく実行できる」「必要な人材を適切な部署に配置できる」といったメリットがあります。
採用戦略は社内全体で共有し、人材面における会社の課題解決や会社そのものの成長を目指しましょう。
採用戦略は「見直す」
採用戦略の成果に応じて、施策内容を見直しましょう。
採用戦略を立案して実行したあとは、その効果を検証しながらフィードバックをおこないましょう。「半期ごと」や「年度ごと」といった区切りで採用活動の成果について「得られた成果」や「成果に結びつかなかった内容とその理由」「改善策」「新たな課題」といった点を振り返りましょう。
また応募者数や採用者数だけでなく、入社後の定着率の確認も重要です。これらを見直してPDCAを回すことで、効果的な採用ノウハウを蓄積することができます。
採用戦略の改善につなげるために、成果に応じて施策内容を見直しましょう。
まとめ
採用戦略は「採用したいターゲットを明確にする」「自社の採用課題を明確にする」といったステップで進めます。さらに自社の特徴を整理したうえで「採用手法とメッセージを策定する」ことで、狙ったターゲットに届く実践的な施策を打ち出せます。
それぞれのステップで参考になる「フレームワーク」と「採用手法」を参考にし、採用戦略を立てて業務に役立てましょう。

b-pos編集部
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