採用ブランディングとは?6つのメリットと実践方法を解説【事例付】

「そもそも採用ブランディングとは?」
「採用ブランディングのメリットとは?」
といった悩みは、経営者・採用担当者の方に起きがちです。
人材を採用するために、戦略的に企業をブランド化することを採用ブランディングといいます。採用ブランディングに取り組むことで「認知度/好意度の向上」や「応募者の増加」といった、数多くのメリットがあります。
本記事では「採用ブランディングの6つのメリット」と「実践方法」を中心に解説します。
目次
採用ブランディングとは
採用ブランディングとは、人材を採用するために戦略的に企業をブランド化することです。
たとえば、自社オウンドメディアを通じて「代表インタビュー」や「社員の紹介」といったコンテンツを発信するといった取り組みがあります。
訴求したいターゲットに応じて、効果的な施策を立案して実行します。
採用ブランディングの目的
採用ブランディングの目的は、求職者に関わるすべての人が感じる「企業の価値」や「働く場としてのイメージ」を向上させることです。
就職・転職には、家族や友人といった周りの人々からの影響も考えられます。求職者を取り巻くすべての人の「企業に対するイメージ」を向上させることで、採用の「自社への応募」や「入社後の定着」といった目的の達成に近づきます。
自社のファンを増やすことで、自社の人材獲得につながります。
採用マーケティングの一部である
採用マーケティングは、マーケティングの考え方を取り入れた採用手法のことです。マーケティングにおける「顧客」を「求職者」に置き換えて、ターゲットとします。

マーケティングのプロセスを採用活動に当てはめて「認知→興味→応募→内定→内定承諾→入社→定着」の各プロセスのターゲットに応じた施策を実行します。
採用ブランディングは、採用マーケティングで活用されるプロセスの「認知→興味」の部分を担う施策を指します。
そのため採用ブランディングは、採用マーケティングの一部といえます。
採用ブランディングが注目されている背景
採用ブランディングが注目されている2つの背景をご紹介します。
労働人口の減少
採用ブランディングが注目されている1つめの背景は「労働人口の減少」です。
近年、日本において少子高齢化が進んでおり、労働に従事できる15~64歳の生産年齢人口が減少しています。

上記のグラフからわかるとおり、1955~1972年あたりまでの高度成長期は、生産年齢人口が多い環境でした。企業に人材が集まりやすかったため、採用に関して戦略を立てる必要性が低い時代でした。
しかし生産年齢人口は1995年をピークに減少しており、2050年には2021年の9.2%減である5,275万人に減少すると予測されています。そのため、人材獲得に役立つ採用ブランディングが注目されています。
キャリアに対する価値観の多様化
2つめの背景が「キャリアに対する価値観の多様化」です。個人のキャリアニーズが多様化していることが要因となって、人材獲得が難しくなってきています。
ウォンテッドリーが求職者に対し「転職先に求めることTOP3」のアンケートを実施しました。その結果、もっとも多かったのは「給与」であり、次いで「有意義な仕事」や「勤務形態の柔軟性」といった項目が挙がりました。

このように「自分が共感できる目標を持っている」「自己実現できる」といった要素が「転職先にあるか」を重視する求職者は多いです。
「競合他社より給与を上げる」といった一辺倒な施策では人材獲得できないため、マーケティングの「顧客に合わせた施策を実行する」といった考え方を取り入れた採用ブランディングが注目されています。
採用ブランディングのメリット・効果
採用ブランディングに取り組むメリット・効果は、次の6つあります。

- 認知度/好意度の向上
- 応募者の増加
- ミスマッチの防止
- 離職率低下
- リファラル採用の加速
- 採用コストの削減
それぞれ解説します。
認知度/好意度の向上

採用ブランディングに取り組むことで、企業の認知度・好意度が向上します。
認知度・好意度の向上はブランディングの真骨頂です。ただ認知してもらうだけでなく「深い認知」を得ることが可能です。ただの認知であれば「A社を知っている」程度の状態です。しかし深く認知してもらえれば「A社は○○な会社だと知っている」といった一歩進んだ認識をしてもらえます。
深く認知してもらうことで「○○といえばこの会社」など、想起してもらいやすい状態になります。転職顕在層だけでなく潜在層にも認知してもらうことで、将来の就職・転職先の候補に加わる可能性が高まります。
応募者の増加

認知が拡大し「どんな会社なのか」がある程度知られることで、応募者が増加します。
「社員インタビュー」や「社員が働く様子」といった情報を発信することで、求職者が「入社して働くイメージ」をしやすくなります。応募に踏み込む際の後押しになるため、採用ブランディングは応募者の増加に役立ちます。
ミスマッチの防止

「どんな会社か」を求職者が理解したうえで応募しているため、ミスマッチを防止できます。
自社の「社風」や「仕事内容」といった情報を発信することで、求職者自身が「働きやすいか」「求めている要素があるか」といったポイントを応募前に判断できます。そのため「内定辞退」や「早期離職」といったリスクが低減できます。
離職率低下

自社を理解している人材が入社するため、離職率が低下します。
採用ブランディングで発信している「企業理念」や「企業文化」に共感する人材が集まるため、離職する可能性が低くなります。
また企業のブランド力が向上すれば、働く社員のモチベーションアップにもつながります。その結果「働き続けたい職場」として認識されるため、社員の離職率が低下します。
リファラル採用の加速

「自社への好意度が高い」「ブランディングで伝えているコンセプトを理解できている」といった社員が多いため、リファラル採用が加速します。
社員と似た人材の紹介が期待できるため、自社へ好意度が高く定着する人材が確保できる可能性があります。
採用コストの削減

採用ブランディングで企業イメージを向上させることで、求人広告費をはじめとした採用コストが削減できます。
採用ブランディングには、サイト制作費などの一時的なコストがかかります。しかし「コストをかけなくても勝手に応募が来る状態」や「人材が離職しない状態」が作れるため、採用コストが下がる好循環が生まれます。
そのため長期的な視点で見ると、採用にかかわる費用や時間といったコストを減らすことができます。
採用ブランディングに成功した企業事例
採用ブランディングに成功した3社の事例をご紹介します。
株式会社リクルート

株式会社リクルートは「圧倒的当事者意識」や「君はどうしたい?」といった、組織文化を形作る言葉が有名な企業です。経営者を目指す人材や優秀な人材の獲得に成功しており、独立・企業比率も13%となっています。
自社で運営するオウンドメディアでは「企業文化」や「事業」「社員インタビュー」といった情報を発信しています。TwitterやInstagramといったSNSも併せて活用し、情報拡散に役立てています。
またホームページでは「数字でみるリクルート」という資料を配信しており「従業員属性」や「キャリア制度」「オフィス出社率」といったデータを事細かに公表しています。
参考:株式会社リクルート
ソフトバンク株式会社

ソフトバンク株式会社は、新領域における「複数の成長事業を具体化できる人材獲得」を目的として、2017年から中途採用を再スタートしています。
採用に関する情報を自社のオウンドメディアに集約させ、採用ブランディングをおこなっています。「エンジニアの社員のインタビュー」や「ダイバーシティ推進のコンテンツ」といった内容を強化して発信しています。
参考:BizReach withHR|【イベントレポート】日本の情報革命を起こし続ける、ソフトバンクの人材戦略
ヤフー株式会社

ヤフー株式会社は、採用ブランディングを高めるために「あらゆる手段で発信を増やすこと」を重視しています
自社のホームページやオウンドメディア、SNS、Web広告といった幅広い手段で「新たな制度や働き方の導入に関する情報」や「イベントの実施レポート」といった情報を発信しています。
数年後に「応募のアクションをしてもらうこと」を目的として、中長期的にアプローチしています。
参考:BizReach withHR|【イベントレポート】未来を見据え変化し続ける、ヤフーの採用戦略
採用ブランディングの進め方
採用ブランディングは、次のステップで進めます。

- 自社の特徴を整理する
- ペルソナを設定する
- コンセプトを決める
- 発信内容を決める
- 発信手段を決める
ステップごとに解説します。
①自社の特徴を整理する

まずは、自社の特徴を整理します。具体的には、以下の項目を活用して整理しましょう。
項目 | 内容 | 具体例 |
---|---|---|
会社について | ・経営理念 ・会社沿革 ・売上規模/利益 | ・〇〇を社会に提供する ・創業20年以上 ・売上〇〇億円 |
事業について | ・事業内容 ・実績 ・今後の事業展開 | ・小売、ソフトウェア開発、製造など ・〇〇社以上の導入実績 ・〇〇事業を展開予定 |
組織について | ・メンバー(年齢・職種・男女) ・社風 ・文化 ・制度 | ・30代がメイン ・協調性を重視する社風 ・社内コミュニケーションを大切にする文化 ・評価基準が明確 |
採用について | ・待遇 ・職場環境 ・採用フロー | ・給与〇〇円 ・時短勤務可能 ・最終面接は経営層が担当 |
②ペルソナを設定する

自社の特徴を整理したら、採用ブランディングで狙いたいターゲットを設定します。ターゲットは、以下の項目を用いて明確に言語化・定義します。
項目 | 具体例 |
---|---|
職種 | システムエンジニア |
年齢 | 25~30歳 |
経験 | システムエンジニアを3年以上経験している |
考え方 | ITスペシャリストを目指しており、現場で仕事を続けたい |
性格 | 慎重で考えることが好き |
職種が複数ある場合、職種ごとに上記の項目を設定しましょう。
また、文化や社風は非常に大事な要素です。そのため「求める人物像」といった根幹部分は、全社統一で言語化しておきましょう。
ペルソナの重要性や、設定方法については以下の記事で解説しています。ペルソナ作成の際に、参考にしてみてください。
③コンセプトを決める

ターゲットを設定したら、自社のコンセプトを決めましょう。
採用候補者や社員に対して「自社はこんな会社だ」といったコンセプトを作成します。これが社内外に伝わり続けることで、先述した「採用ブランディングの6つのメリット・効果」を享受することができます。
コンセプトは「自社が求める人材の共感が得られる」「自社の価値や魅力を取り入れる」といったポイントを意識して作成します。たとえば「誰もが経営者意識を持って働く(ような会社)」「社員に全力で投資する(会社)」というようなコンセプトを決めましょう。
④発信内容を決める

コンセプトが決定したら、その内容に応じた発信内容を決めましょう。
たとえば「誰もが経営者意識を持って働く(ような会社)」というコンセプトの場合、以下のように発信内容を考えていきましょう。
コンセプトからの想起 | 訴求できる内容 | 発信内容(コンテンツ) |
---|---|---|
・経営者意識を持っている人とは? ・社内にどんなメンバーがいるか? | 経営を経験したメンバーが多い | メンバー紹介 |
経営者意識が発揮される場面とは? | 新規事業立ち上げが1年に1度ある。 そこでは1人ひとりが経営者の仕事をする。 | これまで立ち上げた新規事業ストーリー |
どんなメンバーが評価されるか? | 「1つのスキル」より 「横断的なスキル」を持つ人 | 評価制度の紹介 |
上記のように、コンセプトに応じた発信内容(コンテンツ案)を出していきましょう。
⑤発信手段を決める

発信内容が決定したら、発信する手段を決めましょう。コンテンツを発信する手段には、以下のようなものがあります。
手段 | 媒体 | 特徴 |
---|---|---|
採用オウンドメディア | – | ・コンテンツを蓄積できる ・発信できる情報の自由度が高い ・サイト制作費が必要 |
SNS | ・Twitter ・Instagram ・YouTube | ・無料で利用できる ・拡散性が高い ・継続して更新する必要がある |
他プラットフォーム | ・Wantedly ・note | ・手軽に始められる ・採用活動と連携できるプラットフォームもある ・他社との差別化には工夫が必要 |
それぞれの手段を解説します。
採用オウンドメディア
採用オウンドメディアは「採用に関する情報」や「社員インタビュー」といった幅広い情報を伝えられる場です。掲載できるコンテンツの自由度が高いため、採用サイトや求人広告では伝えきれない自社の魅力を伝えられます。
採用オウンドメディアは、カテゴリー別に情報を蓄積できます。情報が埋もれがちなSNSと異なり、オウンドメディアにターゲットが訪れれば、過去にアップされたものも含めてコンテンツが閲覧される可能性が高いです。
オウンドメディアのサイト制作費が必要となります。
SNS
TwitterやInstagram、YouTubeといったSNSも発信手段として有効です。多くの人が日常的に利用しており、拡散力が高いのが特徴です。媒体に応じてコンテンツを制作することで、それぞれのユーザーに多く閲覧してもらえます。
またユーザーと個別にコミュニケーションが取れるため、信頼関係を構築することができます。
一方で「更新頻度が低いとほかの情報に埋もれてしまう」「運用ノウハウが必要」といったデメリットもあります。基本的には無料で利用できますが「コンテンツ制作」や「運用」にリソースが必要になる点に注意しましょう。
他プラットフォーム
Wantedlyやnoteといったプラットフォームを活用する方法もあります。フォーマットに沿って入力することで、簡単にコンテンツを発信できます。
Wantedlyに関しては「求人掲載」や「ダイレクトスカウト」といった採用活動もできるため、コンテンツをそのまま採用に活用できます。
手軽に始められる一方で、採用オウンドメディアと比べると「掲載できるコンテンツ」や「ページデザイン」などの自由度は高くありません。そのため、他社との差別化には工夫が必要です。
採用ブランディングに取り組む際の注意点
採用マーケティングに取り組む際の注意点は、次の4つです。
- 経営層のコミットが必要
- 全社員の理解と浸透が必要
- 成果がでるまで時間がかかる
- 発信コストがかかる
それぞれ解説します。
経営層のコミットが必要
採用ブランディングに取り組む際は、経営層のコミットが必要です。
採用担当者だけでなく経営層が関わることで「経営層が欲しい人材」と「採用ブランディングでターゲットにする人材」のズレをなくすことができます。
また採用ブランディングは、成果が出るまで時間がかかります。長期的な計画を立てて成果を出すためには、経営層の理解が不可欠です。
全社員の理解と浸透が必要
効果的な採用ブランディングには、社員の協力が必要です。そのため、全社員の理解と浸透が必要です。
たとえば採用ブランディングの「発信内容」と「実際の現場」に相違があった場合、効果は十分に発揮されません。「発信内容に魅力を感じて入社した社員が早期離職する」「企業の信頼度が落ちる」といったリスクもあります。
採用ブランディングは、全社員が当事者意識を持って取り組む必要があります。「認識」と「価値観」を統一して効果的なブランディングにつなげるためには、全社員の理解・浸透が欠かせません。
成果が出るまで時間がかかる
採用ブランディングを始める際は、成果が出るまで時間がかかることを認識しておきましょう。
「企業の認知度向上」や「ブランドイメージの浸透」といった効果は目に見えづらいです。加えて「人材の獲得」は、採用市場の影響も受けます。そのため成果が出るまで2~3年はかかると想定し、長期的な計画を立てて取り組みましょう。
発信コストがかかる
採用ブランディングには、発信コストがかかる点に注意しましょう。
採用ブランディングに役立つ情報を発信する手段はさまざまです。しかし、いずれの手段も発信し続ける必要があるため、発信コストが継続的にかかります。
たとえば採用オウンドメディアであれば、記事コンテンツを継続して制作する必要があります。オウンドメディアに掲載されている情報が古い場合、読者にネガティブなイメージを与えるため、ブランディングに悪影響を及ぼします。
そのため「コンテンツ制作」や「運用」といった発信コストがかかる点を理解したうえで、採用ブランディングに取り組みましょう。
まとめ
採用ブランディングとは「人材を採用するために戦略的に企業をブランド化すること」です。自社の特徴やターゲット、コンセプトをもとに「発信内容・手段」を決めることで、採用に効果的なブランディングを実施することができます。
6つのメリットや実践方法を参考にして、採用ブランディング対する理解を深めましょう。

b-pos編集部
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