営業戦略の立て方を解説!すぐに真似して実践できる方法と具体例も紹介

営業戦略という言葉だけを見ると、一見難しそうに感じますが、適切な営業戦略を立てることは、営業チームの方向性を揃えたり、業績を向上させる上で非常に有効な手段です。
本記事では、
「効率的な営業をするためにはどうすればいいだろう?」
「もっと営業成績を上げたい!」
そんな悩みを持つ方に営業戦略の立て方をわかりやすく解説します。
そもそも営業戦略とは?
営業戦略とは、ビジネスの目標達成に向けて「営業活動全体をどのように進めていくかの長期的な計画」のことを指します。
企業のビジョンや目標、ターゲット顧客、そして競争環境等を考慮に入れて策定され、全体の方向性やアプローチを決定します。
営業戦術との違い
営業戦術との営業戦略と同様に耳にする言葉に営業戦術があります。
この2つの大きな違いは、商品(サービス)を
戦略は「だれ」に売るのか、一方で戦術は「どうやって」売るのかです。
例として、経営コンサルティングにおける営業戦略と営業戦術は以下の通りです。
営業戦略 | 中小企業をターゲットに、新規顧客を獲得する |
営業戦術 | 商工会議所に入り、直接アプローチをする |
営業戦略は全体の方向性を示す重要なもの「指針」です。対して営業戦術は、戦略をより詳細に実行できる粒度まで落とした「行動」や「施策」という感覚に近いもになります。
営業戦略とは実際どんなものか
『営業戦略とは「だれ」に売るのかである』と前述してきましたが、営業戦略は「自社の課題」と「目的」を基に「だれ」に売るのかを決定します。具体的には以下の流れで状況整理して戦略・戦術を決定していきます。
- 自社の課題はなにか?
- それに対応して営業戦略を立てる目的は?
- 目的を達成するためにターゲットをどこに設定するのか?
- ターゲットに応じた戦略は?
先ほどの経営コンサルティングが営業戦略を見直す場合を想定しましょう。
自社の課題 | 中小企業を相手にした営業では利益率が悪い |
目的 | 利益率を向上させる(たとえ、顧客数が減ったとしても) |
ターゲット | これまで:中小企業 → これから:大手企業 |
戦術 | ・既存顧客の大手企業からの紹介 ・大手企業開拓に強い、営業代理店の活用 |
上記のように、営業戦略を立てていきます。ざっくりと見ていきましたが、次はより具体的に営業戦略の立て方を解説していきます。
営業戦略の立て方
営業戦略を立てる際には、一連のステップを踏むことでより簡単に立てることができます。営業戦略を立てるための「4ステップ」を紹介します。
STEP1:自社の課題を特定する
まずは自社の課題は何なのかを考えます。例えば
- 目標に対して新規獲得顧客数が足りていない
- 受注数は足りているが、受注単価が不足している
- 売上目標を達成できる月と達成できない月がある
次にその課題を「ブレイクダウン」つまり細分化して、本当の課題はなんなのかを考えます。
- 目標に対して新規顧客獲得数が足りていない
- 受注率はそこまで悪くないので、商談数が足りていない
- アプローチするターゲットが悪く、商談化率が悪い
- 受注率はそこまで悪くないので、商談数が足りていない
みたいな要領で、課題を分解していきます。上記例では最終的に自社の課題は「アプローチするターゲットが悪く、商談化率が悪いため、商談数が不足し、売上目標未達になっている」ことがわかります。
STEP2:営業戦略を立てる目的を明確にする
次は、営業戦略を立てる目的を明確にします。この「目的」とは、 STEP1で特定した「課題」を解決するため。になります。
わかりづらいので、具体例で見てみましょう。
「アプローチするターゲットが悪く、商談化率が悪い」
という課題を解決し、
「売上目標を達成すること」
が、営業戦略を立てる目的となります。
なぜ回りくどく「目的」を掲げるかというと、営業戦略は「形骸化」することが多いからです。営業戦略を立てたのはいいものの、とりあえずあるだけの状態で改善されることがなく、いつまで経っても売上目標が達成できない、というような状況になることがあります。
営業戦略を立て、実行・改善を進める中で当初の目的に立ち返るために「目的」を言語化しておきます。
STEP3:ターゲットを決める
課題を特定し、目的を明確にすることができたら営業戦略を立てる際の重要な要素の一つである、ターゲットを決めます。
ターゲットは目的に応じて設定する必要があります。どの企業をターゲットにする必要があるかは目的によって異なるため、さきほどの「目的」が重要になります。
先程の例で説明すると、
目的:「アプローチするターゲットが悪く、商談化率が悪い」という課題を解決し、「売上目標を達成すること」
つまり、商談化率が高くなるターゲットを選定する必要があります。
そのため、以下のような手順でターゲットを選定していきます。
- 自社顧客から商談設定率の高い顧客を複数見つけてリストアップする
- その顧客のデータを集め、共通項がないかを探る(例:従業員数、業界、決算月…etc)
- それを「顧客群」として、グルーピングする
例)
・従業員数:101〜300名
・業界:ITサービス
・決算月:決算月から2か月前にアプローチ
この顧客群が「商談設定率」が高かったため、この条件を満たす見込み顧客をターゲットとする。
このように目的に沿ってターゲットを決定していきます。
STEP4:戦術の詳細を確定していく
これまでのSTEPで課題、目的、ターゲットを設定できましたので、最後にいよいよ戦術の詳細を確定していきます。戦術の詳細を確定することで、営業戦略の達成に向けた具体的な行動計画を作成することが可能となります。
戦術を決める上では、顧客に聴いてみるのが、一つの有効な手段です。自身の既存顧客の中に連絡が取れる「ターゲット」がいるならインタビューをしてみましょう。
- どんな課題があるのか
- なぜ自社を選んでくれたのか、決め手は何だったのか
- どうやって自社を見つけたのか
インタビューの中で参考となるものを戦術として採用すればよいのです。
例えばインタビューの際に顧客からこんな言葉が出てきたとします
御社からフォーム営業をかけられたときにちょうど課題があった。そして、そのフォーム営業の文章が自社を調べてくれて理解してくれている気がしたので一度話を聞いてみようと思った。
顧客インタビューの例
これだけでも以下のように深掘って確認していくことで、営業戦術のヒントが得られます。
「フォーム営業をかけられたときにちょうど課題があった」
↓
・お問い合わせフォームからの営業はだれが見るのか
・それはどんなタイミングだったか、なぜそのタイミングがよかったのか
・どんな課題があったのか
「文章が自社を調べてくれて理解してくれている気がしたので一度話を聞いてみようと思った。」
↓
・自分がどういった文章を送ったのか
・どの文章がどういう理由で刺さったのか
上記ヒントから、どのようにターゲットにアプローチをかけるべきか、を立案します。
戦術
・どういう条件のターゲットにフォーム営業をどういう文章で実施するのか
・売上目標を達成するには何件のアプローチが必要なのか
これが営業戦略〜戦術を立てる一連の流れになります。これを自社の売上目標に対して、現実的に達成できる行動レベルまで細分化して、スケジューリングしたものが全体の営業戦略となります。
営業戦略を立てるために活用できるフレームワーク
次は営業戦略を立てる上で、情報の分析に困らないよう、フレームワークを解説します。以下では、その代表的なフレームワークを4つ解説します。
- 3C分析
- PEST
- SWOT
- 5F分析
3C分析
3C分析とは、「顧客(Customer)」「競争者(Competitor)」「自社(Company)」の3つの視点からビジネス環境を分析するフレームワークです。顧客のニーズや行動、競争者の戦略や強み、自社の能力や資源などを評価します。
3C分析を通じて、自社が抱える課題や強み、市場の機会や脅威などを明確にし、それに基づいた営業戦略を策定することが可能となります。
Company(企業) | 自社の強みや弱み、リソースや資産など 自社のポジションを理解するヒント |
Customer(顧客) | 顧客のニーズや欲求、購買行動など 顧客が何を求めているかのヒント |
Competitor(競合他社) | 競争相手の戦略や製品、強みや弱みなど 競争環境の理解と、自社の差別化要因を見つけるヒント |
PEST
PESTとは、「政治的要因(Political)」「経済的要因(Economic)」「社会的要因(Social)」「技術的要因(Technological)」の4つの視点からマクロ環境を分析するフレームワークです。
各要因がビジネスに与える影響を理解し、将来のビジネス環境の変化を予測します。PEST分析を通じて、外部環境の変化に対応した営業戦略を立てることが可能となります。
Political(政治) | 政治的な要素には法律、規制、政策など ビジネスの運営に直接影響を与え、企業がどのように運営するか |
Economic(経済) | 経済的な要素には通貨の為替レート、インフレーション率、経済成長率など 企業の財務状況や市場の状態に影響を与えます |
Social(社会) | 社会的要素には人口動態、消費者の態度や行動、社会的な傾向など 商品やサービスの需要に影響を与えます |
Technological(技術) | 技術的要素には新しい技術の発展、技術的な進歩や革新など 製品の開発や製造方法、業務の効率化などに影響を与えます |
SWOT
SWOT分析は、「自社の強み(Strengths)」「自社の弱み(Weaknesses)」「ビジネス環境の機会(Opportunities)」「ビジネス環境の脅威(Threats)」の4つの視点からビジネス環境を分析するフレームワークです。
SWOT分析を通じて、自社の強みを活かし、弱みを改善し、機会を捉え、脅威を回避するための営業戦略を策定することが可能となります。
Strengths (強み) | 企業が持っている競争上の利点、リソース、専門知識など 他社よりも優れていると考えられる内部の要素を指します。 |
Weaknesses (弱み) | 企業が改善の必要があると考えられる内部の要素、 または他社と比較して劣っていると感じる領域を指します。 |
Opportunities (機会) | 市場の動向、顧客のニーズ、技術の進歩など 企業が取り組むことで利益を生む可能性がある外部環境の要素を指します。 |
Threats (脅威) | 競合他社の行動、規制の変更、市場の変動など 企業の成長や成功を妨げる可能性がある外部環境の要素を指します。 |
5F分析(ファイブフォース)

5F分析は、マイケル・ポーターによって提唱された「業界の競争力を分析する5つの要素」を分析するフレームワークです。具体的には、「新規参入の脅威」「業界の競合他社との競争」「顧客の交渉力」「取引先の交渉力」「代替品の脅威」の5つの力を分析します。
5F分析を通じて、業界の競争状況を理解し、その中での自社の位置付けと戦略を見つめ直すことが可能となります。
新規参入業者 の脅威 | 新規参入者が業界に参入しやすいほど、競争が激しくなります。 参入障壁の高さ(設備投資の規模、専門知識の必要性など)はこの力の強さを決定します。 |
競争企業間 の敵対関係 | 業界内の既存企業間の競争は、価格競争、新製品開発、マーケティングなど、 ビジネスのさまざまな側面で起こります。 |
買い手(顧客) の交渉力 | 顧客が多く、製品を購入する力が強い場合、企業は価格を下げたり、 品質を向上させたりしなければならないかもしれません。 |
供給者(取引先) の交渉力 | 供給者が限られていたり、特定の原材料を独占していたりする場合、 その供給者の交渉力が強くなります。これはコスト上昇につながる可能性があります。 |
代替品の 脅威 | 顧客が他の製品やサービスに切り替えることが容易な場合、 その製品の価格や品質に対する顧客の要求が高まる可能性があります。 |
営業戦略を立てて成功した具体例
営業戦略の理論的な知識だけでは、その有用性を十分に理解することは難しいかもしれません。
そこで、以下では具体的なビジネスシーンで営業戦略が成功につながった2つの事例を紹介します。
Case 1:高品質コーヒーチェーンの事例(BtoC)
ある国内のコーヒーチェーンは、競争が激しいコーヒー市場で差別化を図るために、独自の営業戦略を立てました。それは、「最高品質のコーヒーを、最高のサービスで提供する」というシンプルなものでした。
自社の強みとして高品質の豆とバリスタのスキルを持つことを認識した同社は、それらを最大限に活用しようと決定しました。自社の豆を使用し、一杯一杯丁寧に淹れることで、他のチェーン店では体験できない品質とサービスを提供しました。
この結果、同社は高価格帯のコーヒーマーケットで高い評価を獲得し、その他大勢のコーヒーチェーンとは一線を画する存在となりました。品質とサービスを追求するという明確な営業戦略は、顧客満足度の向上とブランド力の強化につながりました。
Case 2:ITソリューション企業の事例(BtoB)
B社は、新しいITソリューションを開発しましたが、その技術的な優位性が認識されず、売り上げが伸び悩んでいました。そこで同社は、自社の課題と顧客のニーズを再評価するための3C分析を行い、営業戦略を立て直しました。
分析の結果、自社のソリューションが解決できる課題が特定業界に多く存在することが明らかになりました。そのため、B社はその業界に絞ったターゲティングを行う新たな営業戦略を立てました。
また、具体的な利益や効果を分かりやすく伝えるためのプレゼンテーション資料も作成し、顧客の課題解決に対するB社のソリューションの価値を強調しました。これにより、同社のソリューションは評価を受け、大きな契約を獲得することができました。この事例は、適切な市場分析と明確なコミュニケーションが成功の鍵となることを示しています。
まとめ
本記事では、営業戦略とその立て方について解説しました。営業戦略は、自社のビジネスを成功に導くための全体的な方向性を示すものであり、それぞれの営業活動(戦術)をガイドする役割を果たします。
営業戦略の立て方は、はじめに自社の課題を特定し、営業戦略の目的を明確にします。その後、ターゲットを決め、具体的な戦術を決定します。
また、戦略を立てる際には、3C分析やPEST、SWOT、5F分析などのフレームワークを活用することで、自社のビジネス環境を深く理解し、より適切な戦略を立てることができます。
営業戦略を立てることは、一見難しく見えるかもしれませんが、実は自社の現状と目指すべき方向性を理解する上で、非常に重要なプロセスです。適切な営業戦略を立てることで、自社のビジネスはより競争力を持ち、業績を伸ばすことができます。
本記事が、営業戦略を立てる一助となれば幸いです。未来のビジネスの成功に向けて、まずは戦略を立て、その戦略に基づく具体的な行動に移してみてください。

b-pos編集部
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